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魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
序章~塔零記~
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捨て言葉

宴席の前に――戦後処理。

  世歴八百四年四月五日 午前九時頃 佞邪国丘幸 評定ひょうじょう所(裁判所)

 釣幻に誘われて、佞邪国の首都みやこである陽玄ら一行。

 案内された翌日に行わなければならないことが――賊の首領共の処罰である!

 先ずはその首領共である――官男、暖沼、猛己ら三名の被告の裁判が評定所ここで開かれようとしている。とはいえ前世のような“検察官”や“弁護士”といった職業が、この世界には概念ごとない!昔いたらしいが、この乱乱乱世ですっかり消え去った……!


 あるのはただ一人の“裁判官”!しかも佞邪侯である釣幻が兼任している!

 故に裁判の結果なぞ、佞邪侯こいつの思い通り!好き放題!

 法律はあるけれど――ろくに勉強してきてない(苦笑)!

 ちなみにこの世界には、“人権”という概念はない……!悪しからず……。


「ここに“佞邪救国政府”を僭称せんしょうした――愚者共の裁判を開く!」

 この釣幻の一言で、三名の被告らに対する裁判は開かれる!

 開かれた場所は評定所の屋内にある法廷――“お白洲しらす”!

 そのお白洲の最上段の座敷にいるは――裁判官を兼ねている釣幻はもちろん、裁判における書記官を兼ねている俊雄!陽玄、鋒陰、貴狼、真藤らの京賀国首脳も釣幻の特別な許可の下、最上段そこで裁判を見学することを許されている。

 また釣幻のつながりが深い佞邪国内の貴族や官僚、さらには商人達はその座敷の縁側に座っている。表向きは裁判の見学。本当の目的は、佞邪侯の威厳を見せる頭数……。


 そして肝心の三名の被告らは最下段の白い“砂利敷”の上に敷かれたむしろに、各々が縛られた状態で正座している。その周囲を昨日まで三名を護送していた京賀の兵達に代わって、剣や槍を片手にした佞邪の兵達が固めている……!


「さて……先ずは図籍(官男の氏名)からだ!」とその被告を見下す釣幻。

 これに官男は「佞邪を私物化する暴君め!! 私を殺しても、志は殺せんぞ!!」と釣幻かれに臆した様子を一切見せない!目に至っては強い殺意と憎しみが込められている……。


「貴様!我らが佞邪侯に何と非礼を!」と官男の周りにいた一人の佞邪兵が、自身の主君に暴言を吐いてみせた官男に剣で切りかかろうとするも――

「よい、言わせておけ!」と当の主君である釣幻に制止されてしまう……。

 結果――その兵は渋々ながら振り上げかけた剣を静かにおろしていく……。

 とはいえ、このように殺されかけたにも関わらず、官男は――

「殺すなら殺せ……!私は死なぞ恐れておらんぞ……!」と強気の姿勢を崩さない……!


 ――芝居くさいにも程がある……!とこの時の官男に対する俊雄の評。

 俊雄かれは、今の官男に対して冷めた目で見ている。

 本心こそ本物かもしれないが、その本心を体現する言動がどうも――書物からの盗用ぱくりくさい……。どこかしら覚えがある台詞セリフばかりなのだ……。

 それしか体現する方法を知らないのか、それとも過去の偉人達の言葉で――自身はその偉人たちと同格の者である!という勘違いでもしているのか……。


 今も強気な姿勢を崩さない官男に、釣幻は――

「そうか、ではそうさせてもらう!」と応えて、そのままぐに「――その前に確かめたいことがある……!」と訊いてくる。すると官男は「何だ?」と応じてくれる。


「貴様は人民を解放するために、『佞邪救国政府』を立ち上げたのだな?」

 この釣幻の問いに、官男は「その通りだ!! 他に何がある!?」とより強気になって答える!

 すると釣幻は「では貴様をその“幻想”から解放してやろう!」と力強く述べみせる!


「!?」

 釣幻の述べたことが理解できない官男!そんな彼の理解が追い付かない内に、

「図籍に判決を言い渡す!一族郎党ごと――“死刑”!」と釣幻の判決が下る!

 ちなみに官男に『一族郎党』はいない。何故いないかという理由は当時から不明……。

 それでも釣幻の判決の中に『一族郎党』が含めれていた理由は――ただの慣習。

 この『一族郎党』を判決に加えることで、罪の重さを表わすのがこの世の司法!


 釣幻が下した判決に現実に引き戻された官男!それでも――

「ふん……重ねて言うが、“死”なぞ恐れておらんぞ!! さぁ、どうやって殺す!? 斬首か!? それともか火炙りか!?」と強気のまま!挑発さえしてみせる程!


「……!」

 釣幻は微笑を浮かべて黙したまま、片手を挙げる。すると、官男の周りにいた兵達が官男を処刑場へと連行していった。どこの処刑場かは佞邪国側しか知らない。

 それから官男は連行されている最中でも――

「贅沢に浸っているのも今の内だ!! 必ずや人民は立ち上がり――革命を起こすだろう!!」と最後の悪あがきとばかりに捨て言葉を吐き続けた!お白洲(ここ)から消え去るまで!

 ちなみに、最後にお白洲ここに聞こえてきた捨て言葉は――

「権力と財産を血統だけで親から相続した恥知らず!! 実力や才能もない伴っておらずに政権を手にするとは――何たる卑劣漢!! ろくな死に方はせんぞおおおおおっ!!」という全君主に対する一方的な思い込みだったそうな……。ほとんどなら当てはまるが……。

次回予告:暖沼と猛己の判決……。

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