答弁
いざ――佞邪国との外交!
「これはこれは――佞邪の侯世子(俊雄)殿下!遠路はるばる――」
「お世辞は良い!貴様ら……何故にここにおる!?」
貴狼の言葉を遮り、尋問を始める俊雄!ますます警戒心をむき出しにする!
そんな俊雄に釣幻が「これこれ……!」と窘める。
しかし、笑いながらと言うことを見ると――よくぞ訊いた!という賞賛に等しい。
釣幻自身でも、最低でも京賀軍がここにくるには一週間だろうと予測していたのだ。
そんな予測が簡単に裏切られるのが――どうも信じられない!という者……。
本来なら自分で訊いてみたいが――なんか面倒くさいからやんない!
「我らが殿下(陽玄)は、ここで侯殿下(釣幻)をお待ちしていたいとの故です!
賊共を早く捕らえ、ここでお待ちしておれば――侯殿下から多大なるご褒美を頂けると殿下はお考えになり、今日のこの日までに賊共をお捕らえになったのです!」
「事情は分かった!ならば――何故京賀国側に来ん!?」
貴狼の答弁に食い下がる俊雄。もちろん、その警戒心は微塵も緩んでいない!
「来たくても来れないのですよ、侯世子殿下!
今から四年程前に侯殿下が『長』王朝内の全諸侯に、『丞相に断りなく、他の諸侯領内に兵を入れること勿れ!』とのお触れを出しました!
戦時ならこれを破ることも許されるやもしれません!
しかし、戦時の元凶である賊共を捕らえた今となりましては……!」
「……!」
次の貴狼の答弁にも理があることに対して、俊雄はいら立ちを隠せない。
――答弁でしくれば、京賀国を討てる大義名分が手に入るものを……!と声に出しかかった本音を必死に抑えるのみ……。
実際、貴狼を含め陽玄らは一人も、国境を越えてはいない……!
「ははははっ!なんだ、そんなことか!結構結構!」と笑う釣幻!
不機嫌そうな俊雄とは対照である……。とはいえ本音では、京賀国の領土だけを丸ごと欲しいとも思っている。ただし現時点での優先順位は低め……!
今の彼には、『王』という位しかほぼ頭にない……。
この世界で『王』になるということ――それは『皇帝』という至高の位への階段……!
この世界で『皇帝』になるということは――頂点に立つということ!
「しかしそれだと――そなたらは既に我が領内を犯していることになるぞ……?」
この釣幻の言葉に、真藤は思わず「えっ……!?」と驚きの声を出してしまう。
「そうだ!貴様らが足を着けている『過穀』という地一帯は――元々佞邪国の領土である!貴様らは既に佞邪国の領土を侵しているではないか!?」
この俊雄の援護射撃ともいえる発言に、貴狼は――
「両殿下がおっしゃることは、ご尤も!しかしながら、我々は賊である『佞邪救国政府』の正式な指導者と言う輩から正式にこの地を譲り受けたのです!」と答弁!
これには、俊雄の口から「何っ!?」という驚きの声が出てくる。
「無論――京賀国はこの過穀一帯が、佞邪の領土と承知しております!
しかし、侯殿下が賊共からこの地を“正式に”奪い返すとなると――どうしても賊の首領と対面し、その者に降伏文書を書かせる必要がございます!
ですが、それでは侯殿下の御身に少なからず危険が伴います!
そのような手間を省くことも可能ですが、古来からの慣わしを無視するのは、慣わしに重きを置かざるを得ない帝の御心に障ります!
そのことは丞相(釣幻の官職)の位にある侯殿下も不本意であるはず……!
そこで我らが殿下は『帝の御心と侯殿下の御身をお守りするには――京賀国が直接に賊の首領に降伏文書を書かせて領土を譲り受け、後にその領土を侯殿下にお返しすればよい!』とお考えになったのです!」
「大層な良い訳だな!丞相閣下の身を話にすれば許されると思ったか!?」
貴狼の答弁を聴いても、俊雄は疑い深く訊き返す!
「そう簡単に許されるとは、京賀国も思ってはおりません!
そこでこの機に――『畔河』一帯の地をお譲りする準備が――」
「はーっ、はっはっはっ!京賀国の気持ち――ありがたく思う!
しかし領土はそのまま返さずに取っておくが良い!正式に貴国に譲ってやる!
とはいえ、これはほんの細やかな『ご褒美』の一部でしかないがな!」
貴狼が切り札を出しかけた時、釣幻は喜びを以てそれを封じてみせた!
しかも実効支配していないとはいえ、気前よく領土を譲ってくれる……!
「じょ、丞相閣下……!」と俊雄が釣幻に詰め寄ろうとするが――
「既に戦で疲弊した地ぞ!ここはあえて京賀国に譲り、負担を強いさせてやろうではないか!」という不敵な笑みを伴った小声で諭されてしまう……。
一方、貴狼を含めた陽玄らは、領土を削る事態を避けられたことを安堵しつつ――
「ありがたき幸せ!」と領土が増えた喜びを、お礼の言葉で爆発させる!
次回予告――行こう、丘幸へ!




