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魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
序章~塔零記~
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大書記

そろそろ終わる官男軍……!

  世歴八百四年四月四日 午後八時頃 京賀軍占領地 過穀 京賀軍総本陣

「な……なんだあれはっ……!?」と驚愕のあまり目を見開く官男!

 その目には数多あまた松明たいまつで照らし出された過穀の西門!

 そして掲げられている全ての旗には『京賀』の縦二文字!

 さらにその旗の下にいるは、京賀の軍勢!その兵力は一個団(一個連隊規模)一千!

 ここに至ってようやく官男は、自身が毒殺した伝令兵のことを思い出す……!


 門の付近に展開している京賀軍の先頭には、陽玄、鋒陰、貴狼、真藤らが乗馬!

 ここで貴狼が法螺ほら貝を加工して作られた拡声器で――

「官男よ!既にお前が見ている通り、過穀みやこ京賀国われらの手中にある!

 すぐに降るなら、殿下は貴様に対して寛大な処置でお済ましになられる!

 無駄に抵抗しようなぞ考えず――今()ぐに降伏しろ!」と催促!


「いきなり過穀みやこが落ちてんじゃねえか……話が違う……!」

「これじゃあ……兵糧が……!だ……だまされた……!」

「ふ……ふざけんじゃねえ……!あ……明日からどうすれば……!」

 官男の後方では自身の兵が次々と失望と不安の声を上げ続けている。

 普段の官男ならば、それらの声を上げた者を即時に抹殺するはず……!

「……」

 しかしこの時の官男は、完全に放心状態。現状を理解するはずの頭も一切動いていない。

 そんな彼に、いつの間にか彼の後方に移動していた暖沼が突然――

「よくも、我らをあざむいてくれたな!! 図籍ずせき(官男の氏名)!!」と叫ぶ!

 しかも実名で呼び捨て!これは大陸にも伝わる伝統的な決別の証!


「ど……同志書記!! い……一体何を――」と戸惑う官男に――

「もう貴様なぞ、同志ではないわ!! れ!!」と暖沼は片手を上げて合図!

 すると、あらかじ暖沼かれに懐柔されていた弓兵きゅうへい部隊全員が一斉に、親衛隊(騎兵)に囲まれている官男に向かって矢を放つ!!

 これに親衛隊の将兵の一人が「同志主席!!」と叫んだのと同時に、他の将兵達も次々と身を挺して官男を死守する体勢を取っていく。

 その結果――二十人以上の親衛隊の将兵らが、その身に多くの毒矢が刺さっただけのしかばねと化す羽目になってしまった……!

 この結果に官男は、それらの屍が倒れる様子を見て「あ……あ……」と言葉を口に出すことができない!しかしここに至ってようやく、自らが信頼していた者に裏切られ、その者に命を狙われているという状況を理解することができた。


「たった今から私が『主席』に代わり、『大書記』に就く!」と宣言する暖沼に――

「同志大書記――万歳!万歳!万々歳!」と一人の将兵がこたえる!

 すると、暖沼の周りからも一斉に「万歳!万歳!万々歳!」と合唱!事前に官男を見限り、暖沼と組んで決起クーデターに参加すると決めた者達!タイミングがずれない!

 この合唱に暖沼は一瞬とはいえ、口元をゆるませる。

 ――ようやく大陸出身者たいりく自身おれが、本来の地位に就けた……!とその内心では喜びがどうしても抑えきれない……!

 しかし彼には喜びにひたる時間はない!短くても組織の頂点トップに就くという目的を果たした以上、次なる目的は――生き残ること!

 ――生き残るには、視界上にいる図籍やつの“首”がいる……!一度でも“賊”という職に就いた以上は、無代償ただでは生き残れんからな……!と暖沼は自身の内心は切り替え、改めて狙いを官男に定めて口元を締める……!


「どうせ貴様に残された道は――両国(佞邪国と京賀国)のどちらかにくだるしかなかろうに!!」と忌々しげな官男の指摘に、暖沼は――

「仮に降る天命(運命)であったしても、責任者はるでな!!」と返す!

 これに激怒した官男は自棄やけを起こし――

「おのれ~っ!! 全軍突撃ーっ!! 裏切り者を殺せーっ!!」と残った親衛隊の将兵達共に、暖沼の軍勢に騎兵突撃を敢行!その数は二十にも届かない……!


「手ぶらでは生き残れんぞ!! 生死は問わんから、図籍やつを逃がすな!!」と暖沼は自身に寝返った軍勢に号令!その軍勢の内、弓兵きゅうへい部隊が騎兵に弓を引く!

 結果――官男らは一人も矢に倒れることなく、暖沼の軍勢へと跳びこむ!

 味方の軍勢の中に敵が跳びこんでは、弓兵部隊は同士討ちを恐れ弓を引けない!

 跳びこまれた軍勢は自身の命が可愛いためか、跳びこんできた官男らに積極的に反撃する者はほとんどいない……。例外的に十人ぐらいいたが、あっけなく返り討ちに遭う!

 ――何をしとるか!? と暖沼は苛立ちを抑えきれない……!


 そして官男らは見事に暖沼の軍勢を突破!そのまま軍勢の後方を駆けていった……!

「……追えーっ!! 追えーっ!! 絶対に逃がすなーっ!!」と暖沼は追跡命令を出すものの、自身意外に馬を持たない軍勢が、馬を持つ者達に追いつけるとは思えない……。

 だが、軍勢かれらは必死に馬に追いつかんと走っていく……!朝から戦と行軍を繰り返して疲労の極み(ピーク)に達している身を奮い起こして……!


 これら一連の光景に「仲間割れ――ですか……!」と驚く真藤!

 そんな彼を尻目に、陽玄は「追うぞ!」と重臣と兵らに号令をかける……!

次回予告:短い三つ巴……!

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