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魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
序章~塔零記~
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第三十九話:赤い化物

人の末路を考えるのも楽じゃない……。


※注意:今回、ソフトに包んでいますがグロイお話になります!

    こういうのダメな人は注意して読んでください!

    さすがに責任は負いかねるます……。

「さっ……流石《さすが》は丞相《じょうしょう》(宰相)閣下……!」

 戸惑いながらも、珍しく釣幻《ちち》に感心する俊雄《むすこ》。不吉な予兆……。

「一応帝には、俺の口から直に『賊に成り下がった者とは関係を断《た》っております!君主は臣下を信じぬくことこそ――“華”!』と奏上したばかりだ!

 これで、今すぐにでも俺が帝から“死を賜る”ことはなかろう……!」と余裕の釣幻。

 そのまま気持ちよさそうに、猪口《ちょこ》で酒を飲み干してみせたかと思えば――

「とはいえ、猛己《やつ》が生きていては色々と厄介になる……!」と不機嫌気味に危機感を顕《あら》わにする。一応、伊達に“丞相(宰相)”の地位にいる訳ではないようだ。


 万が一、猛己《もうき》が釣幻《ちょうげん》らとの繋がりを暴露すれば、あの帝《わかぞう》とその帝《わかぞう》の側近《おともだち》共のことだ。事の真偽なぞに関わらず、すぐにでも暴露された繋がりを口実に釣幻らの失脚を謀《はか》るだろう……。

 また文屋でもに暴露されると、手が付けられない!

 例え死を免れても、『丞相』や『侯爵』といった地位のみならず、『長』王朝(佞邪国が使える王朝)内における佞邪国の地位さえ危うい立場《もの》になってしまう……。


「左様です! 猛己《やつ》は戦場で散るのが相応しい身です!

 しかし、猛己《やつ》が生き延びて捕虜になった場合は如何《いかが》します?

 既に牢の者達は皆、閣下の手の者です! 命令さえあれば、いつでも食事に毒を――」

「そう血気に逸《はや》るでない――秀《しゅう》(俊雄《しゅんゆう》の名)よ!

 もしも、帝を奉《たてまつ》るこの丘幸《みやこ》の牢の中で、猛己《やつ》が処刑を待たずして死んだとあらば、俺は帝に何と奏上すればよいのだ!?

 佞邪国《ここ》に猛己《やつ》がいるとあらば、処刑場以外で死なれても困るのだ!」

 物騒なことを勧める俊雄《むすこ》に、釣幻《ちち》はその“物騒”に対して“相応のリスク”で宥《なだ》める。酒のせいか、困った顔でも釣幻《ちち》は上機嫌のまま。


「私が迂闊《うかつ》でした……丞相閣下……!」といつも以上に、己の非を素直に認める俊雄《むすこ》に対して、釣幻《ちち》はこのような助言《アドバイス》を送った。

「まぁ、ここで猛己《やつ》の死に方を考えても始まらん!

 猛己《やつ》が過穀政権《かこく》を打ち負かして、佞邪国《こっち》に亡命すれば、命《《だけ》》は助けてやろうという生き方から考えても損ではなかろうて……。

 兎に角飯を食おう! 食わねば、頭が働かん! それに頭を動かすにも体力を使うぞ!」



  世《せい》歴八百四年四月二日 午後五時頃 猛己軍占領地 過穀 猛己軍本陣

 時を大幅に経て――もう誰もが“夕方”と認める陽の光が視界に広がる頃……。

「あの傍矛《ごみ》からの狼煙《へんじ》はどうだ?」

 声は平静ながらも、その顔は憤怒《ふんぬ》の形相に満ちている猛己。

 全身の返り血はより一層ひどくなって、最早“赤鬼”を超えた“赤い化物”状態!

 さらにその肩手にも血にまみれた自身の専用の大剣。しかもそれからは血が滴《したた》り下りている。今日のこの日に何人の血を吸えたかは、当の大剣自身も数えていない……。


 こんなこの世の者とは思えない生物と成り果てた猛己《ちち》に、尋ねられてしまった攻己《むすこ》は恐怖で固まった口を無理やり動かして――

「よ、ようやく……み、畔河《みやこ》に……ももも戻ったみたいです……!」と舌が上手く回らないながらも最後まで答えてみせる。

 彼がこうなってしまうのも無理はないが、理由はそれだけではない。


 今、攻己《こうし》の視線は猛己の“足下”に注がれている……。

 そこには捕虜《てき》と味方の物が混じった数々の首が転がっているではないか……。

 だが“首だけ”になった者達は比較的運が良いと言える。

 何しろ――つい先ほどまでは、猛己《ばけもの》の手によって“上半身と下半身が分かれてしまった捕虜《てき》”が運ばれたばかりなのだ……!

 その肉塊を運んでいた者たちは、全員恐怖で涙を流しつつ肉塊《それ》を運んでいた。

 しかも白い布を被せられたまま。結局、布は赤く染まってしまったそうだが……。


 しかし、何故だろうか――攻己《こうし》を含めたその凄惨《せいさん》な現場を目撃した全員が“上半身と下半身が分かれた瞬間”を覚えていないのだ!

 とはいえ、それで正解。覚えていたら、きっと気が狂ってしまう者が続出しただろう。

 故にその『瞬間』がどれ程惨《むご》かったかを語り継げる者など一人もいなかった。

 しかし、体は覚えているのだろう。その瞬間からしばらくの間、不意に涙を流して号泣する者や昼に摂った飯を吐いてしまう者が続出してしまったそうな……。


「畔河《みやこ》に戻る! すぐに準備を済ませろ! それが終わって戻る時、押さえた占領地《ところ》は全部燃やせ! 燃やし残すと無傷《ただ》じゃおかねえぞっ!」

 この猛己の焦土命令を、攻己は即座に「はいいいいいっ!」と受け取って走っていく。

 周りの者も彼と同様に半ば悲鳴を上げながら――走っていく……。

 その間、猛己は自身の足元に転がっている首を一つずつ専用の木箱に詰めていく。

 捕虜《てき》の方は、己の戦果を自慢するため! もちろん、乱乱乱世限定の方法!

 味方の方は、見せしめのため! これも言うまでもなく、乱乱乱世限定の方法!

 前世の者達は猛己を「残虐だ!」と非難するだろうが、この乱乱乱世ではその非難が返って「有能!」という評価を彼に与えてしまう結果になることを――知る由がない……。


佞邪救国政府――その内戦の結果……。


今回の登場人物

*佞邪国

・釣幻《ちょうげん》:長王朝の丞相(宰相)にして佞邪国の侯爵(君主)。

・俊雄《しゅんゆう》:佞邪国の宰相にして侯世子(次期君主)。


*佞邪救国政府畔河政権

・猛己《もうき》:畔河政権主席(最高指導者兼元首)兼校尉(同政権の最高司令官)。頭に血が上りやすい豪傑。

・攻巳(こうし);畔河政権総理(首相)兼軍師尉(参謀総長)。猛己の次男。まだ16歳。

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