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魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
序章~塔零記~
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第三十二話:金川の戦い~飲酒で終わる一日~

やっと一日が終わった――後の話もどうぞ。

「同志!まだ一杯目ですよ!」と傍矛ほうむの体を「ブンブンッ!」揺さぶっていく洲漕しゅうぞう。しかし、傍矛には全くと言っていい程、夢の世界から抜け出してくれる気配が無い。初陣の故に、張りつめていた緊張が飲酒で解けてしまったのだろう。

 それにしては、僅か数杯で爆睡とは早すぎる気がする……。


「……?」

 洲漕が――どうします? と言わんばかりに申竜しんろうに視線を送ると――

「同志傍矛はお疲れのようだ! いざとなったら、私が同志を起こす。

 同志隊長(中隊長)達には『宴を楽しんでもらいたい! 人民達からの誘いを無下にするべきではない!』ということを同志傍矛の言葉として伝えてくれ!」という指示が返る。

 傍矛は眠る前に、申竜から「ここで他の同志達に振る舞えば、彼らの支持を得ることができます! 敗者復活(猛己の後継者問題の再浮上)も夢ではありません!」と助言アドバイスを受けると、指揮官や兵達に酒を振る舞うよう許可を出していた。


 そして洲漕が「――失礼します!」と嬉々としてその場を辞していこうとするが――

「お前だけは飲むなよ。まだ仕事が残ってるからな!」と釘を刺されてしまう。

 こうして、洲漕は「はい……!」と乾いた返事と共に、その場を辞する羽目になった。

 洲漕かれのテンションが急降下している最中だということは言うまでもない。

 すると、この天幕てんと内にいる者は、べつの世界にいる傍矛を除いて、申竜と金川じもとの代表者たち数名のみとなる……。


 それから、申竜と代表者達との密談が行われている中、ここの陣の兵達にも金川じもとの住民達から「どうぞ! どうぞ!」と大量のお酒を振る舞われていた。

 最初は「まだ近くに敵がおるやもしれぬ!」と渋っていたものの、住民達から「何か京賀軍あいつら、帰っちゃったみたいですよ!」という話を聴けば、即――

「そういうことなら、いっか!」と勧められた酒を己の口へと注いでいった……。

 隊長や小隊長といった指揮官達も兵達よりも渋ってはいたが、洲漕から傍矛の伝言を聴くと、「ではお言葉に甘えて!」とすぐに各々の口に酒を注いでいった……。

 さらに見張りを担当していた部隊にも酒が振る舞われていた。

 最初はもちろん、部隊の全員が「飲むわけにはいかん!」と一致して断っていた。

 しかし住民達から「一杯だけ!」と勧められると誰もそこで断る者はいなかった……。


 それからの陣では歌や踊りと楽しく騒がれていたが、ものの数分もしない内に爆睡するものが続出。それから一時間と経たずに全員が夢の世界へ突入していった……。

 指揮官達や、一番寝てはいけない見張りの兵達もその例外ではなかった……。

 こうして、金川きんせんでの夜はけていったのである……。表面上は……。



 それから朝になって――金川ここにいる傍矛の部隊の一部が目を覚まして一番に映った光景もののが、部隊の全員がお縄になっている光景であった……。

 周りを見渡せば、自分達が今居るところが薄暗い牢屋だということが分かる。その牢屋は、京賀軍に捕まった同志達が、その以前より住民を酷使して造らせた牢屋ものだ。

 本来、その牢屋は救国政府(分裂前)に不満を持つ馬鹿共を収容するためだった。

 とはいえ、まさか造らせた救国政府ほんにんたちと同類の猛己軍ばかどもが収容されるとは夢にも思っていなかったのだろう。牢屋で目を覚ました者達全員が、何故自分達が牢屋ここにいるのかを理解することができなかったそうな……。

 ちなみにこの牢屋には、畔河政権じぶんたちに反抗的な者達を押し込まれていたが、今となっては彼らと入れ替わりに、傍矛が率いていた二個隊(二個中隊規模)のまるごと全員が詰め込まれている。今いる一人分の配分域スペースは“ギチギチ”ではないが、“ギリギリ”である。誰ひとり真面まともに動けないと言っても過言ではない!


 そこへの二十人程の男達が入って来た。牢屋ここに詰め込まれてる者とは違い、彼らの体には物理的に縛られている点は何所も見られない。

 違う点を挙げるとすれば、各々が一台の台車を押しているところか。

 しかもその全ての台車には、十杯以上のおかゆが載せられている


「お前――牢屋ここで何してんだよおおおおっ!!」

 知り合いでもいたんだろうか、縛られた一人の男が先の十人の内の一人に声をかける。

 するとかけられた一人が何食わぬ顔で――

「『何』って、これからお前らに飯配るところ」と淡々と答えてくれる。


「お前ら、京賀軍てきに捕まって連れていかれたんじゃないのかよおおおおっ!?」

 この縛られた男の言うとおり、先の『二十人程の男達』の正体は、元から金川ここの警備をしていた小隊の一部で、昨日(世歴八百四年四月一日午後三時頃)の『月清の奇襲戦』で捕まった者達だ。本来なら、縛られて京賀国内に連行されるはずだったが……


「何か――お前らの『世話をやれ』って! それで俺達、金川ここにいるの!」

 今も淡々と答えてくれたこの男に対し、先の縛られている男が心の底から全力で――

「ここから出してくれよおおおおっ!!」と頼み込む――が……。

「出してもいいけど、火炙りにされちゃうよ、俺達ごと! ほら、油の匂いが少しするでしょ! それに今――入口のそばで火(松明たいまつ)持ってる奴いるよ!」

 またも淡々としたこの応えに、縛られている全員の頭が絶望の一色に染まる……。

次回予告:傍矛のやつ何してんだ?


     まっ、どうでもいいか!


今回の登場人物

*佞邪救国政府畔河政権

傍矛ぼうむ:畔河政権付(無任所大臣相当)。猛己の長男。後継者争い敗者。

申竜しんろう:一分隊長。武将を目指しているがヘタレ。

洲漕しゅうぞう:申竜の部下。

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