↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
序章~塔零記~
28/183

第二十七話:三倍のウザさ

裏切りの伝令……その直前から!


「そっ、それは真《まこと》でしょうかっ……?」

 驚きの余り、月清《げっしん》の発言の真偽を確かめたがる申竜《しんろう》。

 そんな彼に対し、月清は自身の腰に差されている刀の鞘に手を添えながら――

「京賀の宰相の言うことが信じられぬか?」と鞘と鍔《つば》に隠された“刃”を少しだけ表に出していく。その刃からは鋭くて危なそうな光が反射している……。

 この光が目に入った申竜は大慌てで、両方の手のひらを月清に見せて――

「いえいえいえいえっ! そんなことありえません!」と、両手を振ってみせる!

 これに洲漕《しゅうぞう》も同意して「ウンウンウンウン!」と首を上下に何度も振る!


 しかし――二人は命惜しさになんと危険な橋を渡っているのやら……。

 本来なら、月清の誘いなぞ絶対に信じてはいけない!

 特に『努力次第では、京賀国側《こちら》に迎える!』という発言!

 そんな『努力次第』という曖昧な評価の基準なぞ、相手の解釈でどうとでもなってしまう。最悪、相手の気分で評価が決まってしまうというのに……。


 正式な取引なぞ一切していない! いくら何でもヤバ過ぎるぞっ、申竜、洲漕!

 まっ、警鐘鳴らしたところでどうにもならないけどねっ! 届きそうもないし!


「では、行け! あまり早く伝えなくても構わんが、三日以内に傍矛《ぼうむ》の軍が金川《ここ》に来なければ……言うまでもないな――!?」と月清は自身の刀を思い切り引き抜いて、刀を向けて申竜と洲漕の両者を脅してみせる!

 その引き抜かれた刀からはなんとも煌びやかな陽光が反射している……。

 余談だが、月清の父が「お土産に!」と彼にくれたこの刀。

 値段は非常に高いらしい。噂では、小さな村一つをまるごと買える程だとか……。


「「かしこ、畏まりましたーっ!!」」

 こうして脅された両者は逃げるように、畔河《ちゅうおう》への伝令を果たすべく、そこに向かって走っていったのであった……!



 それから両者は少し程走った後、徒歩へとペースダウンする。

 走ることが不要であるためでもあるが、申竜が「あまり早すぎても、京賀軍に都合が悪い!」と洲漕を諭《さと》したためでもある。

 この時に洲漕が「分隊長、本気で京賀国《あっち》に寝返る気でっ……!?」と申竜に訊《き》いてみた。無茶苦茶な仕打ちを受けた身とは言え、故郷への愛着は多少ある。

 一方、申竜は全く悪びれることなくも、後ろめたくなることもなく――

「当たり前だ! 畔河政権《あんなとこ》に身を置いたら、命がいくつあっても足りねえし、何よりこき使われるだけで出世できねえ!」と言ってのけた!



 それから……申竜と洲漕の二人が休憩を挟んで歩くこと一時間強。このときの推定時刻は四時半前後。彼らは畔河《ちゅうおう》の政庁の門前に辿り着いた!

 そこから、畔河《ここ》の留守を任されている当の傍矛《ほんにん》に謁見できたのは十五分弱程経った頃だ。手続きの関係でこうなってしまったらしい……。


 申竜の“報告《シナリオ》”を直に受けた傍矛は閉口一番に――

「直ちに金川《きんせん》を奪還する! 兵をかき集めるぞ!」と意気込む!

 そんなところへ、傍矛の周りに控えている畔河の官僚(文官兼武官)達が――

「同志、傍矛! 我らが警備隊(一個中隊規模)の内――畔河《ここ》に残す一個小隊を除けば、三個小隊はすぐにでも集まります!」

「ですが……訓練中の槍《そう》兵隊(一個中隊規模)は過穀《かこく》前線(過穀政権との最前線)への援軍で、先程にも畔河(ここ)を発ったばかり!

「他のどこの兵が残っているのでしょうか……!?」と次々と口を挟んでいく。

 このような周りの反応をウザったく感じた傍矛は――

「心配すんな、“南征隊(こちらも一個中隊規模)”を連れて行く!」と一蹴するが……。


「ですが、その部隊は“釜穀《ふこく》”を攻める予定の部隊のはず!」

「その部隊を勝手に動かしたとあらば、確実に粛清《ころ》されてしまいます!」

「しかも、その部隊は今日集めて編成したばかり!」

「全く訓練を受けておらず、武器さえ手にしたこともない部隊なのですぞっ!」

「南征隊《かれら》を連れて行くのは、あまりにも危険すぎます!」

「そもそも兵を集めたとして、出陣できるのは夕方!!」

「金川《きんせん》に着く頃には、確実に夜になってしまいます!!」

「それに我々は野戦に慣れておらず、苦戦は必至です……!」

「ここは同士主席(猛己《もうき》)がお戻りになるまで守りを固めた方が無難かと……!」

 結果、官僚達《かれら》のウザったさは三倍となって返ってきてしまった……!

 ちなみに『釜穀』とは過穀の南部に位置する地。そこには過穀政権の政庁の支部が置かれている程、けっこう重要視されている地。それも古来から。


「うるせぇ、うるせぇ、うるせええええええええぇっ!!

 さっさと京賀軍《あいつら》を倒して、ここに戻ってくりゃ問題ねえーんだよおおっ!!」

 三倍のウザさに負けじとキレる傍矛。剣まで振り回して、危なさも――三倍!?

次回予告:申竜の『努力』……!?


今回の登場人物

*京賀国

・月清《げっしん》:京賀国の宰相。陽玄の父方の叔父。まだ少年。


*佞邪救国政府畔河政権

・傍矛《ぼうむ》:畔河政権付(無任所大臣相当)。猛己の長男。後継者争い敗者。

・申竜《しんろう》:一分隊長。武将を目指しているがヘタレ。

・洲漕《しゅうぞう》:申竜の部下。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。