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魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
序章~塔零記~
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第二十三話:金川という要地

やっと真藤をスカウトできる……。

 将棋の一件から、ものの数分しない内に陽玄《ようげん》と鋒陰《ほういん》が布団に入って、爆睡状態に移行。貴狼《きろう》と真藤《しんどう》も布団に入って、各々の背に敷布団を密着させて、就寝状態に移行しようとしていた――時のこと。


「そういえば、真藤よ……!」と真藤《かれ》に呼びかける貴狼。

 呼びかけられた真藤は眠気に襲われているのか、「はい……?」と力なく応じる……。


「貴公はこの国――いや、京賀公殿下(陽玄)に仕えてみる気はあるか?」

 いよいよ真藤をスカウトする貴狼。この時の貴狼《かれ》は毅然《きぜん》としているものの、内心では――断られまいか……? と心配してもいる。

 これには真藤、「それは『国家公務員になってみないか?』……ということですか……?」と眠気に耐えながら訊《き》き返してしまう……。貴狼の内心は察していない。


「そういうことだ!」と貴狼が“推しの一言”で答えると――

「こんな僕で……よろしければ、是非とも宜《よろ》しくお願いします……」

 このように、真藤は“即答”と言っても良い早さで答えてしまった……。

 この真藤の反応を受けて、貴狼は呆気に取られつつも「いいのか、即答で?」と訊き直してみる。その内心は――雑《テキトー》に答えてないよね? という疑念に満ちている。

「そちらこそ……面接や試験抜きでいいんですか……?」

「試験で出る数値なぞあてにはせんタイプでな、俺は……!

 それに面接はもう済んだ! その上でお前を我が国にスカウトしている!」

 真藤の質問で答えた質問に、毅然としたまま答えていく貴狼。

 その眼差しは若干の眠気が混じって入るが――真剣そのもの。


「そうですか……」と真藤の声が小さくなっていく……。

 もう真藤《かれ》の意志が眠気によって陥落しつつある……。

 これを見抜いて焦った貴狼は半ば真藤《かれ》を起こす気で――

「しつこいことを承知で訊くが、本当にいいのか? 結構命がけだぞ、京賀国《うち》!」と重ねて訊いてみることにする。こういう採用《こと》には念を入れて損はないはず。

 それに、もし公務員――つまり官吏《かんり》となれば、色々と京賀国や他国の機密情報や危険な物《ブツ》を担っていく身となってしまう!

 眠気に襲われて正気を保っていない状態で即答されても――困惑してしまう……。

「いいですよ……。どうせ前の世界じゃ浪人生でしたし……。

 むしろ就職先ができて、ぐっす……り……」

 真藤はそう言い残して――陥落。そのまま安眠を貪《むさぼ》る。

 これを静かに見届けた貴狼も「俺も、今日は寝るか……」と睡眠を貪ることにする。

 ――既に紙(宣誓書等の必要書類)は用意しているし、明日もう一度訊けばいいか……。と決め込んで……。そうして今日中にやりたいことはやり終えた身であるが故に……。


 こうして、この世界の暦《こよみ》で世暦《せいれき》八百四年、四月一日の夜は更《ふ》けていく――その前に、ここから今日の時間を少し遡《さかのぼ》っていこう!



  世歴八百四年四月一日午後三時頃 畔河《はんが》政権 金川《きんせん》


 ――金川。京賀国周辺における古来から伝わる外交や軍事、交通の要地の一つである。

 その地は今、佞邪《ねいじゃ》救国政府の畔河政権の領域《エリア》。

 そして同政権の対京賀国用の国境警備部隊四十人(一個小隊規模)が配置されている。

 彼らは畔河主民党結党時からの古参。だが、熱狂的な共和主義者とは言えず、ほぼ全員の入党のきっかけが、只々――君主の下にいることに飽きてしまった! というもの。


 その者共は剣を振りかざして、金川《そこ》の住民から「徴発」という名目で“搾取”を断行しては、その収益の半分を中央に、残りの半分は自分達の懐へ……。

 挙句の果てには中央政府から盗んできた“平等”という概念の名の下に、自らの親や兄弟姉妹などの親族でさえも、“搾取”の対象とする始末。

 とはいえ不思議なことは起こる世《もの》で、旧日汎のほんの一部の地域では、「自らの一族を優遇しない」という点では国境警備部隊《かれら》は賞賛の対象となっている。

 そこは強《あなが》ち間違ってはいないのだが、生憎《あいにく》なことに肝心なところを全て間違ってしまっている……。何か、どうでもいい……。


 話を戻して――彼らは得た収益を自らの快楽のために、欲望の渦へ放り込む始末……。

 中央政府も得た収益を全て泥沼の政争へと放り込む始末……。

 収奪された民達は何一つ報われていない。恵まれていない。悲しくて切ない現実……。


 今日も国境警備部隊《かれら》は中央から課された“警備”という二文字の任務にして義務を忘れて、朝から酒を飲んだりして怠惰《たいだ》を貪っていた――時のことだ。


「てっ……、京賀国《てき》の奇襲だああああぁっ!」

 声の主は分からないが、見張りに就いている者の声。彼を除いた、畔河政権の警備隊(一個中隊規模)の内の金川を管轄する国境警備部隊の全四十人が分かったことはそれだけ。

 その次の瞬間、月清《げっしん》が率いる京賀国の騎兵隊(こっちも一個中隊規模)二百騎が、国境警備部隊《かれら》に襲い掛《か》かって――きたああああああっ!!

いざ――金川の戦い!!


*京賀国

・陽玄《ようげん》:京賀国の君主。まだ幼い。

・貴狼《きろう》:京賀国の摂政。

・鋒陰《ほういん》:陽玄の師。まだ幼い。

・月清《げっしん》:京賀国の宰相。

・真藤《しんどう》:平成二十九年からの転移してきた日本人浪人生。

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