表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
尽隈戦争の章~尽隈戦記~
164/183

南石の戦い

大変お待たせしました!いよいよ尽と隈の戦いの火蓋が切って落とされます!

 命令を実行すべく馬上の人となった弓生と入れ違いに――

「大将軍!よろしいでしょうか?」と改長にかかる声。声の主は等玖とうきゅうである。

 現在、等玖かれが率いる左集団は予備部隊として、この戦場になる地の一歩手前で待機中。

 左集団これは攻勢時には止めの援軍役。撤退時には救いの援軍役を担う予定となっている。


 とはいえ、その左集団ぶたいの指揮官が現場を離れている。それも一番大事な時に……。

 この事態に――お前今何でこんなところにいるんだ!? と言いたげな不愉快な表情する改長。

 しかし改長かれは感情を抑えて、「何だ!?」と一応は話に応じる姿勢を等玖に見せる。

 自分のしたことが“愚行”だと自覚できない等玖ほんにんでもない。

 その等玖ほんにんが“愚行”を敢行している以上、等玖こいつの話を確かめる価値はある。


「危険な手段と承知で申し上げますが、今すぐに左集団われわれも攻城戦に参加させて頂けないでしょうか?」という等玖の提言に、改長は表情を緩めて「ほう……」と関心する。


「既に周辺の偵察を数回重ねましたが、今もてきの別集団を発見できておりません!

 このことから察するにその別集団ぶたいは、既にてきの城にこもっているかと!

 今いる戦力で攻城戦を行っては――少なくない被害を被る危険があります!

 何しろ今のわれわれの兵力は七千二百に対し、てきはその戦力を若干上回る……最大八千の兵力を自軍みずからの城の中に収容することができるのです!

 大将軍!ここは左集団われわれを加えた一万二千の兵力で、一気に城を落としては?」

「お前の言いたいことは分かった!――が、それには及ばん!」

 補足が加わった等玖の提言を、改長はやさしく一蹴してみせた。

 そして「理由をお聞きしても……」と等玖が説明を求めると、改長が――

やつらの城に八千の敵がこもっている可能性は――低い!

 八千全ての兵力を城にこもらせれば――その城は堅固けんごになろう!

 だがそれは、やつら首都みやこ(尽子)への道をわれらに明け渡すも同然!

 あの貴狼がそのような博打ばくちを行える勇気があるとも思えん!

 それに……先の偵察での城からは狼煙等のろしやらで外部と連絡を取っていることが確認できた!故にやつらは城外に、少なく見積もっても千弱の兵を用意しとるはずだ!

 既に海軍が無になった以上、我らの補給線は少数兵力で楽に遮断できる!

 これを阻止する必要性が一パーセントでもある以上、予備部隊よびを用意する他あるまい!

 逆にやつらの全戦力が城に籠っていると分かれば――即時に予備部隊よびを投入して包囲戦に移行すれば良い!その後はやつらが干上がるを待つだけだ!」


 改長の説明を聞いた等玖は「流石さすがは大将軍です!」と感服しながらも――

「ですが、それでも城の尽兵てきは非常にしぶといと思われますが……」と残った不安を漏らす。

 すると改長は突然、「ははははっ!」と笑い出したかと思えば――

「確かに退路を自ら断って強大な敵と戦う覚悟を決めておるようにも見えるが、逃げ道くらいは用意しておろう!あの城なら後方の川に降りて船で脱出できなくもない!」と説明を始めた!

 これに等玖は「では、あの背水の陣は偽物ということですか……!」と口元を緩める。


「それに古来から窮鼠きゅうそ……すなわち追い詰められたねずみは猫さえむ!と言われる程、どんな小動物こものでも恐ろしい化け物に変化する可能性を持っておる!

 ならば窮鼠にせねば良い!“希望”へ逃げるねずみ程、怖くない生物ものはないからな!」

「確かに大将軍の仰る通りです!とはいえ……、どうも天気が優れていませんな……」

 改長の説明が終わった時、等玖は最後に残った不安を漏らす。天を見上げながら……。

 この“天災”に繋がりかねない不安に、改長も天を見上げて思わず――

「ふむ……。確かにこの天気では夕方に雨が降るやもしれん……」と頭を抱える。


 それから頭を抱えた改長は三十秒もたずに、頭から手を離すと――

「雨に濡れて戦闘力ちからが封じられる前に――出せる銃砲を全て出す!

 集団から、全ての砲兵部隊と歩兵(火縄銃兵)部隊をここに送り込め!」と等玖に命令!

「御意!」と即座に改長に返答した等玖は、自身の部隊げんばへと戻っていった……。


 砲と火縄銃……これらが隈が今遠征のために大陸から大量に輸入した決戦兵器である!

 砲の種類は仏狼機フランキ砲という後装砲。かの世界では大友宗麟という武将が用いた大砲の種類として有名な種類タイプ。隈が輸入した砲の最大射程距離は三百五十メートルに及ぶ。

 既に大陸では時代遅れになりつつあるが、それ故に計六十八門を輸入できた!

 火縄銃マルチロックガン性能スペックが最大射程距離は五百メートル、有効射程距離が五十メートルの安価な旧式(大陸基準)を採用したことで三千四百丁という大量輸入に成功!

 結果――隈のほとんどの団に、二百丁を有する一個隊と四門を有する砲兵隊が配備されている。

 さらに大陸から技術者等を雇い入れて、こく内で砲や銃工場を建設する計画も進んでいる。

 とはいえ、それらの銃砲には最低限の防水対策しか施されていない。

 故に小雨には対応できても、本降りとなったら鉄屑に成り下がる。水没は論外である。

 こればかりは改長が現時点での筆頭ナンバーワンの憂い事であった……。



 世歴八百五年五月二十八日午前十時頃に南石なんせき一帯の空が雲海に包まれた時……。

「全軍に『作戦開始』の合図を出せ!南石なんせきを落とすぞ!」と改長の号令が下る!

 そうして隈軍の動きが本格的になった直後を見計らって、尽(サイド)の利雲が――

「応戦するぞ!『作戦開始』の合図を出せ!」と尽の遠征集団に号令を下した!

 ここに尽隈戦争中、最大規模の戦いである「南石の戦い」の火(ぶた)が切って落とされた!

次回予告:隈の建国史上初の大砲部隊! いざ実戦に突入!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ