寂しさとメール。
「ただいま」
しーん…………
当然、返事は返ってこない。
いつもの事だ。
両親は共働きで、今は出張中。
お兄ちゃんは、多分居ない。
いても、返事をしない。
いつもなら、普通なのに、友達が出来た今は、少しだけ、
「寂しい…」
「やっほー!花夜ちゃんっ!」
突然聞こえた声に私はビクリと、少し飛び上がってしまった。
「……なんですか、なんでいるんですか。朱神さん。」
朱神慶真。彼は、お兄ちゃんの悪い友達だ。
チャラい友達だ。
少し長めの黒髪を後ろで1つに纏めていて、赤いメッシュを、いれている。
「あ、まだメッシュ入れてたんだー!可愛いっ」
「落とし方が分からないんですー!落とせたら一瞬で落としますよ!」
私のツインテールに結った髪には左右同じ位置に、
赤のメッシュが入れられている。
コレは、朱神に無理やり入れられたのだ。
頭のてっぺんから、高い位置で結っても腰の辺りまである、私の黒髪の毛先まで!
「椋夜に聞けば良いじゃん。」
「無理ー、お兄ちゃんに全然会わないんだもん。」
「あー、そうかも。会っても話さないでしょ?」
「よく分かりますね!その通りですよ!」
珍しく朱神と話を弾ませていると、後ろから声がした。
「慶真。なにしてんだよ。」
お兄ちゃんだ。
眉間に皺をよせて、機嫌が悪そう。
顔を見る度思うけど、本当目つきが悪いなぁ。
よくお兄ちゃんに似てるっていわれるから私もあんな目つき悪いのかな…。
やだなぁ。
そんなことを考えていると名前を呼ばれた。
「なに?お兄ちゃん」
首を傾げると、そっぽを向かれた。
「玄関で突っ立ってんじゃねぇよ」
「え、あ、ごめん」
怒ると怖いから、謝って自分の部屋に行く。
そして、新しく出来た友達にメールを送った。
『今日はありがとう。明日から、部活に行くね』
香莉ちゃん、歌楓ちゃん、優衣香ちゃん、
全員に同じ文面で送る。
みんな、返信をくれた。
普通のことだけど、なんだか、すごく嬉しかった。
背が高くて、足のすらっと長い香莉ちゃん。
面白くて、明るい元気な、歌楓ちゃん
メガネの似合う、頭脳明晰な優衣香ちゃん。
クールで、静かだけど、毒舌な扇原君。
友達のおかげで、もうすぐ来る今年の夏は、楽しくなる気がした。
4人からきたメールの返信を保存したのは言うまでもない。