仲間、友達
「ねぇ、ここどこ?学校の外れのほうだよね?」
「あぁ、彩樹も1回は来たことがあるはずだぞ?」
「それって……」
私が平岡を見ると、彼は少し笑った。
うむ。
かっこよい。
「弓道部の知り合いの3年生に彩樹を連れてこいって言われたんだよ」
「はぁ?」
思わず首をかしげた。
一緒にツインテールの髪も揺れる。
「お前はな?全学年に人気の美少女なんだよ。有名人だぞ?」
「はぁぁぁぁ?」
更に首をかしげた。
人気なのは私じゃなくて、お兄ちゃんだ。
それに、どこの誰が美少女だよ。
有名なのは、悪い意味でだろ。
「なにそれ」
思わず笑ってしまう。
「まぁ、とりあえず、先輩に…てか、弓道部員に、会えよ。」
「わかった」
平岡の真剣な目に押され、思わず頷いた。
「雀野先輩、彩樹花夜連れてきましたよ。」
「おぉー!ありがとう、奏悟」
道場に響き渡る女の人の声。
奏悟って誰だ。あ、平岡の名前か。
道場内には、3年女子2人、男子1人。
2年女子1人、男子2人。
1年女子3人、男1子人の、合計10人がいた。
「じゃあ、自己紹介しなよ、彩樹」
「は?」
この10人の前で?
コミュ障の私が?
無理でしょう。
私のコミニュケーション能力の低さを甘くみてると痛い目にあうぞ。
なにせ、中学からほとんど、
友達がいたことが無いのだ。
いや、いたけど1人な。オンリーワンだ。オンリーワン。
「おい、彩樹?はやく」
「えぇ?何いえばいいの?」
「とりあえず、名前とクラス、あと、一言。」
「……わかった。」
仕方なく、前をむいた。
つい、平岡の後ろに隠れ、制服を掴んでしまったのはしょうがない。
「1年A組の、さ…彩樹、花夜……です。よろしくお願いします……」
あー、だめだ。
コミュ障全開な自己紹介。
けど、上がった声は、暖かいものだった。
「かっわいーーい!!!!!」
「ぎゃ!?」
私は、女の人に抱きしめられていた。
「私は3年2組の雀野由羽李よ!よろしくね!」
「よ、よろしくお願いします……」
スズノユウリ先輩。
雀野先輩から、ほんのりいい香りがする。
って、私は変態か。
「おい、由羽李、彩樹がひいてるぞ。」
「あぁ、ごめんごめん」
「俺は、皐月葵。3年6組。よろしくな」
「よろしくお願いしますっ……」
サツキアオイ先輩。
背が高くてかっこいい。
こんな調子で、自己紹介をした。
3年生は、
部長の、皐月葵先輩
副部長の、雀野由羽李先輩。
旭愛未先輩。
2年生は、
春寧先輩。
理央先輩。
曜先輩。
1年生は、
岩埜香莉ちゃん。
古崎歌楓ちゃん。
山衣優衣香ちゃん。
扇原蓮君。
1年生の、4人とはすぐに仲良くなれて、一緒にお弁当を食べる約束もした。
「よし、名前、覚えたかな?」
「はい、覚えました!」
全員の自己紹介が終わっところには私もすっかり打ち解けていた。
「なぁ、彩樹。」
「なんですか?皐月部長。」
「弓道部に、来てくれないか?……毎日。」
いつもの私なら、絶対断っていた。
けど、友達が出来た今なら、笑顔で……
「もちろんです!」
いつの間にか道場の入口に立っていた平岡が、
少し嬉しそうに見えた気がした。