兄のせいで!
シスコンの兄と、妹の絡みが書いてみたかっただけです。
4月。入学して、約1ヶ月。
「おはよー、彩樹さん。」
「……おはよ」
桜丘高校1年、弓道部所属、彩樹花夜。
同級生から、3年生まで。
学校にいる生徒全員に「さん」付けで呼ばれています。
お金持ちでも無ければ、芸能人でも、モデルでも、美少女でもない。
別の理由で、「さん」付け呼びなのだ。
私はこんなの嫌なのに…。
こうなったのは、全て兄のせいだった。
同じ高校に通う2年の兄、彩樹椋夜は、不良だ。
ヤンキーだ。
喧嘩ばっかりしていて、常に怪我をしている。
髪の毛は金髪に染めていて、ピアスがたくさん空いている。
けど、喧嘩はめちゃくちゃ強くて、学校1のウワサ。
兄は強いので、それに憧れる人が多い。
顔もカッコイイ(?)ので、男女ともに人気があった。
……それが、いけなかった。
兄にまとわりつく下僕らは、私の近くにも寄ってくるようになったのだ。
最初こそは、やんわりと断っていたものの、ある日、我慢の限界がきたのである。
それも同じクラスの人の前で。
私は、キレた。
ブチギレた。
普段は大人しく振舞っていた私が、まさかキレるとは思っていなかったのだろう。
思わず相手に掴みかかり、ぶん投げた。
勿論、投げられた人はビビり、周りにいたクラスメイトたちにもドン引きされ、怖がられた。
そう、全て私の兄のせい……。
私に友達が出来ないのはきっと、兄のせいだ。
「ねぇ、いい加減さん付けで呼ぶのやめてくれないかな?」
クラスの男子に私はなるべく柔らかい口調で言った。
「え、でも……」
言葉を濁す男子……平岡。名札に平岡と書いてある。
平岡君に、私は頑張って微笑んでみた。
あんまり笑うのは得意じゃないのだけど。
「花夜は怖くないのよ?お兄ちゃんのことも、気にしないで大丈夫だから、呼び捨てで呼んでほしい……ね?」
どうやら微笑み効果は絶大だったようで、平岡君は少し頬を染めながら、頷いた。
「わかった、じゃあ、よろしくな。……彩樹。」
よかった……。
「うん、よろしくね、平岡君!」
こうして私にもやっと、1人めの友達が出来たのでした。