第4話 グランドギルドへようこそ!!
「フハハハハハッーーーー!」
最高だ、最高過ぎる!! 気分がいいぞ!
ザァァァァァァーーーー!
船を高速で移動させる。もう船の操縦に慣れてしまった。まぁ、簡単ですしね。たった二本のレバーを操作するだけなのですから。
グサッ、ブシュッ、シュパァァっと血が飛び散る。
「ガァァァァァ……!!」
ウォーフィッシュの苦しそうなうめき声である。
槍をふるい、血を飛ばす。……ふぅ。
さて、どうもシノです。現在、移動しながら船の上で槍を振るって戦ってます。え? 意味分からんってか? いえいえ、そのまんまご想像して頂けたらかと。
……もう何匹目だろうな、このウォーフィッシュとか言うモンスター。いきなりこんな強そうなヤツと戦うとは思わなかった。スライムとかから始めたいよ。魔法では苦労したな……。
でも、こんな強いヤツをバンバン倒せてるには理由があります。
いやー、ガサラのおっちゃんの店で10000エルする鋭くて切れ味抜群の槍を買っちゃったんだよね。なんでも鱗が固い魚用だとか。けど、もう無いって言ってた、それに凄いレアって。そんな貴重なものを……ありがとう! ガサラのおっちゃん!
まぁ、それを使って、ね。
そして……察した方もいると思うけど手持ちの金も無くなっちゃった。だから今、尚更稼がないとなのです。相場が分からないから果たしてこのウォーフィッシュ狩りに意味があるのか分からないけど。
ちなみにとっておいたSPで槍術スキルも習得し、これのおかげでウォーフィッシュが出てきた瞬間ブスッと刺して殺られる前に殺してます。
いやー、レベルがうなぎ登りッス。ありがたいありがたい。
そして、レベルアップで能力値を割り振ってるから動いてる限りMPを常に消費するこの魔導船もまだまだ動かせてます。
さてと、 ステータスオープンっと。
LV 15 『シノ』
職業 『海の狩人』
スキル 『槍術LV.5』『弓術LV.1』『水魔術LV.2』『風魔術LV.1』『データ魔法LV.1』『闇魔術LV.1』『付与魔術LV.1』『鍛冶LV.1』『錬金LV.1』『木工LV.1』
控え 『剣術LV.1』『土魔術LV.1』
装備 シリーズ名『旅人の装い』アクセサリー
頭
首
胴 旅人の服 旅人のポーチ
腕 〃
手 一撃の槍
腰 旅人のズボン
脚 〃
足 旅人の靴下 旅人の靴
HP300/300(+150)
MP173/500(+400)
攻撃 300(+290)+84
防御 300(+290)
魔攻 50(+40)+54
魔防 50(+40)
知力 200(+190)
素早さ 10()
運 10()
称号 |《new》魚の天敵
所持金 0E
PPは1レベルアップする事に100貰えるため合計1400PPそれをこのように振り分けた。
ちなみに知力を何故上げたかと言うとMP、魔力の質が良くなるらしいため。魔導船の燃費良くならないかなと思ったのだ。実際は速度がスゲぇ早くなったのだが。まぁ、結局よかったか。
次に一撃の槍。詳しく見ると。
武器『一撃の槍』レア度7 熟練度Lv.1 34/100
効果 プレイヤーレベルの差が6以内のものは必ず貫通する。初撃は必ずクリティカルヒット。攻撃+84(50+34) 魔攻+54(20+34)
武器アーツ 『絶対貫通』 全てのものを絶対貫通する。消費MP 10
これ見てびっくり。最高レア度は10だから凄く高いよね、レア度7って。熟練度は使ってれば上がるのだけど上がっていく事に武器の能力が良くなるんだって。
ちなみになんでこんな高価なものが安く買えたかって? 魔導船と同じくまけて貰ったんだよ。マジで最初に来てラッキー! まぁ、みんな普通に草原の方に行って、次の街を目指してんだよね。こっちの方、港はβテストでは調べ尽くされ、大して何も無かったらしくβテスターも来なかったと。しかし、実は正規稼働で実装されたってこと──だと思う。
さて、話しを戻すが熟練度はその通りでレベル差3以内だったのが6以内になり攻撃+50が84に、魔攻+20から54になった。いやー凄いね。けど、レベル差って下のレベルにも適用されてるんだよね。んー、残念。自分のレベルにより範囲レベルが限られてしまいます。
と、思ったら武器アーツと言うものがありました。アーツはいわゆる必殺技で『剣術』のスキルを持ってたら『スラッシュ』とかのアーツが使えるように。『火魔術』だったら『ファイヤーボール』のアーツとか。魔法と一部のアーツはMPを消費して疲れもするけど現実でもできるようなアーツはただ現実のように疲れるだけ。いや、だけっていいうほど楽では無いけど。いや、本当にね?
最初の方はレベル差があるからアーツを使うはめになった。やはり何回もやると立ってるのが辛くなって船も止めて休憩した。それに、クールタイムがあって連続で出来ないのもめんどい。
まっ、それもレベルアップして随分と何回もできるようになってきたけど。クールタイムは変わらないけどね。
ハイ、気を取り直して称号。詳しく見ると。
称号『魚の天敵』
短時間に魚系モンスターを大量に狩った者に与えられる。
効果 魚系モンスターに対しての攻撃力が20%アップする。
この称号は凄いね!途中からなんか刺すのが楽になったもん。
今の魚系に対する攻撃力はつまり・・・460.8だから四捨五入して461っと。おおっ高い、よね。魔攻は125。まぁ、いいか。
いやー、まあ、そろそろ港に帰るとしますか。ウォーフィッシュ売りたいし。いっぱい足もとに転がってます。何エルになるかな~。
ブオオオオオオーーン、ザァァァァァァ。
エンジンと動いた時の音と波の音ですよ?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さて、港に着きました! まさかの船を泊めるのに金。というか月間契約! 月極駐車場ですか! まったくもう……ですが皆さん知っての通り無一文なので待ってもらってウォーフィッシュを換金してからということにしました。
そこまで現実っぼくしてほしく無かった。あっ、でもこの世界は稼働前に現実のように何億、何兆のような時間分加速させて出来てるらしく、これもこの世界の生き物が辿り着いた方法ということ……。
結局人間は金かよ! ちなみにゲーム内、この世界の時間は現実と同じで今は動かしてるらしい。夜しか出来ない人とか辛くない? 抗議来そうだね。ゲームなのに! って。
さてさて、気を取り直して……あれ、なんかデジャビュが。
ウォーフィッシュを売るために総合組合に行きますかね。個人だと魚市場とかでは高く売れないらしいんだよね。
はっ! 船に慣れて歩くのが辛い。街中まで繋がってる川とか水路ないかな。あったら船でそこまで行ってやる。
さて、街中を抜けてっと。ちなみにウォーフィッシュは箱に入れて持ち運んでます。アイテムボックスとかないんだよね。このゲーム。そしてポーチは小さいと。辛いな箱で運ぶの。取ってが無いんだよね。船にあった大きめの箱。
にしてもウォーフィッシュが小さいというか細くて助かった。一匹80㎝ぐらいだけど細いし。
てな分けで到着しました、総合組合!
そして、説明! 総合組合、通称 『グランドギルド』はプレイヤーがつくれる個人組合『ギルド』とは違い、最初からあるギルドです。グランドギルドは独立しておりどの国にも所属してません。
冒険者ギルドや商人ギルド、傭兵ギルドなど様々なものがまとまっておりプレイヤーもつくれるギルドもここに申請してつくります。
ギルドに入ってない人はこのグランギルドに所属、利用するのが基本です。クエスト、依頼もここを仲介するのがほとんどでギルドもそういう面ではよく使用します。
ギルドに所属しなくても活動出来ますが登録しておくと様々な施設や便利なものが利用できます。何よりこの世界での身元の保証になります。
以上、FWO公式サイトより。
ということでもっと細かいことは行って確認とのこと。プレイヤーは始めたらここに行くのが基本だが俺は船欲しさに時間がもったいないと感じたので行ってませんでした。
それにしても最後の一文なんか闇を感じるな……。ちなみに場所は神殿のあるあたり。
さてここではウォーフィッシュを売るのだが先に登録しないとな。登録してないと安く買い叩かれるらしい。ちくしょう。
そんなこんなで扉を開けます。西部劇のような扉を思い浮かべるかも知れないがここはグランドギルド。商人ギルドとかも一緒の施設にあるわけだからしっかりした綺麗なデザイン、白を基調とした高級感溢れるデザインです。わぉ。
さっきから冒険者の方々、鎧や剣等を装備した人も出入りしていて中にもいるから違和感半端ない。
えっと登録登録っと。一番左側から数ヶ所の窓口が登録の場所らしいのでそこに進む。プレイヤー逹のピークは過ぎたらしく少し並んでいたがすぐ自分の番になった。
「ようこそグランドギルドへ! 初めての方ですか? 復帰の方ですか? その格好だと初めての方ですね? 何のギルドへの登録でしょうか?
ちなみに個人組合のギルドへの登録は各個人組合の施設で登録ですよ?」
清楚な制服の水色の髮の受付嬢さんが笑顔で声をかけて来た。職業上たいへんですね。髮色がファンタジーですな。それにしてもなるほど復帰の人もここを使うのか。後、格好で判断するのは良くない。あっているが。
「ああ、初めてだが多分冒険者ギルドへ登録だ」
言ってて冒険者ギルドで大丈夫か不安になってきた。自分のプレイスタイルって冒険者かな、それとも漁師ギルドとかあってそっちかな? まぁ、冒険者ならいろいろ大丈夫だろう。
「はい冒険者ギルドですね。ではそちらの紙に名前、戦闘スタイル等の項目に書き入れてください。」
そう言われて渡された紙には名前、年齢、職業、戦闘スタイルなどの項目があった。それらを埋めていくと住所というのがあった。いや無いってば。聞いてみる。
「すいません、これは──」
「あっはいそれは書かなくても大丈夫です。あ、ですが個人番号とフレンドコードは書いてください。これは連絡や前科の確認について使用しますので」
「え?」
そう言われて確認するとその後に個人番号とフレンドコードと書かれた項目があった。出席番号みたいですな。
フレンドコードはフレンド交換の時に使うやつで、フレンドになると番号で電話やメール、チャットができるので連絡するためということだろう。NPCの方にもその概念があるのか。でも個人番号って?
考えてたことがバレたのか受付嬢さんが説明してくれる。
「あっ、個人番号とは個人を特定できる番号でその番号を特殊な魔導具で調べるとその人の情報が分かります。フレンドコードの下あたりに乗ってると思います」
なるほど。これか。そう言われて書いていく。マイナンバー的なノリですかね?
「はい、ありがとうございます。では」
そう言って受付嬢さんはすぐ近くの機械にそれを入れていく。すると機械が読み取る時間なのか少ししたら鉄らしき金属できたカードが出てきた。それを受付嬢さんは渡してきた。
「はいどうぞ。これがギルドカードになります。これは特殊な金属で出来ており、あなたの個人情報が入っています。書かれてるのは名前とギルドランクです。これを特殊な魔導具に当てるとその魔導具が情報を読み取ります。お金もこれに入れとくことができ、店によってはそれで支払いができますよ。シノさんは初心者なのでランクはDとなります。それに伴いカードの色は灰色となります。」
そう言うと受付嬢さんは姿勢を正した後聞いてくる。このギルドカード一枚でICタイプの身分証と電子マネー擬きになるのですね?
「他に質問はありますか?」
おっと忘れぬうちに。
「魔物の買い取りをしてほしいのだがそれはどこに?」
「はい、一番左側の扉を開けて頂いてそこの部屋の受付で買い取りを行ってます。」
「ああ、分かった。ありがとう」
そう答えると受付嬢さんはまた姿勢を正し笑顔で一礼した。
「はい、それではよき冒険者ライフを」
「あぁ」
受付嬢さんってなんか凄いな。
えっと次にウォーフィッシュを売らないとな……えっと扉っと。この頑丈そうなヤツかな? 生物買い取りって書かれてるし。
ガチャっと。……バタンっ。すぐ閉めるが吉だと自分は感じました。
「うわぁ……」
もう一回、扉を開けてすぐ閉める。扉を開けた瞬間、物凄い匂いが鼻を襲った。なんだろう血生臭い匂い。そうかこう言うことか。わざわざ扉があるのは。そりゃこんな匂いさっきのいろんな人が使う部屋に流す分けにはいかないな。
よし、意を決して中に入る。
ガチャ ギィィィ バタン
「ゲホッ」
うっ……今度は中に入ったがそのせいかさらに匂いがクドイ。成れないとこりゃキツいな。
「おや、初めての方ですか。確かにこの匂いはなれないと辛いでしょうね。おっと私は売買課の担当で鑑定士でもあるクロノと言います。えっと……シノ様は何をお売りに?」
うおっ、ビクッた。顔を俯けていたところいきなりだな。えっとなんだこの黒髪の下の淵がない銀色眼鏡は……鑑定士のクロノというのか。覚えたぞ。なんかこれからもお世話になりそうだしな。
しっかり制服きてるな、受付嬢さんと違ってもちろん男の。そう言えば受付嬢さん名前なんていうのだろう。てか、なんでコイツはオレの名を!?
「ああ、名前はあなたを鑑定したんですよ。ちなみに人を鑑定するのはあまり良くないですよ? して、本日の物は?」
「おい、ならやめろ。てか、口調じゃっかん崩れたな。……はぁ、まぁいい。売りたいものは……と、これだ。ウォーフィッシュだ。てか、ナチュラルに心読むのやめろ!」
どうして心でしか思ってないことが分かるんだよ。まさか鑑定スキル? 鑑定は人にしてはいけません! そんなんでしょ? 極めればそんなことまで分かるようになるとは……。
そう思いながら箱の蓋を開けてクロノに見せる。表情が変化しない、反応しろよ。
「ほう、ウォーフィッシュですか。32匹も。レベルは10あたりのですね、初心者なのに良く倒せましたね。。それに加えて状態はまぁいいですかね。一撃で損傷が大きいですが逆にそれだけですし。では32匹全部で32000Eでどうでしょう?一匹1000Eですよ」
おお、俺の財布回復のお知らせ! ガサラのおっちゃんありがとよ!
クロノの顔も以意そうにしてて面白い。初心者を舐めるなよ?にしても、鑑定いいな。数もすぐ分かるとは。多分それも鑑定の能力だよな。
「ああ、それでいい。そんな高くなるとはな」
「そりゃそうでしょ。32匹もあっていくらレベル低いって言ってもウォーフィッシュなんですから。レベルによって強さは大きく変わりますけどどのレベルでもこの尖ってる先端で思いっきり刺してくる最初の一撃は怖いのですよ? 高ランクの冒険者でも油断してると命取りになりますので。まぁ、それはともかくとして美味しいんですよ。この魚、ウォーフィッシュ。凄い動いてるのに身があんな柔らかいとは。だから高く売れるんですよねぇ。それに────」
「ストップストップ! 終わり! ほら早くしてくれ」
なんか長くなりそうなので止めた。けしてこれから話されるであろう美味しさを思い浮かべ食べてみたい欲望を耐えるのが辛くなるであろうからではない。
そう言うとクロノは大して申し訳無さそうにはせず
「ああ、申し訳ありません。ついついあの超絶的味を思い出してしまい……レベル80のウォーフィッシュはとても……は! では、32000Eでございます」
そう言ってきたので渡してきたお金を受け取りウォーフィッシュの入った箱を渡すと冒険者ギルドを後にした。もう少し申し訳なさそうな顔しろよ……。
どれだけ食が好きなんだこいつは。
「では、よき冒険者ライフを……シノさん。次も是非ご利用下さい」
そしてクロノはニヤリと口角を歪ませながらシノを見送ったのであった。それはウォーフィッシュの味を思い浮かべたからかはわからない。




