第21話 海での予想外
おひさしぶりです。変なところが無いと良いのですけど。
見渡す限り海、どちらを見ても海、上を見たら雲1つ無い青い空。つまり雲量は0だから……えっと、今日は快晴すっね。
どうも、シノです。現在漂流中です。
ログインして準備したらすぐ出発して、調子にのって海の幸採りまくってたら現在地が分からなくなりました。
「どうしよう……」
まさに(´・ω・`)です。実はこの船には小さな羅針盤があります。
しかし、帰れるとは思った人は甘い。港の方角覚えていませんでした、だからといって残念無念また来年っと訳にはいきません。本当に危機的状況なのだから……‼
次にメニューから地図と思った人……このゲームはスキルに『地図作成』があってそれ以外にはアイテムでしかありません。
「本当にどうしよう……」
ちなみにこの状況でもログアウトは出来ますが次回にインした時もこの場所からです。下手したら船が流されさらにヤバくなるかもしれません。最悪体が無くっなっています。海の魔物に喰われてお亡くなりになりましたってアナウンスが流れてしまいます。
まぁ、ずっと悩んでても仕方がないので船を進めながらこれまた備品の望遠鏡で遠くを見てみる。
「あぁー……ん?」
あれは港? けど、いつもの港ではないな……新しい港町の情報なんて聞いてないしな。もしかして未発見地区かな? ということは最前線ってことになる。
危険かもしれないけど、取り合えず行くしかない。だってこのままだと遭難し続けることになるのだから。
「全速前進っーーーー!」
取り合えず気分を上げて行きたいと思います!
という訳で近づいてみたものの……あれは只の港じゃないね。だんだんハッキリとしてきたから分かる。あれは海賊のアジトだと思う。それに大きな海賊船っぽいのが近付いてきた……! 乗ってるの明らかヤバイ奴らだって。
「不味い、逃げないと」
すぐに方向転換しようとするも、その判断も遅かったようだ。
「獲物が逃げるぞっ! 野郎供追え! 俺達の居場所を軍の奴等に教えられたら厄介だ!」
「「「「「おっー!」」」」」
ちっ、軍に教えないから大丈夫だよ、何だよあの戦列艦……いや、フリゲートってやつか? どっちにしろ人数も砲も数が違うから真正面での対抗は出来ない。かと言って今逃げても大砲等で潰される気がする。
取り合えず一発ぐらい威嚇射撃して、怯む隙に逃げるか。船員は怯まなそうな外見してるけど、船が壊れたら不味いだろうから少しは時間を稼げるだろう。
それに試してもみたいし、攻撃が通じるかどうか。
砲を調節してっと、ここかな。久しぶりにアーツも使用する。対抗出来ないと言いつつ運が良ければ沈められると思うし。
まぁ、何にせよチャンスは最初の一度だけ。その後は普通なら沢山の大砲で潰されるだろう。なので撃ったらすぐに逃げなければならない。
「発動『魔法式貫通弾』……発射‼」
ドンッという火砲独特の火薬の炸裂する音と共に丸いなんの仕掛けもない砲弾が勢い良く敵船に向かって飛んで行く。
「これは良いのでは……?」
良い弾道だったので思わず口に出してしまう。そして敵船に当たると思った瞬間。
「魔法障壁展開‼」
「「「了解、『魔法障壁展開』‼‼‼」」」
な……んだと? 魔法? 海賊が? しかも、無詠唱だと。魔術師レベルが何人居るんだ……せめて魔術士レベル一人にしろよ……。
虚しくも砲弾は魔法障壁によって跳ね返り、海底へと落下していった。
「大砲放てぇ!」
「「「てぇ‼‼‼」」」
そして、幾多の砲弾が雨の如くこちらにお返しと言わんばかりに降ってきた。なんか海賊のくせして無駄に連携良くないすか? 指揮系統がしっかりしているというか。
取り合えず当初の予定通り遁走開始。
魔導船の加速力なめんな。
「追え! 魔導機関を動かせ!」
「「「おっー‼‼‼」」」
「ありかよっ!」
なんで海賊が魔導船なんだよ。そこは帆船だろ、てかその立派な帆はなんなんだよ、飾りかよ!
そんなことを言ってる間にも奴らは近付いてくる。なんか想像していた海賊と違うよコイツら。
「あぁっ、くそっ!」
何故か知らないけれど小型船より早い大型船って有り得るの? 結構速度出して逃げてるはずなんだけれども……、差が広がってる気がしない。
どのぐらい逃げていだろうか。もうあのアジトは見えない距離まで来ているのに。後ろを見たら奴らが居る。なんなんだよあの海賊達は! 普通はそんなに追いけないと思うけどな。逆にその軍とか言うのに見つかるリスクが高まるし。
自分の残りMPを確認する。果たして後どのぐらい船を動かせるだろうか……MP回復薬って買ってあったっけな。
そんな時、俺をストーカーしてた海賊船(仮)が爆発した。
そりゃもう、勢い良くドンッと。
「は?」
あの怯まなそうな船員の悲鳴と共に。
「「「ギャァァァアーーーー‼‼‼」」」
「何があったぁーーー! お前らぁーーー!」
黒い煙と此方に飛んで来る人を添えて。
「そこのお方、助けてでごじゃるぅぅぅぅぅぅっ‼」
ごじゃる口調の忍者? らしき人はそう叫びながら海へと落ちた。その衝撃で波が起こり、船が揺れる。本当にすぐ側に落ちたな……。
「ちょっ、無視しないで……ごぼっ……助けて……ごじゃる」
一瞬忍者らしき人は此方に向けて顔を出し、何か呟いてからゴボゴボと溺れ始めた。
いや、何て言ったかはハッキリと聞こえてるんだけどね。
取り合えず備品である紐付きの浮輪のようなもの投げる。そして、掴んだの確認してから引っ張る。よいしょっと。
「助かったでごじゃる……忝いでごじゃる」
ごじゃる忍者は俺の船に辿り着くと疲労の色を顔に浮かべながらも、安心しきった口調でそう言った。
ちなみに海賊達は船が燃えてるので、消火に忙しいのか追いかけてこない。俺は逃げ続けてるけどね。
「いや、別に良いけど……あんた何もんだ? プレイヤーなの?」
そう聞くと、ごじゃる忍者はよくぞ聞いてくれたとでも言いたげな顔をこちらに向けてきた。
「おぉ、そうでごじゃるな。某はミナト、忍者プレイをしてるでごじゃる」
「……なんで忍者が海賊船から?」
一番疑問に思ったことを聞くとごじゃる忍者……ミナトは少し困ったような顔しながら口を開く。
「実はクエストを受けててでごじゃるな。『王国の砦を偵察せよ』というもので、陸は監視が多いのでごじゃる。しかし、砦は海の近くにあるのでごじゃる。そのため、海側から小舟を使い潜入したのでごじゃる。それまでは良かったのでごじゃるが、無事偵察し終わり帰ろうと船をだしたら偶々海賊に見つかって海賊の敵と勘違いされて捕まったでごじゃる」
ふむふむ、それで? と目線で続きを促す。するとミナトは頷きながら答える。
「そうして、あのアジトに連れてかれ、牢屋にぶちこまれたのでごじゃる。その後、何とか脱獄出来たのでごじゃるが帰る船が無いと気付いたのでごじゃる。そんなとき、海賊達が慌ただしく出航の準備をし始めたので、もしかしたら帰れると思いコッソリ乗り込んだのでごじゃる。そしたら、この船が追われていたので応援の心配がないようにアジトが見えなくなるまで待ち、海賊船を爆破して、その隙に乗り移り、助かろうと思ったのでごじゃる」
「そうして、今に至るっと。」
「そうでごじゃる」とミナトは頷くと、まぁと前置きして一言付け加える。
「しっかりと助けて貰えず、海に落ちたのは予想外でごじゃるが。」
「あんなん助けられるかど阿呆!」
どうやって飛んで来る人を助けられるんですか? 教えて下さいミナトさん。 てか、欲張りなんだよ。
とまぁ、波乱に満ちた初の遠洋? 航海でした。




