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第12話 遁走の・・・

 「グハッ……何事だ……」

 「シレイ! ダイジョウブ!? シッカリシテクダサイ!」

 「「「ギギギギギギギギィ!」」」


 そう呟きながら膝から崩れ落ちるゴブリンコマンダー、傷口から吹き出る赤色の液体、血。

 司令官が倒れ、混乱するゴブリン達。


 「ざんねーん、コマンダーくん。油断はダメだよ~? それにアキも最後まで気を付けないと……。おっ? 君は? 」


 俺らに向けて話しかけてくる者、ゴブリンコマンダーの背後から現れた人影はゆっくりとした余裕を感じさせる足取りでこちらへ向かってくる。

 手には赤色に染まった長剣を、格好はアキと同じように黒色のローブを来ている、違いは今の急激な動きでローブのフードが捲れてる所だろうか。そこから見える顔、ゲームだしやはり美形だ、なんというか優しい顔付き? 長いクリーム色の髪。女性だな。一体誰だろうか。


 アキは彼女を知っているのか待っていたかのような安堵した表情で応える。


 「あぁ、助かったありがとう。久しぶりに戦ったからか少し油断してしまったよ。」

 「……貴様は何者だ? 冒険者達か……。」


 ゴブリンコマンダーも俺と同じ疑問を思ったのか話しに入ってくる。よく聞いてくれた。にしても、そのケガでよく落ち着いて話せるな。そもそも死なない?


 「んー? 私が何者かって? いいよ、教えてやるさ。 私の名は『ハル』。そこの魔術師(・・・)、『アキ』とPTを組んでいる者だ。分かったかい? コマンダーくん、それに君?」


 黒ローブの剣士……『ハル』はそう言った。そうか、アキはPTを組んでいる人がいたのか。最初から居れば、アキが連れてきてればゴブリン達と戦うのもっと楽だったんじゃないか? そう思いアキの方へ向く。

 すると、考えていることが分かったのかハルが答えてくれる。


 「あぁ、ログインしてアキとの待ち合わせ場所に来たらアキが居なくてね、待っても来なくて……いろんな所を探したんだからね? すまんのね、そのせいで助けが遅れたよ。」


 ハルからアキへと目線をずらす。アキと目が合った。するとアキは舌を出して片目を瞑り……。


 「・・・てへ♪」


 カチンッ


 「男がやっても可愛くねえよ、ゴラァ‼」

 「へぶっ!?」


 アキが空を舞った。……俺の拳によって。


 「おお! 君、いい筋してるね~。」

 「ありがとう。でも、いいの? アキのこと、PT組んでるんでしょ? 」


 そう言うとハルは少し考える素振りをしてから 


 「んー、まぁいいよ。しぶとい奴だから、まぁ死んでも教会で生き返るしね~。」


 自分でやっといてなんだけどアキ可哀想だな。


 「……そろそろ撤退させていただくぞ。」


 はっ! 誰かと思えばゴブリンコマンダーか。周りを見渡せばゴブリン達の姿もうない。いるのはコマンダーとナイト達だけ。下っ端は逃げるのが素早いようです。


 「逃がさないよ! 『飛斬(ひざん)』」


 ハルが剣を一振りするとゴブリンコマンダーへ向けて飛ぶ斬撃が放たれた。ハルが何らかのスキルのアーツを発動したようだ。俺も……


 「闇よ、我が敵を拘束せよ! 『闇の拘束(ダークバインド)』」 

 「『マジックシールド』‼ やはり貴様らは甘い! 砂糖と蜂蜜とメープルシロップを混ぜたものよりも甘い、甘すぎる! こんなに時間があればこうしてな……神秘なる力よ、我らが王よ、我を彼の地へ帰したまえ『帰還』‼ 去らばだ、冒険者達よ!」


 俺ら二人のアーツはゴブリンコマンダーのマジックシールドに防がれ、その間にゴブリンコマンダーは捨てゼリフ? を残して消えてしまった。

 消える瞬間体が保っていたため死んではいない。やはり、奴の詠唱どおり拠点へ帰還する魔法ということだ。便利だなー、転移かぁ。


 「あちゃー、逃がしちゃったかー。あーゆう奴はほっとくと絶対厄介だと思うんだよねー。めんどい事態になっちゃいそうだよ? そう言えば君、名前は?」


 ゴブリンコマンダーが消えて一息ついたら……そう言うことは言わないで欲しいのですけどね、フラグが建ってしまうでは有りませんか。

 

 「フラグたてないで下さいよ。……名前は『シノ』ですよ、ハルさん。」

 「あー、ハルでいいよ? アキもさんづけしてないようだし。」


 いえいえ、それはさっきからです。あんな態度じゃあ、ね? 苦笑いしか出来ない……


 「あはははは……、にしてもその名前。アキにハルって季節のこと考えてますか?」


 そう言うとハルは何とも言えない顔をした。


 「あちゃー、気付いちゃった? まぁ、単純過ぎるよね。その通り季節の春と秋からとったんだよ。でも、本名にも近いんだよ? あ、これは聞かなかったことにして? 個人情報だからね、お願い。 」


 パシッと手を合わせながらお願いしてくる姿、綺麗です。いや、本当はどうか知らないけどね。とにかくそんなん分かってますよ。 


 「えぇ、勿論それぐらい分かってますよ? でも、それぐらい言うなら最初から言わないで下さいよ。」

 「アハッ、ごめんごめん。」


 お願いといった険しい表情を崩し、活発そうなイメージをもたせる笑顔を浮かべるハル。いいね、うん。

 そんなことを思ってる時。


 「おーい。アキくーん、あれはさすがに酷いよ! ゲームとは言え、野垂れ死にたくないよ! MPが無かったらどうなってたことか。回復出来ずに今頃教会だよ。」


 アキが復活したようだ。木々の奥からアキが歩いてくる。ふむ、そうか。それはしっかり考えてから吹っ飛ばさねば。先に言っとくが何かあったら遠慮なく吹っ飛ばすつもりである。吹っ飛ばさないという選択肢は最初からない!


 「何言ってるの、無かったらアキのことだからHPポーションかMPポーションだして回復するでしょうが。」


 アキは図星をつかれてなお、抵抗する。


 「う……で、でも瓶が割れたら使えなくなっちゃうから」

 「空間魔法なんだから大丈夫でしょうが。」


 アキ完敗。空間魔法か、いいな~。そんなに良いものを持っているとは……アキめ。


 「ふふん、だからね。シノくん、遠慮なくアキのこと殺っちゃっていいからね。」

 「了解です。」


 なんか違和感があった気がするがハルの有無言わせないオーラを感じとりつい、無意識に答えてしまう。


 「ちょっ、ちょっと待って、今やっちゃってがおかしくなかった?」


 慌て始めるアキ。ドンマイ。俺、ハルに勝てないわ、全てにおいて。アキを改めて見るとハルに懇願してる姿が映った。


 「シノく~ん、そんな目しないで!? 悲しくなるから……。」


 アキが振り向いていきなりそんなことわ言ってきた。どんな目で見てたのだろうか。するとハルが気を効かしてくれたのか言ってくれた。


 「すっごい憐れみの目だったよ、私はそんな目で見られたくないな~。」

 

 アキ……。そうか、すまんな。


 「いや、僕もそんな目で見られたくないよ!?」 

 「ふふふ」


 うむ、またそんな目になってたらしい。

 アキよ、そんなに気にしないでくれ。昔からの事なんだ、こういう目になるのは……よく言われてるよ。ゲームの中でも変わらないとは……。

 


 


 


 


 


 

 



 


 

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