過疎化著しいとある限界集落内
所は日本。
それはそれは貧乏そうな、絵に描いたような貧乏長屋の一室。
老人「なんたることじゃ! 結局鏃は取り返せなかったのか」
天使「もっ申し訳ありませぬご老体」
老人「ご老体と呼ぶでない、熾天使と呼べ」
天使「は、はい」
老人「よいか、あの鏃は神の金属なるヒヒイロカネで創られた、現存する唯一と言ってもいい代物なのじゃぞ。それが盗まれたとあっては、我が一輪の薔薇十文字団の大いなる瑕瑾である」
天使「お言葉ですがご老……熾天使殿。鏃は、野犬が咥えていったという目撃情報もありまして」
老人「デマじゃデマ! デマゴギーの最たるものじゃ。野良犬如きにヒヒイロカネの真価が理解できるわけなかろうに。そうじゃろう、能天使」
天使「…………」
老人「返事をせぬか、能天使」
天使「畏れながら熾天使殿、能天使は力天使と共に捜索に出向いておりまする。わたくしめは権天使ですが」
老人「む、そ、そうじゃったのう。いや、発音が近くてな。ふぉっふぉっふぉ、紛らわしい」
天使「熾天使殿、確か我々の天使としての名称は、熾天使殿御自ら名づけてくださったと記憶しておりますが」
老人「その通りじゃ。儂がかつて所属しとった秘密結社の階級名から頂戴したのじゃよ」
天使「そこでは、階級を世間に発表することも禁じられていたとも伺っておりますが」
老人「むろんじゃ」
天使「……我々が階級を用いていること、知られたら一大事なのでは?」
老人「な、なあに顔なぞ合わせぬよ。向こうは大ブリテン島、対するこちらは日本列島。九時間も時差があるのだぞ? ふぉっふぉっふぉっふぉっ……」
天使「…………」
老人「何をしとる。早く情報収集に行かぬか!」
天使「もっ申し訳ございませぬ。それでは」




