夢幻の工房
意気揚々と夢幻の工房を発動した俺は次の瞬間、思いがけない強烈な頭痛に襲われ頭を抱えて呻き声をあげていた。脳内を強烈な痛みが駆け抜けていく・・・まるで額の中心から強烈な痛みが広がり脳内が蹂躙されていくようだ。
もしかして、これは夢幻の工房を使用する代償なのか?痛い!まるで頭を鈍器で殴られたように痛い・・・これが代償だとしたら、あまり乱用すると命にかかわる気さえする。
もしかして、夢幻の工房の使用中ずっと、この痛みが続くとか言うわけじゃないだろうな?と心配になったが、さすがにそれは杞憂だったようで痛みは少しづつおさまっていった。
大きすぎる力を得た者が払わなければならない代償の痛みとでもいうのだろうか・・・痛みがおさまって来た俺が周囲を見回すと、夢幻の工房に入っているはずなのに、そこはさっき自分がいた森の中の石碑の前だった。
ちゃんと発動してるんだよな?と若干不安になるが、さっき火にくべたはずの薪が、くべる前の状態でそこにあった。
・・・これは・・・入ってるな。よし、とにかくやってみよう「星天測位網!」とカスタマイズするつもりの魔法を唱えた。
すると、大地が輝き空が暗くなる現象のあと目の前に地図が現れた。さて、今ならコイツのカスタマイズが出来るはずなんだよな?よし地図上に存在する生命反応のあるところに光点を表示しろ!
次の瞬間!自分の体から何かが放たれた感覚を覚えると、森の中の生命の存在を全身に響いてくる・・・おお、間違いなくちゃんと夢幻の工房発動してるな。そして地図上の自分の居る場所を中心に波紋が広がるように無数の光点が浮かび上がり広がっていった。
うわ?なんだこれ!
・・・地図が、無数の光点で完全に埋め尽くされてしまっている。
うーん?何でこうなった?あ、そうか生命反応っていうだけなら小動物どころか虫でもなんでも反応するんじゃないか?森の中なんだし虫まで表示したら、そりゃ光で埋まるよな、なら地図に表示する生命反応のサイズによって表示調節を出来るようにすればいいか・・・
じゃ、基本設定を人間の子供サイズ以上とかにするとどうなる?よし、もう一度生体反応を表示しろ!
次の瞬間・・・また再び自分を中心に何かが放たれる。さっきと同じ感覚のあと今度は、さっきとは逆に自分を中心に光点が消えて行き・・・すっかり消えてしまった。
どうやら表示されている地図の範囲には、人間の子供サイズ以上の生体反応はないということらしい。地図の表示範囲せまくなってるしね。むしろこの範囲にそんな大きさの生体反応あったら警戒マックスだ。ここでさらに、表示された光点の光の強さで対象の大小を示するようにと仕様を追加する。
うーん、この生体反応を調べる機能になんか、名前をつけた方が、使いやすいんじゃないか?そうだな、よし「生体探査」とでもつけるか。
さて、地図の表示範囲を広げて・・・もういっかい「生体探査!」これでどうだ・・・出てこないな、この範囲でもいないのか?と思い始めたころ地図の端の方、川らしい地形の向こう側にポツポツと光がともった。
おお!発見!この辺を目指していけば・・・人に・・・あっ
えっと・・・これって人間だよな?と不安になりだした。考えてみれば、この世界には精霊とかドラゴンとかがいるのは確定なのだ。人の子供以上のサイズの生体反応を見つけたと言っても、それが人間とは限らない。
これが地球であっても、シカとかイノシシとかなんらかの野生の生物である可能性があるくらいだ。この世界なら。得体の知れない生き物とかだって・・・可能性も十分にあり得る・・・うん、あり得るなぁ。
なんせドラゴンに、小さいおっさん精霊とか・・・もう何でもありだと思ってた方がいいくらいだろ。見つけた光点が人間か、大人しい奴ならいいけど危険な生物で、いきなり襲いかかってこられたりしたら・・・
うん!シャレにならん。さすがに何の情報もなく光の場所は目指せないな、どうにか探査した生体の情報を、もう少し詳しく判別出来ないもんかな。
今のところ俺は火に対してなら・・・かなり強そうな気はするけど、いきなり戦いになって戦えるかって言うと、剣とナイフは持っていても使いこなせないのは間違いないしな。
魔法も一応使えるみたいだが攻撃に使えそうなのって・・・ファイヤーくらい?それもあれ確か、可燃物になら火をつけれますって若干微妙な物だったし、もう少し、攻撃手段と防御の手段が必要だよな。
うーん・・・「鑑定の達眼」
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† ステータス †
名前 黒須来斗(クルス=トワイライト)
種族 人族
クラス なし
年齢 15
レベル 1
生命 47/ 47
魔力 178/178
気力 163/163
力 36
知恵 78
素早さ 58
ギフト
????? ≪未覚醒≫
夢界支配者(ドリーム・ドミネーター)
叡智之慧眼(オムニシエント)
睡眠覚醒者(スリープ・マスター)
ユニークスキル
夢幻の工房 LV1 使用中
鑑定の達眼 LV1 使用中
スキル
火魔法 LV 1 ファイヤー
地魔法 LV 1 ▼アースソナー
星読み LV 1 スターナイト
練気術 LV 1 オーラセンス
剣 術 LV 1 なし
精霊魔法LV 0
夢幻魔法LV 1 星天測位網改(SPS:スターライトポジショニングシステム)
料 理 LV18
加護
精霊の加護(炎)
精霊王の加護(炎)
聖炎龍の加護
聖神の祝福
称号
夢界の王
かわいそうなひと
炎の精霊王の友
聖神預言者
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うん、地魔法が増えてるなアースソナーそして練気法のオーラセンスか、こいつらって生体探査で使ったんだろうか?
『アースソナー』
魔力を地表を伝って波紋状に走らせて地表に居る存在を認識する為の魔法。主に索敵に使われるが、魔力波動の生成術式が複雑な上、非効率だったので単純化しより効率化した。既存のアースソナーとは精度も探査可能な距離も大幅に向上、もはや別物になっている。
『オーラセンス』
気を練り鋭敏に研ぎ澄ますことで、周囲の気を読みとる能力。主に索敵に用いられるが、戦闘時に行使しておくことで敵の動きの起こりを捉える事が出来る。また対象の気の特性を読み取ることで、その対象の危険度を判別することにも使用出来る。
おぉ?これはもしかして・・・オーラセンスって既に俺の不安読み取って習得したとかなの?ある意味、暴走したら怖いスキルだな、夢幻の工房って・・・。
さて、とりあえず攻撃手段を何か追加しておきたい。確か魔力が足りないと使えないって話もあったから。ファイヤーボールかファイヤーアローとか、なんとなく初級っぽい魔力の消費が少なそうなヤツなら作って使えるんじゃないか?
ボールとアローなら、アローの方がかっこいい気がするからアローにしよう。早速、空中に浮かぶ炎の矢をイメージすると揺らめく炎の色を持つ炎の矢が空中に浮かび上がった。
何を狙おうかと、あたりを見回した結果、前回もファイヤーの餌食になってもらった倒木が目に入ったので、さっそくファイヤーアローを放ってみた。
・・・結果、火矢は倒木を焼き貫き地面を抉りましたとさ。
ファイヤーアローってより、レーザーみたいなんだが・・・その上、地面に転がってる小石が赤くなってるとか、どんだけ高温なんだよ!
そうか・・・俺の火系は加護のおかげで軒並み強化されちまうんだった。じゃ、もう少し小さめで・・・と矢を小さくして飛ばしてみたが小さく細く魔力が絞り込まれたせいで、木を貫いて大地をうがったのは同じなのだが、その音がヤバイ「ジュアァァァァァァァァ」と長く続き・・・着弾点を見に行くと、そこには深い穴が溶解した小石達と共にぽっかりと開いているしまつ・・・
危険度増してやがる!
・・・結局、何度か試行錯誤した結果注ぐ魔力を少なくすることで威力が弱まったので通常使用は、そっちで行くことにしようと思う。
結果出来たのが
『ファイヤーナロー』
『ファイヤーアロー』
『ファイヤーショット』
以上3種。ナロー(細い)が通常使用の弱体化タイプで、ショットがレーザータイプだ。
次は、ファイヤー同様ウインドアローとかはどうだろうか?と思ったんだが、これが思ったよりイメージしにくい。最初、風の矢を炎の矢と同様の要領でイメージしようとやってみたが、風君は目に見えないわけで目に見えない風の矢は、非常にイメージがし難い。
試行錯誤の結果、見えない風の刃を飛ばすイメージにしてみた。どういうわけか見えないのは同じでもカマイタチなどの現象のイメージがあるからか、こっちは比較的イメージがしやすかった。
出来たのは
『ウインドカッター』
その原理は分らないが、どう考えても真空とかがどうしたとかって感じの原理じゃ絶対にないのはわかる。だって・・・少し太めの木の枝が切れるんだもん真空じゃ無理だろ?
ついでに火で火事起こしたりも嫌だから、水も欲しいよね?飲み水も必須だし・・・ということで水を出す魔法と、水球を打ち出す魔法も試してみた。
しかし、これが手をかざした先の何もないところから水が出てくるという何とも超常現象なのだ・・・どんな水芸だよ?つーか魔力を物質に変換してるのか?大気中から水作ってるとかにしては、どう考えても出てくる水の量が多い。
水球を打ち出す魔法に至っては、空中に浮く水の玉が出現するのだが・・・もうこの段階で神秘的で美しいったらない光景だった。調子にのって水球を6つほど空中に浮かべたりして幻想的空間に浸ってしまった。
そして出来たのが
『メイクウォーター』
『ウオーターボール』
とこんな感じだった。
まぁ、コレだけあれば結構いいんじゃないかと思ったのだけど・・・回復系もなにか欲しいし確かスキルを作れるって話もあったので、折角だから剣術を夢幻の工房でいじったりは出来ないかなと少し色々と考えてみたのだが・・・
結果がこれである。
『生体回復』
『ヒール』
『練気剣』 練気法と剣術を合わせて用いるスキル
生体回復とヒールは、回復治療と回復魔法で、どちらも怪我や病気の治療に使える似たような効果なのに2つ習得してしまったのは・・・単に試行錯誤しすぎた結果だった・・・正真正銘、特に意味はない。
それにしても、なんともいえない違和感を感じてしまう。魔力という力を、熱に変換して火をつける。などは、それほど違和感なく受け入れられるのだが、風の力に変換とかになってくると、長く親しんだ常識が心の中でざわざわとし始める。
風は、大気の温度差による対流から発生する!というような常識が沁みついているので魔力を風の力に変換して・・・というのにはどうしても引っ掛かりを感じてしまう。
厳密にいえば、火の方もかなりおかしい。本来、熱=火ではない火になるには燃焼する何かが絶対的に必要になるはずだ・・・そうすると、魔力が可燃性の何かに変換されているのだろうか?等と
・・・常識で考えようとすればするほど違和感が生まれる。
しかし、この世界においてはなんらおかしいことではないようなのだ。なぜなら魔力を変換して水にするなんて言う物質の創造までが問題なく出来てしまうのだから。
そんなこんなで、出来あがった魔法を「鑑定の達眼」で確認していたのだが・・・不意にステータスの一部が非常に気になりだした。
そう、俺の名前の横にあるこのかっこ付の・・・俺の名前によく似た、クルス=トワイライトってやつだ・・・なんなんだこれ?自動的に決められた、この世界でのおれの名前・・・とかじゃないよな?
詳細内容を見るいつもの要領で、これはなんだ?と強く意識を集中して名前横のかっこ内をじーっと見つめてみる。しばらく見つめてみたが何も出てこないので、だめなのか?と思い始めたころにやっと表示がでた。
名前 黒須来斗(クルス=トワイライト▽)
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名前 クルス=トワイライト
エルスガルド王国の名門貴族トワイライト家の長男
勇者の素質を持った15歳の少年、死亡理由は魔物との戦いで受けた傷
特記事項:冒険者ランクE、登録名クルス
家族:父 アイン 母 ミーティア 弟 レクス 妹 アリア
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なるほど、この体の元持ち主の名前ってわけか、それも貴族様かよ・・・うーん、長男って事はご当主様の親父が死んだら家をつぐ立場なのか?貴族のくせに、なんで冒険者なんかやってこんなとこで死んでんだコイツ?バカなのか?
冒険者ランクとかあるって事は、冒険者として登録してるのか?って事は、あるんだな冒険者ギルド的な物が・・・いかんちょっと胸熱だ、かなりワクワクして来ちゃうよ俺。でも、持ち物に登録証とかなかったよな?そういう物はないのかね?
まぁ、いいや・・・体の持ち主の事情は、貴族さまで長男とか・・・なんかめんどくさいかもしれんから、そっちは、そのうちなにか機会があったら確認しよう。
さて、そろそろ現実に・・・と思ったところで、何か忘れてるような気がしたが思い出せないので、そのまま目を覚ますことにした。
・・・周囲の景色がスゥっと暗くなり消えてゆく。
そして俺は目を覚まし、衝撃の事実を理解した・・・
ありがとうございます。
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