幻想回顧録
夢幻の工房に入ると筋肉の痛みは感じなかった。もちろん今度は、頭も痛くない・・・。
工房の風景は、また石碑の所かと思ったら、夢幻の工房を起動する前に自分がいた川沿いの街道だった。おそらく発動した場所の風景になるんだな・・・ま、その辺の考察はあとでいいや。
今は取り急ぎ言葉がわかるようになる方法を考えよう。集合的無意識から読み取ってとかだと、この間の石碑を読んだ時のようになるのが精いっぱいな気がする・・・じゃあどうするか?
辞書的なものを作る?・・・それだとなんとなくは、わかるようになっても即会話とかは無理だよな。うーん・・・あ!この体って元は、この世界で15年生きたクルス=トワイライトの物なんだよな?ということは魂は転生したって話だけど、この体の脳にはクルスの記憶とかが残ってるんじゃないか?
もしそうなら、その記憶を読み取って上手く使えれば・・・即会話も可能になるんじゃないかな?駄目だろうか?
次の瞬間体にゾクゾクっと何かに頭の中を探られるような、何とも言えない感覚と共に・・・頭の中に大量の知識と記憶が流れ込んできた。おお?上手くいったみたいだけど・・・これは魔法とかじゃないよな?どうなってんだろう?そう考えると、夢幻の工房から回答が表示された。
『記憶の目録』
ギフト 幻想回顧録(イマジン・ノスタルジア)所持者のユニークスキル。黒須来斗または、クルス=トワイライトの記憶を鮮明に呼び出し自在に活用する事が出来る。流し読みした書物の内容なども目にしていたものであれば、呼び出し解析することが出来るが目にしてない部分は再現できない。微量の魔力消費で可能。
『記憶の目録』だって?新しいユニークスキルなのかギフト 幻想回顧録(イマジン・ノスタルジア)だって?そんなギフト持ってなかったはずだぞ。
「鑑定の達眼!ステータス!」
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† ステータス †
名前 黒須来斗(クルス=トワイライト)
種族 人族
クラス 守護者 LV2
年齢 15
生命 31/ 51
魔力 28/200
気力 43/176
力 45
知恵 80
素早さ 62
ギフト
幻想回顧録(イマジン・ノスタルジア)
夢界支配者(ドリーム・ドミネーター)
叡智之慧眼(オムニシエント)
睡眠覚醒者(スリープ・マスター)
ユニークスキル
夢幻の工房 LV 1 使用中
鑑定の達眼 LV 2 使用中
記憶の目録 LV 1
記憶の慧眼 LV 1
スキル
風魔法 LV 3 ウインドカッター
火魔法 LV 1 ▼ファイヤーアロー(弱)
地魔法 LV 1 ▼アースソナー
水魔法 LV 1 ▼メイクウオーター
星読み LV 1 スターナイト
練気法 LV 1 ▼生体回復
剣 術 LV18 なし
練気剣 LV 2 気斬
精霊魔法LV 0
回復魔法LV 1 ヒール
夢幻魔法LV 1 星天測位網(SPS:スターライトポジショニングシステム)
料理 LV18
加護
精霊の加護(炎)
精霊王の加護(炎)
聖炎龍の加護
聖神の祝福
称号
夢界の王
かわいそうなひと
炎の精霊王の友
聖神預言者
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え?なんか能力値も上がってるな。あれ?クラスが守護者になってる。剣士とか、魔法使いとかじゃないんだな。お?おおお!幻想回顧録(イマジン・ノスタルジア)って、伏字だった未覚醒ギフトってヤツが覚醒したのか!!ユニークスキルも増えてんじゃん!
詳細確認したい・・・けれど、あとにしよう俺確か荷物野っぱらに放置してきちまってるし、回収してこないと・・・サラさんからもらった宝石箱とか丸ごと無くしたりしたら、さすがに申し訳なさすぎる。
よし、目を覚ますぞ・・・あたりの景色がスウっと暗くなると、なにか話声のような物が聞こえてきた。俺が頭を振りながら目を覚ますと、目の前には助けた女の子の一人がいた。
「*+@!*+@!」
・・・え?あれ?言葉分らないぞ・・・
あ・・・そういえば、星天測位網の時も夢幻の工房内でしたマークは、現実に戻った時されてなかったな。じゃ・・・えーっと、クルスの記憶から、この世界の言葉についての記憶を呼び出して活用したいと意識しながら「記憶の目録」と小声でスキル名を呟いてみる。
これでいいのか?なんか出来んのコレで?って感じなんだが・・・
うぉっ!来た!
夢幻の工房内で試した時と同じように、体がゾクゾクっとするような何かに頭の中を探られるような・・・何とも言えない感覚と共に頭の中に、知識と記憶が流れ込んできた。
あ~、なんか頭が少しクラクラする。
「大丈夫ですか?」
おお・・・言葉分る。助けた女の子の一人が、駆けよってきて俺が立ち上がるのに手を貸してくれた。
「あぁ、ありがとう大丈夫だよ。」
「ラルーシャ!ミラクス!お兄さんおきたよー!」
「あ、そういえば怪我してた彼は、大丈夫?」
「はい、おかげさまで、あんなだったのにもう歩けてます。それに、貴方がかばってくれたおかげで妹は怪我もなくて・・・本当にありがとう。私は、ナーシャといいます。本当に、本当に、ありがとうございました。」
そういって、目を潤ませながら俺の目を見つめてるのは、くすんだ金髪の美少女だった。北欧系の透明感のある美少女なのに、親しみやすい柔らかい笑顔と褐色の瞳。
うっわ、かわいいな。
「い、いや気にしないで・・・僕は、クロス=ライトといいます。あ、すみません川向うに荷物置いて来てしまったので、ちょっと荷物を取りに行ってきますね。」
「はい」
起き上がると、短い時間しか横になっていなかったはずなのに、夢幻の工房に入る前の異常な疲労感が、すっかり無くなっていた。
とりあえず川向こうへいって荷物をとってこないとと、川を飛び越すための助走をしなければと走り出すと、やっぱり驚くほど体が軽い。
川べりの少し大きめの岩で踏み切って跳ぶと・・・来る時以上に、かなり楽に川を飛び越えられた。戦いが終わった直後の状態から考えると、しばらくは動くのも辛くなるのでは?と考えていたのだが、そんなことはなかったみたいだ。
川を渡った俺が河原を歩いて、荷物袋を下した野原に向かうと・・・何かが居た・・・俺がちょうど荷物を下ろしたあたりである。
最初は、ぎょっとしたが、さっきの人蛇に比べると元の世界でも見たことはある見慣れた姿でホッとした・・・いや、ほっとしてる場合じゃないなこりゃ。
マジかよ?あれ、イノシシだな。
どうやら、イノシシ君・・・俺の荷物の中の芋を狙ってるらしく豚っ鼻で荷物をつつきまわしている。おいおい・・・今度はイノシシとファイトとか勘弁してくれよ。
魔力も、もう殆どないはずだし、一応見とくか・・・「鑑定の達眼!」
生命 47/ 51
魔力 146/200
気力 151/176
魔力を確認しようと思ってみたんだが、なんだかずいぶん回復してる。ちょっと笑っちゃうくらい元気である・・・いくらなんでもこれは普通じゃない。うーん?・・・あ・・・まさか!睡眠覚醒者の効果か!?さっきの、短い時間の「夢幻の工房」入りでも、回復したって事なのか?ギャグギフトだとばかり思ってたが実は結構凄いのかもしれない。
よーし、コレならいける。
「ファイヤーアロー!」
言葉と共に、空中に浮かびあがる焔の矢・・・俺がイノシシの頭部に狙いをつけ、いけ!と心の中で念じると、それは矢というよりも、まるで弾丸のようなスピードでイノシシの頭部めがけて放たれた。
「ピギィ!」
うわ・・・これはナローでも、良かったかもしれない。ファイヤーアローは、イノシシの右即頭部から左即頭部へと貫通し、そのまま野原に一直線の火の道を作っていた。もちろん野原の火は、すぐにウオーターボールで消火した。
・・・それにしても火系の威力は、侮れない。人蛇にも、これを使えば良かったのかもしれないと思思ったが、ファイヤー系で乱れうちなんてしたら、確実に後始末が大変そうだ・・・
そんなことを考えつつ荷物を回収し、イノシシ君は折角だから食用にしようと、子供のころにじいちゃんが、やってたのを思い出しつつ何はなくても先ずは血抜きだと、ナイフを取り出してイノシシの首から頸動脈を断つ。ゴボリと血があふれだし、地面に広がってゆく・・・。
ある程度、血抜きが出来たところで、イノシシを引きずりながら川向こうを目指した。
川べりまで来てイノシシを持ったまま、川を跳ぶのは流石に無理なのに気づき、どうしようかと考えた結果・・・一か八か、イノシシ君をハンマー投げの要領で投げてみる事にした。
イノシシの後ろ脚をつかむと自分の体重を使って勢いをつけて、引っ張り上げながら引っこ抜くように持ち上げるとその勢いそのままに右足を軸にして体を回転させる、ハンマー投げ?いや、ジャイアントスイングか・・・
あ、思ったよりいけそう!
そらいけー!っとイノシシを、川向こうめがけて放り投げるとイノシシ君・・・ヒューンと見事に
川向こう目指して飛んで行きました。俺、どうやら完全に以前に比べて力とかつよくなってるな。
かなり今さらな気はしたが、今まで必死だったからなんとなく認識はしてた物の、火事場のなんとやらか?っていうような気持ちもあったんだよな。
とはいっても、俺の今の力がこっちではどの程度のものかは、分らないよな平均的な力っていうこともないとは言えないだろ・・・なんせ、あんな人蛇みたいなのがいる世界なんだしな。
・・・なーんて、思ってたけど、川向こうで待ってたナーシャちゃんが、投げ飛ばされてきたイノシシを見て滅茶苦茶驚いてるみたいだし・・・やっぱり・・・こっちの人も驚くくらいの力なのかも知れない。ある程度自重しないといけないかもしれない。
イノシシをほおり投げてから、俺も、助走つけて川を跳んで越えた。結構跳び越えるのが余裕でいけたので、ちょっと宙返りでも入れて見ようかと思ったが、調子に乗って着地で失敗して悶絶とかは、さすがに彼らに見られたくはない。
・・・一気に幻滅されそうだしな。
川を渡った俺に駆けよって来たナーシャさんと一緒に、ラルーシャちゃんが心配そうに付き添ってる
河原の石に背中を預けて座っている。ミラクスくんの様子を見にいった。
ミラクスくんは息を荒くして、あぶら汗を流していた・・・多分、折れたままの腕のせいで熱も出ているんだろう。
「ミラクスくんだったね大丈夫?」
「だ、だいぶいいんだけど、腕が凄く痛くて、眠ることも出来なくて・・・」
彼の腕を見ると、かなりうっ血していて痛々しいほどに腫れていた。
「大丈夫、すぐによくなるから。」
そういって、ミラクスくんの右腕に、手をかざしながらヒールをかけた・・・
「ヒール!」
俺の掌がうっすら光ると何やら、光の粒のようなものがゆらゆらと舞いながらミラクスくんの腕に舞い降りてゆく、その光の粒はまるで意思でもあるように自分の降りるべき場所を探るように、舞い飛びおそらく骨折部分だろう場所に集中的に降り注いでゆく
「あ、痛みが引いてく・・・。」
やっぱり、ヒールの効果ってすごいな・・・それにしても、幻想的な光の舞は置いておいて・・・患部の治癒してゆく様がエグイ・・・骨が折れまがっている腕がぐりぐりぐにぐにと動きながら折れた骨が合わさって治癒して行く様子なんか、不思議というよりも正直言うと・・・少々キモかった。
そんな、光景に若干引き気味だった俺とは、対照的に後ろから覗きこんでいたナーシャさんは
「やっぱり!すごい・・・街の凄いお金を取る治療士さんでも、こんな風には治せないですよ。」
と目をキラキラさせながら、患部が治癒してゆく様を見つめていた。
それじゃ街に行ったら治療士をやっても、生きていけそうだな等と思いながら、右腕が終わったので、左腕の治療に取りかかり、続いてヒールをかけてゆく。左は折れてはいないみたいだったがどうやら肩が外れていたらしい。治癒途中で、ボコっと音がして肩がはまった時は・・・ビビった。
「さっきは魔力切れで、痛み我慢させて悪かったね。もう両手動かせると思うけど、どう?」と問いかけるとミラクスくんは、おそるおそる腕を動かし、手を握ったり開いたりなどしながら驚いた顔をしている。
「にーちゃん!すげぇよ!あんなに痛かったのが、もう全然痛くない。」
さっきまでの苦しそうな顔からは、想像できないくらいの笑顔でこちらを見上げるミラクスくんに思わず、こっちも笑顔になった。
「そうか、よかった。どこかほかに痛いところはないかい?」
そう言いながら、頭をなでてやった。
「うん、大丈夫みたいだ・・・で、です。」
ミラクスの視線が俺の肩越しに、おそらくはナーシャさんの顔色を読んだらしく、少しどもりながら言葉づかいを改めた。
「かしこまらないでいいよ、普通に話してくれて。」
そう言いながら、後ろを振り返ると、やっぱりナーシャが顔を赤くしていた。
「もう少し、早く助けに来られたらよかったんだけど間に合わなくて・・・すまなかった。」
「いえ、そんな・・・」
「もう一人の男性は、身内の方ですか?」
「いえ・・・父の友人で、父の亡くなった後ずっと気にかけてくれてた・・・私たち家族の恩人・・・だったひとです。」
厳つい外見に似合わずいい人だったんだな、俺が光を見つけた時に、助けに来ることを躊躇していなければ、この男性も生きていたのかもしれない・・・。
「実は私たち、グラースさんにお願いして街に働きに出てるお母さんのところにゆくところだったんです。」
ナーシャさんが、そう言いながら表情を曇らせた。
「僕も人里に出たいから、よかったら街まで同行させてもらえないかな。」
「ほんとうですか!ありがとうございます。」
いや、こっちがお願いしてるんだけどね。俺、街どっちか分らないし・・・。
「実は馬車も壊されてしまったし3人だけで、街に向かうのは心細かったんで助かります。」
ほう、馬車で来てたのか・・・ということは遠いのかな街。
ありがとうございます。
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