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初戦闘

 一度、いくと決めたからには、もう悩まないとにかく川まで全速力で走る!

 野原を駆け抜けて河原に入ってからは、岩を足場に岩から岩へ加速を殺さないように跳ぶように走った!!


 これが火事場の馬鹿力なんだろうか?

 我ながらスピードが尋常じゃない。そして、川岸の大きな岩の上部を最後の足場にして川を飛び越える!!オッシャー!!!いけー!と全力で踏み切った・・・跳べそうだ。とは思ったけど、これらくらく届くぞ。


 まさかこんなに跳べるとは思わなかった。着地点までみると8m以上あるぞオリンピック出られるんじゃないか俺・・・なんて一瞬跳びながら考えていたが・・・思いのほか跳んだせいで、着地点は丁度いいと言うか、タイミングバッチリというか・・・人蛇と、今まさに剣を振り下ろされようとしている女の子のちょうど間だった。


 俺は、殆ど反射的に剣をつかむと、着地と同時に体をひねりながら剣を抜き、全身のばねを使ってジャンプしながら、女の子めがけて振り下ろされた人蛇の大剣に向かって体当たりするつもりで構えた剣をたたきつけた・・・こっちは全身の力と加速を思いっきり込めてるのに・・・攻撃が重い。


 ギャリギャリと、剣と剣を打ち合わせたとは思えない金属が削れるかのような音を立て、人蛇の剣が俺の剣の上を滑ってゆく。俺的には、剣を弾き飛ばすくらいのイメージで突っ込んだのだが、あの勢いでいっても人蛇の剣線をずらすのが精いっぱいだ。


 思い切り剣を叩きつけたので腕がしびれていたが、この状況で剣を落とすわけにはいかない。俺は相手が襲ってくることを警戒しながら、必死で剣の柄を握りしめていた。


 間近で見る人蛇は、思っていた以上に、気味が悪い・・・顔も殆どそのまま蛇ベースなのに僅かに人っぽさが、その顔に感じられるのが、なんというか生理的な嫌悪感を感じさせられる。悪い夢の中でも見たことがないような、邪悪な存在をひしひしと感じさせるような造形とでも言えば良いのだろうか・・・


 正直に言おう!勢いよく飛び込んだはいいけど、俺はいまめっちゃ後悔してる!これ・・・倒せる気が全くしないです。


 さっき人蛇の剣を受けた感じだと、ハッキリ言って力の差は歴然としてる。でも、思わぬところで現れた新たな敵の登場と、自分の剣がそらされたことでわずかにでも警戒したのか人蛇は後ずさった。


 もちろん・・・人蛇野郎が警戒した以上に、こっちは全力でビビっていた。


 それに、後ずさりはしても圧倒的に優勢な人蛇が逃げてくれるわけもない。女の子を背中にかばいながら人蛇から目をそらさないようにして、女の子達に「逃げて」と声をかけたが・・・


 「△※×*△△※※・・・」


 やべぇ、やっぱ言葉分んないよ。サラさんやノッカーと話せたのはなんだったんだ?言葉通じないなら、女の子達に逃げるよう目か手で促したいとこだが・・・とてもじゃないが、人蛇から目を離せるだけの余裕が俺にはないし、 手のほうも、あの重い剣の攻撃が来ると思うと、いっときでも剣を片手で持つ気にもなれない・・・


 あー!とりあえず・・・やれることやっておこう「練気剣!」これで気を、自分の体と剣に纏えてるのか?なんか、出来てる気が全くしないぞ。

 ぶっつけ本番すぎる。剣もちの人蛇の後ろにいやがる、杖もちの人蛇の杖がなんか光ってる気がする。魔法打ち込んでくるつもりなのか?・・・くそ、こうなりゃ先手必勝だ!


 後ろの人蛇に魔法を放たれるより先に、こっちからウインドカッターを打ち込んでやる。


「ウインドカッター!」


 ザウンと人蛇の前の地面から音がした・・・はずした?


「くそ、ウインドカッター!」


 ・・・今度は「ズバン!」と後ろの人蛇の頭上の木の枝が切れた。魔法が明後日の方向に飛んでるみたいで、人蛇の頭上、遥か上の場所の木の枝が切れた。


 なんで狙ったところに行かないんだ・・・?夢幻の工房では上手くいったのに。


 ・・・そういやあの時は、目標の場所めがけて手を振りながらやってたような・・・そうか、ならこれでどうだ「ふっ!ウインドカッター」っと全く届かない位置から人蛇めがけて手に持った剣を振り!イメージの中で風の刃で人蛇を切るように振りぬく。


 「ズバ!」


 よし!出来た。


 全く届かない筈の場所からの、見えない剣撃を受けた前衛の剣持ちの人蛇は、突然現れた自分の腕の傷にふれ、信じられない物を見るように手についた血を見ると、こちらを感情の分らない瞳で見つめながら、シャー・・・という独特の蛇の威嚇を立てながら、ただ手に持っていただけだった大剣をしっかりと構えなおした。


 こいつ、もしかしたら剣術とか使えるのか?・・・きっと、俺よりこいつの方が剣術のレベルだったら確実に高いだろな。こっちはLV1、要は完全な素人だ。こうなったらヤツがこっちの攻撃に順応する前に力押しでやっちまえ!


 「はっ!」「おら!」「やっ!」「せりゃ!」・・・


 振るった剣の剣閃から風の刃が飛んで、人蛇を切り裂くイメージを描きながら、剣を振る、剣を振る、ひたすら剣を振る。もっと早く!もっと鋭く!・・・ふと頭の中に、剣を捨てて手を振った方が軽いし連発できるんじゃ?なんて考えたが・・・手にしている武器を捨てるのが、俺は怖かった。


 鈍な剣ではあるが、それは俺にとって武器であると同時に盾だった。手放してしまえば、人蛇の剣はよける以外の回避の手段が無くなる。とてもこの戦闘のさなかに、ある意味心のよりどころになっている剣を手放すことは、俺には出来なかった。


 俺は、切り下げた剣をそのまま踏み込んで、止めずに切り上げると体全体を回転させて振り下ろす。もっと無駄を削ってもっと早く!もっと鋭く!剣を振ることに集中し出すと、心が変に静かになってゆく・・・ただただ、俺は剣を振る事に意識を集中してゆく・・・


 心が静かに、なってゆくに伴って、だんだんと剣を振る速度があがり間断なく剣が舞い始めた・・・なにか、自分の中に眠っていた物が目を覚ましていくような、不思議な感覚がある。


 そして、その一閃一閃がすべて風の刃となって人蛇たちに襲いかかってゆく。


 一撃の力は大きくないが目に見えない風の剣撃は、2匹の人蛇を少しずつ切り刻んでゆく。杖持ちの人蛇も魔法を準備しようとするたびに受ける風の刃で意識の集中を切られ攻撃することができていない。魔法使いの人蛇をかばって立つ剣を持った人蛇も、弾幕レベルに間断なく飛んでくる不可視の風の刃に、間合いを詰める事を出来ずにいる。


 でも、少しでもこっちの風の剣撃が止みそうになると、間合いを詰めようとしてくるので、人蛇の戦意は全く落ちていないようだった。


 俺は俺で、呼吸も腕の筋肉もつらくなって来ていたが、なにより手をとめることで反撃の隙を与えて、人蛇からの攻撃に身をさらすのが怖かったので攻撃を止めたくても止められない。


 出来る事なら、ずっと俺のターンで倒し切ってしまいたい。俺の頭の中はそれだけだった。


 あれだけ傷を受けながら戦意の衰えない人蛇の体力は驚異的だったが、止むことなく降り注ぐ不可視の風の刃で、全身に傷を受けてかなり参って来てはいるようだった。それでも、少しでも攻撃の手を休めると反撃のチャンスを狙ってこちらを伺っているのだから、凄い怖いし恐ろしい。


 でも、このままだと俺の体力が先に尽きてしまいそうだ。


 もし、今の攻撃を体力でしのがれたら確実に負ける。攻撃出来る間に、倒しきれなくても、せめて相手の力を・・・攻撃力を削り取らなければ。


 狙え!隙間を!敵の力を削るんだ。


 俺は、とにかく当たればよいと繰り出していた攻撃に、大剣の陰でこちらを伺う、剣持ちの人蛇の目を狙った攻撃を意図を悟られない様に混ぜて行く。


 数度目の目を狙った斬撃の後「ジュシュ!」という音を立てて、人蛇の右の目から血が噴き出した。通った!!片目を奪ったぞ、良し次は・・・あのでかくて重い大剣を奪え!大剣を握りしめる人蛇の指をピンポイントで狙うんだ!俺は、人蛇の剣を握る指に意識を集中しつつ、続けて剣をふるった。


 剣の軌道に沿って放たれた不可視の風の刃が、人蛇の剣を握る手をめがけて吸い込まれるように飛んでゆくのが感じられた・・・俺の放った風の刃は、人蛇の剣を握る右手の指の第二関節付近を切り裂き指をふき飛ばした。


 今度は一撃で決まった。


 片目を潰されて視界を奪われ、剣を握る指を失い・・・さすがに退却するかと思ったが、諦めるどころか・・・人蛇は、剣を投げ捨てると・・・蛇その物の攻撃姿勢をとり自分の牙を使おうと威嚇音を立てながら、その口を開いた・・・人蛇の口に覗く鋭い牙に、人間チックな部分のある顔が大きく口をあけたことでより醜悪な化けものと化してゆく姿は、邪悪そのもののように嫌悪感を感じた。


 その威嚇に・・・いつもだったら恐怖を感じてたはずだが


 集中しきっていたせいなのか今の俺には、ヤツの開かれた口は急所にしか見えない。


 よっしゃくらえ!!


 大きく開かれた口めがけ、気合と魔力を注いで全力で水平に剣を振る。力を絞り込むようにイメージしたせいか、全身から剣先へ力が流れ込んでいくような感覚があった。水平に振りぬいた後の剣は、なにやら剣全体がぼうっと光っているように見えた。


「ドシュ!」と何か今までとは、確実に違う音を立てながら風の刃が人蛇の口に吸い込まれて行った。


 その次の瞬間、剣持ちだった人蛇は・・・下あごを残して頭を切り飛ばされ・・・その場に沈んだ。やった!と気を抜いたところに、目に飛び込んできたのは、その向こうで、杖持ちの人蛇が杖に不気味な光を宿らせている姿だった。


 剣持ちの人蛇が倒れるや否や、その杖から火球が放たれた。


 俺の後ろには、女の子達がいる。よければ彼女たちに直撃してしまう・・・火炎系ならあたっても・・・きっと、多分大丈夫だ・・・大丈夫にちがいない・・・いや、迎撃だ!


「おら!!!」


 飛んでくる火球に向けて素早く剣を振り左右から2連撃の風の刃を打ち込む!!


 「おぉ!?火球を切り散らした?」


 そして、相手の火球を散らしてもまだ力のある風の刃は、杖持ちの人蛇を抉る!


 「よし!このままいくぞ!!」


 大きく、息を吸って呼吸を整えると筋肉が悲鳴を上げている腕をふるう切る!切る!切る!切る!剣もちの人蛇に、守られていた事で致命的な傷は、受けていなかった杖持ちの人蛇も続けざまに叩きこまれる不可視の剣撃に刻まれ続け・・・やがて、ズズンと地響きを立てて地面に倒れ伏した。


 ・・・やっと、やっと・・・倒した。


 体が、重い、喉がひりつく、俺はぜいぜいと荒い呼吸をしながら、全身から噴き出す汗にどれだけ自分が肉体を酷使したか実感させられた。鼻の先から汗が、地面へと落ちていく。


 つかれたぁ、マジ疲れた・・・戦闘の場面で魔法をイメージするのが、こんなに難しいとは・・・もっと簡単に出せるように訓練するなり夢幻の工房で魔法に手を入れるなりしておかなと、いざという時に使えない事になりそうだ。


 さっき助けた、二人の女の子が何か言っているが全く分からない・・・そうだ、確かこの二人には他にも連れがいたはずだ。


 人蛇の向こうに人が倒れているのが見える一人は少年でもう一人は年配の男性だった。年配の男性は腕を切り落とされ火魔法を打ち込まれたようで、残念ながら完全に死んでいた。年配の男性は年齢的には彼らの父親っぽいんだが、顔的には悪いけど血縁関係ないだろ?って厳つい顔だった。


 少年の方はどうやら人蛇の尾で絞められでもしたのか、手足が異常な角度で曲がり口から血をあふれさせていた。ウインドカッターを連発したこともあって、体がかなり重かったが生きているなら回復魔法を試すことも出来るだろう。


 そう思いながら、よろよろと、ヒューヒューとか弱い呼吸音を上げる少年のところに向かった。


 年上の少女の方が、俺の動きを見て少年のもとに駆け寄ってきたが、近くで少年の惨状を見て口を押さえて立ちすくんでいた・・・手の施しようがあるようには見えないからね。


 このままいきなり回復とかしたら、足とか曲がったまま治ってしまったりはしないだろうか?一応ずれた骨とかを戻せないかと思ったのだけどとても素人の俺が、どうにかできるレベルには見えなかった。


 仕方ないので、とりあえず現状のままで回復魔法を使ってみる事にした。

練気法だと治癒力強化での治療になるので・・・それこそ、曲がった状態でそのまま治るとかに、なりかねない気がする。なので、先ずは魔法ってやつの不思議効果に期待してヒールを試してみる事にした。


 少年の横に膝をついて先ずは苦しげな呼吸から、考えて胸部へ手を添えてヒールをかけてみた。すると苦しげだった、今にも死にそうな少年の呼吸が、みるみる落ち着いて行く。回復魔法ってすげーな元の世界でこの力持ってたら、教祖になれるな。


 「**%*※△#・・・!」


 横で見ていた少女は俺の手から光が広がるのをみて、なにかやはり言っていたが、どうせわからないので今は無視することにした。


 次に、腹部・・・そして左足、右足とヒールを次々にかけていったが、まさか変な方向を向いている足がちゃんと元の位置に向いて完治するというファンタジーな光景をみる事になるとは、予想外の回復魔法の効果に思わずヒャッハーしそうになった。


 しかし、その不思議な効果に夢中になりながらも俺の方の限界も、かなり近そうだった。


 そんな時、背後で奇妙な圧迫感を感じた嫌な予感に振り返ると、年配の男性の横で座り込むもう一人のまだ小さな女の子の方に倒れていた人蛇が杖を向けるのが見えた。


 あぁ、くそ!まだ、生きてたのか・・・


 いけない!と、とっさに人蛇に向けて剣を振って風の刃を飛ばそうとしたが、飛ばない。そうこうするうちにも人蛇の杖の先に奇妙な波動が集まって行く。


 「くそ、やらせるか!!」


 俺はそう叫ぶと、残りの力を振り絞って女の子を魔法の射線上から逃がそうと駆けよったが、人蛇の杖の周りには複数の火球が浮かんでる。あれを一気に打ち出されたら、少しくらい女の子を移動させても魔法の直撃から逃がすことは出来そうにない。


「ウォーターボール!」

「ファイヤーアロー!」

「ウインドカッター!」


 駄目だ出ない・・・魔力切れなのか?


 人蛇の感情の伺えない瞳に笑みが浮かんだように感じた。次の瞬間、人蛇の杖の周囲から高速の火の玉が打ち出された・・・良かった火炎系だ、なら「聖火龍の加護!」・・・あれ?なにかが発動したような気が全くしない。


 くそ!意図的発動が出来なくても、俺は火には強い!それに燃えない筈だし・・・見なかったことにしたかったあの称号の効果に今はすがるしかない!


 そう思いながら女の子の方を向いて自分の体を火球の盾にする。


 「ドガッ!」「ドン!」「ドド」衝撃は来るし少し熱いけど大丈夫そ「ドド」「ドガ!」「ドドド」あれ?いや、かなりいてぇ。


 熱による破壊は受けていないものの、なんというか背中を凹殴りにされてる感じだ。でも、致命傷はうけてない・・・と思う。


 「ドガ!」・・・やっと止んだ。


 女の子は、少しやけどを負ってるようだったので、手をかざして魔力切れならばと、練気法の

生体回復をかけてやると驚いた顔でこっちを見上げていた。もう心配ないからね。と心の中で声をかけると人蛇の方を振り返った。


 人蛇は、顔をこちらに向け、いまだに杖を握っていたが・・・力尽きたのか、がくんと頭が地面へ沈んだ。やっと死んだか?と思いながらも、まだ生きていられると困るので警戒しながら近づきその頭に

倒れこむように体重をかけて剣を突き刺した。


 正直かなりぎりぎりだ・・・主に体力が・・・俺は、そのまま地面に膝をつくと地面に仰向けになって寝転んだ。


 「%%&#**・・・」


 駆けよって来た、年上の女の子が何か言ってるが、やっぱり何を言っているのか全くわからない。


 ・・・言葉が分らないままで、意思疎通出来ないのはさすがに困るし・・・分るようにしてこよう・・・で、でばんだぜ・・・「夢幻の工房」


 俺は、小さな声でスキル名を呟いて夢の世界に潜っていった。

ありがとうございます。

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