1章 1話
桜が咲き誇る春の夜
新選組組長永倉新八は、島原で同じ組長原田左之助と藤堂平助といつもの様に酒を飲んでいた。
「だ〜か〜ら、何でお前らだけ女にモテんだよ‼︎」
「そんな事言われてもなぁ」
そう、なぜか芸妓は原田と藤堂の隣にはいたが、新八の隣には1人もいなかった。
「新八つぁん 暑苦しいから女の人よらねぇんだよ‼︎」
「何だと‼︎」
「しゃあねぇな…椿さん悪いがもう一人頼めるか?」
「かまいまへんよ、舞 雪を呼んできてくれへん」
「は〜い‼︎」
平助に酌をしていた巻髪の芸妓が、部屋を出て行った。
「雪ちゃんって、この前言ってたあの子か?」
「ええ、私の後継者の芸妓よ」
「後継者?」
「失礼します」
声が聞こえた襖が、ゆっくり開いていく…
そこには…
「雪です。どうぞよろしゅう」
「…」
彼女は、名前の通り雪の様に白い肌で、サラサラな黒髪で新八を見て微笑んだ。
「スゲー、美人じゃん‼︎ な!新八つぁん…?」
「…」
「おーい‼︎新八つぁん‼︎」
「何だよ‼︎」
平助は、ニヤニヤして新八の顔をじっと見る。
「もしかして、新八つぁん 惚れたろ」
「んなわけねぇだろ‼︎‼︎」
「あの〜」
「何だよ…‼︎」
後ろを振り返ると黒髪と白い肌が目に入った。
「お初にお目にかかります。雪と申します」
「お、俺は、永倉新八だ」
「組長さんなんですよね、格好いいです」
「そんな事ねぇよ」
新八の耳だけが、正直に真っ赤になっていた。
「な〜、左之さん」
「何だ?平助」
「今の新八つぁん見て思ったんだけど…」
「ああ、俺もだ」
「「(新八[つぁん]の)」」
「「(恋が始まった‼︎)」」
そんな事を思われているとは、知らない新八は、雪との楽しい時間を過ごした。
そう…
これは、新選組組長永倉新八の恋物語…。