UFOの愛の使者
「そうだ陽介さん、揚げるで思い出したんです!」
「揚げる……? てんぷらですか?」
「そうです! カラッカラに揚げるんです!」
唐突に揚げ料理の話をし始めたゆかり。
新しいレシピが思い浮かんだのだろうか。ちなみにカツカレーは美味しく頂いた後だ。
「肉ですか? カツカレーみたいに」
「肉……? ではないですね両生類です」
「りょ、両生類……?」
イマイチピンと来なかった。両生類というと……イモリとかサンショウウオとかの種類だっけか。
「サンショウウオとかのです?」
「おおっ、さすが陽介さん勘が鋭いです」
サンショウウオの仲間なのか!
「ウーパールーパーですっ」
「ほう……あの20世紀のアイドルですか……」
不思議と、驚きはしなかった。
意外性のほうが勝っていた。
「あのスローモーな動きがたまらないんですっ! さすが『UFOの愛の使者』なんていう異名も頷けますよね!」
「可愛らしくなんてない! ヤツがメキシコでどんな呼ばれ方をしてるか知ってます!?」
「うーん、ウーパールーパーじゃないんですか?」
「違いますよ! ヤツは『アホロートル』っていう無残な名前で呼ばれてるんです! ウーパールーパーっていうのは20世紀の適当な広告代理店がアホロートルじゃイカンだろっていう適当な理由で付けられた憶えやすい名前なんです!!」
「あら……」
「しかも成長の仕方だって変わりすぎていて、子供の姿のまま大人になってしまうという妙な特性まであるんです!」
「あらあら……」
「つまり、ウーパールーパー嫌いなので唐揚げにすることは大賛成です!」
「賛成なんですね……」
ウーパールーパーのどこが嫌いかと聞かれれば無駄にスローモーな動きとか愛らしい名前で呼ばれているところには不満を持たないが一つだけつっかかるところがある。
ブーム当時、ヤツは宇宙人と呼ばれていたのだ。
別に宇宙人と呼ばれることに異論はない……わけではないが、そこは対して問題でもない。
問題はあの奇怪なフォルムを人類は宇宙人と決め付けてしまっているところにある。
オカルト狂信者や、一般人はこう考える。
『見たことない生物→宇宙人 見たことない紋章→宇宙人の仕業』
と。
全くもって気に入らない。空に浮く円盤をUFOだと一概に説明していいのだろうか。
宇宙人に似た関連でUMAと呼ばれるものもいるが、考えるだけで頭痛がひどくなるのでなるべく回避したい。
アホロートルという生物が急にある場所で大量発生したわけではないのに宇宙人と呼ぶのはいかがなものか。
もちろん日本人の大半は宇宙人ではないと正しい判断をしているが本気で宇宙から来た生物だと勘違いする輩がいるから非常に面倒くさい。
例えば早奈苗の場合。
『これはわたしも見たことがないUMAだわ……! 触ることも出来るなんて! 大発見よ! 宇宙人は存在したんだわ!!』
こうなる。
狂信者が増えるたびにオカルト懐疑派は隅っこで追いやられてるんだ……! そんなことさせてたまるか! 明日にでも早奈苗を論破して床ペロさせてやる。
「あのですね、ウーパールーパーを飼ってるお友達がいるので、その方に安価で売ってもらおうと思います」
「飼ってるんならやめたほうが……」
「大丈夫ですよ、その方も食用で飼ってますから」
意外と食べる人多い。
カエル肉くらい知名度が高いとは聞いたが、ここまでとは……!
ゲテモノ食いとは言わないが、俺自身もヘビやらカエルやらは食べたことがある。
どれも鶏肉などのメジャーな食感に似ていておいしかった。
二度と食べたいとは思わないのが、カエル肉を食べた感想だったが。