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17話 恋とはどんなものかしら

こんにちは。音海奏です。

今日は気持ちいい秋晴れにも恵まれて・・・絶好の文化祭日和となりました。



「・・・えっと、つきましては、皆さんの心に届くような演奏をしたいと思います。

どうぞ、宜しくお願いします・・」



「奏ーっ、ホントにその挨拶するの?」



私が文化祭の本番で使う挨拶の原稿を読むと、千鶴がすごく不満そうな顔をした。



「なーんか、堅苦しいよー。もっとさー、祭りなんだからはっちゃけよーよ!」



「・・・え、えっと、具体的には、どうやって?」



「そうだねー。例えばー・・・「ヴァイオリン天才少女の音海奏ですっ☆」くらいやらないと!」



・・・そう言って、千鶴はわざわざポーズまで付けてくれた。




む、無理・・・・とてもじゃないけど、おばあちゃんも見にくるのにそんなこと出来ないっ・・・。

そんなことやったら、おばあちゃんが・・・



「奏。何ですかその品のない挨拶は。いつも礼儀正しく、謙虚にと教えているでしょう。」



と、怒られるに決まっている・・・。



「ごめん、千鶴・・・おばあちゃんに怒られるよ、そんなことしたら。」



「そうかなー?だって今日は文化祭だよ?お祭りだよ?ちょっとくらいハメを外したって怒られないって。」



千鶴はゲラゲラ笑いながらそう言っているけど、千鶴は知らない。

おばあちゃんがどれだけ礼儀というものに厳しい人なのか・・・



「とにかく、今日はこの挨拶で行くからっ!」



「そう?まー、いーけどね。あ、そろそろウチ、クラスの出し物の準備があるから、行くね。

えーっと、奏、今日はいつ空いてんだっけ?」



「えーっと・・・これから森君と飛鳥とリハーサルして、10時から大公で、13時からソロのリハで、

14時から私のステージで、16時から夜明け一番前のステージに出るから・・・・

私の自由時間ってお昼時くらいしかなくて、

お昼はおじいちゃんとおばあちゃんと食べる約束しているから・・・」



折角ゆっくり千鶴達と色々回って見たかったんだけど、こればっかりはしょうがない。



折角おばあちゃんと、それから滅多に関東にはこないおじいちゃんも

鹿児島からわざわざ来ているのに友達と回っているわけにもいかないし・・・



ううう、折角の文化祭だし、皆と回りたかったなぁ・・・。



「そっかー。あ、でもさ、11時から20分だけ時間ある?

まいまいちゃんのステージがその時間なんだ。ウチも見に行くし、奏もおばあちゃん達と見に来なよ。」



「あっ、そうなんだ・・・。うん、大丈夫・・・絶対行くから!」



「よしっ!じゃあ、また後でね!」



千鶴がニコッと笑って、手を振った。


私も千鶴に手を振り返す。



まいまいちゃんのステージかぁ・・・確かモーツアルトの恋とはどんなものかしらを歌うんだっけ。



オペラ歌手ではない人があの歌を歌ったら、どういうふうになるのだろう。



歌詞の内容は、恋を知らない純粋な少年が、貴婦人に向かって、恋に目覚めた心の苦しみを訴える歌。




アイドル歌手が歌うと、どんな風になるのだろう。



私は、想像に胸を膨らませながら、リハーサルへと向かった。



--------------





大公の演奏は、大成功に終わった。



「お疲れ。いい演奏だったね。またこの三人で何かやりたいね。」



森君は充実したような達成感のある笑顔でそう言っていたし、



「奏ちゃん、今日はコンディションすごくイイね。ソロと夜明け一番星も期待しているね。がんばって!」



飛鳥からも褒められて、私は、すごく上機嫌のまま、おばあちゃんとおじいちゃんを探していた。




演奏に使っていた第二音楽室の外におばあちゃんが一人、佇んていた。



「おばあちゃん!」



私が話しかけると、おばあちゃんは笑顔で手を振った。



「おじいちゃんはどうしたの?」



おばあちゃんは少し、俯いて黙ってしまった。



「・・・ごめんなさいね。奏。貴方には黙っていたけど・・・

おじいちゃん、9月から病気で入院しちゃっているのよ。」



「えっ?」



だって、おじいちゃん、夏まではすごく元気な声で電話してくれたのに・・・




あんなに文化祭で私のステージを見ることを楽しみにしていたおじいちゃん。



「奏、最近すごく調子いいじゃないか。文化祭のステージ楽しみにしているからな。」



・・・今頃、きっと、すごく残念がっているだろうなぁ。

いくら元気に見えるからと言ってもおじいちゃんは今年80歳。いつ何が起こってもおかしくない年だ。



「・・・・それで、おじいちゃんの具合は?」



「大丈夫よ。すぐに良くなるわ。」



おばあちゃんは、笑顔でそう言った。




だけど、何故か・・・私の胸がざわざわとざわいている。




何だろう、すごく嫌な予感がするの。




もう、おじいちゃんとは、会えないような・・・・



「それで、何処に行こうかしら?」



「あっ!そうだ!おばあちゃん、メインステージにいこう!」



時間を見ると、もう11時を回ろうとしている。

私は、慌てておばあちゃんの腕を掴んでメインステージに向かった。



------



「こんにちはー!米村麻衣でーす!」



まいまいちゃんがステージの上に立つと、男の人の「うおおおおっ!」って歓声が響き渡った。



くりくりとした可愛い目に小さな背。アイドルらしいヒラヒラのピンクの衣装。

まいまいちゃんは、女の子から見ても・・・すごく可愛い女の子だと思った。



「今日はーっ、まいの通っている音羽高校でのミニライブにお越し頂きありがとうございまーす!

短い時間ですが、精一杯歌いますので宜しくお願いしまーす!

ではまず一曲目はデビューシングル「私はアイドル」です!」



まいまいちゃんの掛け声と共に軽快なメロディが響き渡る。

アイドルらしい親しみやすく。軽やかなポップソングだ。



まいまいちゃんは、ステージ上で妖精のように舞いながら歌って行く。



―――うわぁ。歌もダンスもうまいっ。


流石うちの学校の芸能科・・・。


うちの学校の芸能科はCDや舞台に立たせる時は

必ずうちの学校の名前を背負っても恥ずかしくないという最低ラインまで仕上げてからじゃないと

アイドルにしろ、俳優にしろ、デビュー出来ないって聞くからなー。



曲が終わって、まいまいちゃんが深々とお辞儀をする。



「ありがとうございました!

さて!次は、折角学校でライブをやるので、ちょっとオペラの歌を歌ってみようと思います!」



そう言って、まいまいちゃんは飛鳥を呼んで、「恋とはどんなものかしら」が、どんな曲なのかを説明した。



「・・・と、いうことで、歌わせて頂きたいと思います。聞いて下さい。「恋とはどんなものかしら」」



飛鳥の軽快なピアノ伴奏とともに、まいまいちゃんが歌い出す。



歌い方は、いつもの彼女のもので、オペラ的な歌い方ではない。

だけど、恋を知ったばかりの純粋な少年の気持ちが、よく表現できていた。



歌っているのはイタリア語だけど、歌詞を日本語に訳すとこういう感じになる。



『恋とはどんなものか

ご存知の貴女方、 さあ、判断して下さい、

僕がそれを心の中に抱いているかどうかを。


僕が感じていることを、貴女方に、お話し致します。

僕にとっては、はじめてのことで、

それを理解することが出来ません。


熱望に満ちた 愛情を感じ 

それは、今、喜びになるかと思えば

次の瞬間には、苦悩となるのです。

凍てついたと思うと、次には感じるのです

心が燃え上がるのを・・・

そして、また、一瞬のうちに 冷たく凍ってしまうのです。

それでも再び、われを忘れて、幸せを追い求めるのです。


誰がそれを手にしていて 

それが、どんなものであるか解らないのです。

おのずと溜息が出て嘆いてしまうのです

我知らず心ときめき、体が震えるのです。

安らぎが見出せないのです    夜も、昼も・・・

でも、僕は、こうして悩むのが好きなのです。


恋とはどんなものか

ご存知の貴女方、 さあ、判断して下さい、

僕がそれを心の中に抱いているかどうかを。』



恋かぁ・・・・。



歌詞を思い浮かべながらまいまいちゃんの歌声を聞いていたら、何故か美和君の顔が思い浮かんだ。




―――って、私、なんで今、美和君のことを考えたのだろう?






心臓がドキドキと高鳴り、胸が苦しくなる。



まさか・・・まさかね・・



ううん、違う。違う。だって、私と彼はただの友達で・・・・



『熱望に満ちた 愛情を感じ 

それは、今、喜びになるかと思えば

次の瞬間には、苦悩となるのです。』



『おのずと溜息が出て嘆いてしまうのです

我知らず心ときめき、体が震えるのです。

安らぎが見出せないのです    夜も、昼も・・・』



胸がどきどきと高鳴って、身体が熱い。




苦しいような、切ないような・・・それでいて、すごく幸せのように感じるこの気持ちは・・・





・・・どうして?




いつから?




『恋とはどんなものか

ご存知の貴女方、 さあ、判断して下さい、

僕がそれを心の中に抱いているかどうかを。』





―――そういえば、私は、いつだって、美和君に嫌われることを恐れていた。





中学時代、たくさんの人に疎まれることは・・・辛かったけど、

でも、それでも、こんなに強く嫌われたくない、なんて思ったことない。



私はヴァイオリンが出来ないから、嫌われてもしょうがないかな、

なんて、心の底ではそう思っていたはずなのに。




「俺は、お前に失望したりしないし、嘲笑もしない。」




ああ、そうか・・・・きっと、私は、あの時から・・・




彼が私の手を掴んで、闇に堕ちそうだった私を、音楽の道に引き戻してくれてから・・・





無意識のうちに、美和君ばかりを見ていた。





彼の音をずっと聞いていたくて、暇さえあればバンドの練習に通って。




何かにつけては彼のことを考えて。




それから、彼と合わせた時のあの音・・・・




それは、まるで強い引力のような力で、ぐいぐいと私を引き寄せていたの。




私の心の中で、いつの間にか美和君が大きな存在へとすくすく育っていた。




それが当たり前すぎて、自分の気持ちの変化に全く気がついてなかった。





―――そうか、これが、恋、なんだ・・・・




あまりにも美和君のことを考えるのが当たり前すぎて、気づけなかった。

ちょっと考えれば、他の人に抱いている感情とは違う気持ちだと気付けそうなのに。





その気持ちに気がついた時、胸のあたりにふわっ、と花が咲いたような気がした。





ステージでは、歌が終わり、大きな拍手に迎えられて、まいまいちゃんが笑顔でお辞儀をしていた。





-------------------




まいまいちゃんのステージが終わって、学校の中を歩いていると、色んなモノがキラキラして見えた。




どうしてなんだろう。いつもの学校でいつもとは違う祭りの空気だから?




それとも・・・・恋という気持ちに気付いてしまったからなのだろうか。




どちらなのか、よく分からないけれど・・・今なら、すごくいい音が出せそうな気がする・・・・。




―――ああ、ヴァイオリンを弾きたいな。



今なら、「カルメン」だってすごくいい音が出そうだし、その後は美和君とのコラボもある。



「どう?一緒にやるか?」



今思えば、あの時、もったいない選択をしちゃったかな・・・・



あの時一緒にやるって言っていれば・・・ずっと美和君と音を合わせられたかもしれないのに・・・




―――でも、しょうがないんだ。

きっと、今の気持ちのままあの時に戻ったとしても、私の答えは変わらないだろう。




私が美和君が好きな気持ちと、ヴァイオリンを弾きたい気持ちはまた別のものなのだ。




だから、一緒にいれなくて残念だな、とは思うけど、その選択に後悔はない。



「美和君・・・」



ああ、早く夕方にならないかな。




美和君と早く一緒に合わせたいんだ。





直接言葉で言うのはまだ恥ずかしいし・・・告白とかは、全然考えてないけど。






でもね、音楽を通じて、私の気持ちをちょっとでも知ってもらえたのならいいな。



美和君みたく、歌詞のある歌を歌うわけではないから、うまく伝わるかどうか、自信ないけど・・・・





それでも、いい音だったな、って美和君が笑ってくれれば、それでいい。




----------



あっという間に夕方になって、夜明け一番星のステージとなった。

この時間は、終了イベントの一個前とあって、一番メインステージに集まる人が多くて、

まさに文化祭のメインイベントという感じのステージとなる。



(何だろう・・・・いつもより美和君がキラキラして見える・・・)



彼はいつも仏頂面しているし、お世辞にも親しみやすい顔とは言えないけれど。



でも、意外と整った顔をしているんだなぁ・・・と改めて思った。

バンドの中では、客観的に見れば酒井田君が一番かっこいいし、

藁科君はそこそこ整っていて、愛嬌があって親しみやすさでは美和君より上なんだけど・・・



どうしよう。何か美和君が一番カッコ良く見えるかも・・・



「おい、音海、話聞いていたか?」



急に美和君に話しかけられてびっくりした。



「え、ごめん・・・ぼーっとしていて全然聞いてなかった・・・」



美和君がじろり、と怖い顔で睨んでくる。




ど、どうしよう。

明らかに日常生活に支障が出ているかもしれない。



お、落ち着いて、少し気持ちを抑えよう・・・



「音海ちゃん、朝音はね、最後の曲がコラボだから、

千鶴が呼んだらステージに出てきてって言ったんだよ。」



藁科君がすかさずフォローを入れてくれた。



「藁科君、ありがとう・・・」



藁科君がいてくれて良かった。

藁科君はバンドのまとめ役をしてくれているし、

優しくて気遣いができる人なのでこういう細かいフォローを入れてくれる。



きっと、美和君が不器用な人だから、

藁科君がまとめてくれることで、うまく回っているんだろうなあ、と思う。



「よしっ!いつもの円陣組むよーっ!」



千鶴の掛け声で、皆が輪になって、輪の中心に手を置く。




うわぁ。すごいこんなことやるんだなあ、と遠目から見ていると、



「奏っ!奏も一緒にやるんだよ!」



と、千鶴が声を掛けてくれた。



「えっ・・・私も?」



「もちろん!だって、奏は今日だけだけど、夜明け一番星の五人目のメンバーだからね!」



千鶴がそう言ってくれて・・・すごく嬉しかった。




私も円陣の中に入って、一番上に手を重ねる。



―――今日だけだけど、私も皆の輪の中に入れることが、すごく嬉しい。



「よしっ!文化祭ステージ!ガンガン盛り上げていきましょー!」



「おうっ!」



掛け声を上げた時、皆と一つになれたような気がした。



「よしっ!いくぞー!」



皆がステージへと向かって行く。




いよいよ、夜明け一番星のステージがはじまる。




-----------------




夜明け一番星のステージは、本当にすごかった。

いつもすごいと思うけど、今日はまた特別に見えた。



自分の中で、好きという気持ちが、どんどんと風船のように膨らんでいくみたいだ。



どこまでこの風船は膨らんで行くのだろう・・・破裂とか、しないのかな・・・・



恋って不思議だ。こんなにも人を好きになれるものなんだ。




こんなにも、自分がおかしくなってしまうもんなんだ。




一旦それを認めてしまえば、止まらない。止められない。





このままもっと、美和君が好きになったら、私はどうなってしまうのだろう。






「次は、ウチの大親友の音楽科の音海奏ちゃんと音を合わせたいと思いまーす!」



千鶴に呼ばれて、私はステージへと立つ。




初めてで・・・もしかしたら、最後かもしれない美和君とのステージ。



曲がはじまり、私はヴァイオリンを弾く。




―――うわあ、今日一番いい音が出てる。



美和君が、「何でそんないい音を出してんだよ」って顔で私を見る。



私の音に触発されたように、美和君のギターの音が変わる。

千鶴のベースの音、酒井田君のギターの音、藁科君のドラム・・・皆の音が、変わって行く。



うわぁ、すごい、すごい、どんどん演奏が良くなる。楽しいっ・・・・。



皆の音に触発されて、もっといい音を出してみたくなる。

指使い、弓の動き、テンポ、音程、周りとの連携・・・・

全神経をヴァイオリンに集中させて、いい音を出す事に専念する。




―――音が、虹色に輝いている。



私の人生の中で一番理想の音に近い音が出た。



---------



「奏、とてもいい演奏でしたよ。」



夜明け一番星の演奏が終わって、珍しくおばあちゃんが私の演奏を褒めてくれた。



おばあちゃんは、私の演奏を褒める事なんて滅多にない。

いつも何かしら悪い所を指摘してくれるというのに・・・



「ほ、本当?」



「ええ。奏のヴァイオリンも、あんなに色鮮やかに歌えるようになったのね。

本当に・・・いい音だったわ。

これなら、もう、おばあちゃんがいなくても大丈夫ね。」



おばあちゃんは、少しさみしそうに笑った。



「そ、そんな事ないよ・・・。おばあちゃんがいなくなったら、私・・・・」



「ふふっ、大きくなってもまだまだ奏は子供ね。」



おばあちゃんは愛おしそうに私の頭を撫でてくれた。



久しぶりにおばあちゃんに撫でられて、くすぐったいような、恥ずかしいような、

なんだかちょっと切ないような・・・不思議な気持ちになった。



「おばあちゃん・・・」



「奏、実はね、奏にもう一つ、話してない事があるの。」



「何?」



「おばあちゃん、この間調子が悪くて病院に行ったらね・・・入院することになったの。」



「・・・えっ?」



私はおばあちゃんの顔をまじまじと見る。




そうだ。そう言えば、今日はずっと浮かれていて、気付けなかったけど、おばあちゃん、少し痩せている。




―――どうしてもっと早く気付いてあげられなかったのだろう。




私、自分のことで精一杯で、おばあちゃんのことも・・・おじいちゃんのことも・・・何も気付けなかった。




おばあちゃんが調子悪いと知っていたのなら、文化祭こなくていいよって言えたのに・・・



「大丈夫。今は調子がいいの。

それに、ちょっと手術すれば治ると言われているから。

全国コンクールは行けないけど・・・

奏の初の世界の舞台までにはおじいちゃんもおばあちゃんも元気になっていますからね。」



おばあちゃんは、私を安心されるようにぽんぽん、と優しく私の背中を叩いた。



そうだよね、今の医学は進歩しているし・・・おばあちゃんもおじいちゃんも・・・・元気になるよね。




私は、自分に言い聞かせように何回もその言葉を頭の中で繰り返す。




「奏ーっ!皆で写真撮ろうよー!」



千鶴が向こうで手を振って呼んでいる。



「ほら、そんな顔しないの。お友達が呼んでいるわよ。」



「で、でも・・・・」



「おばあちゃんのことはいいから、行ってらっしゃい。」



おばあちゃんに背中を押されて、後ろ髪を引かれながら私は、千鶴の方へと向かう。




―――さっきまで、あんなに楽しくて、美和君のことばかり考えていたのに。




どうしてなんだろう、今は、そんな気持ちはどこかに吹っ飛んでしまったようで・・・





おじいちゃん、おばあちゃん・・・・





大丈夫だよね?

絶対良くなって、私の世界の舞台を見に来るんだよね?




私のこの・・・



もうおじいちゃんとおばあちゃんに会えなくなっちゃうような・・・




そんな予感は、心配しすぎなだけなんだよね?






END


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