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弱き僕と最強の先輩   作者: マーたん


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3/21

第三話「影に潜むもの、光に導かれるもの」

迷宮の試練を終えた僕たちは、束の間の安息を得た――はずだった。

しかし、平穏とは決して長く続くものではない。

あの日、僕の中で光った“あの力”が、偶然ではなく何かの兆しであるように感じていた。


そして、最強の先輩――レイナ・ヴァルドとの間に生まれた小さな絆も、まだ脆く、言葉にできないまま揺れている。

第三話では、そんな二人が新たな森の試練に挑む。

恐怖、成長、そして未知なる闇との遭遇。

弱さと強さの境界を越える物語が、再び始まる。

迷宮での試練から数日が経った。

学園は表向き、平穏を取り戻したかのように見えるが、僕には違った。

あの日、僕が先輩――レイナ・ヴァルド――を救った瞬間から、心の奥に小さな変化が生まれていたのだ。

しかしその変化は、まだ揺らぎや迷いに包まれ、はっきりとは言葉にできなかった。



学園での朝


朝の学園は、いつも通りの活気に満ちていた。

生徒たちの笑い声や杖を振る音が、廊下や訓練場に響く。

僕は朝食を口に運びながら、昨日の出来事を反芻する。


迷宮で見つけた光――あれは偶然なのか、それとも、僕に宿った力なのか。

その疑問は僕を眠れぬ夜に追いやったが、同時に小さな勇気も与えてくれた。


「お前、今日も遅刻か?」

レイナの声が背後から低く響く。

振り返ると、いつもの冷たい表情のまま、先輩は腕組みをして立っていた。


「……すみません」

小さく答えると、先輩は無言で頷き、教室へと向かう。

言葉少なだが、昨日よりも視線の端に僕を意識していることがわかった。



特別実習の告知


朝の集会で担任教官が告げる。

「今回の任務は、学園周辺の森に潜む異形の魔獣の討伐だ。チームを組んで行動する」

その瞬間、僕の胸は再び高鳴る。

怖い、でも――昨日の光が、少しだけ自分を支えてくれる。


レイナは当然僕と同じチームに組まれた。

「……足手まといにならないでくれよ」

傲慢で冷たい言葉。

でも、僕は以前ほど萎縮しなかった。

「……はい」

震えた声だが、心の中には確かな決意が芽生えていた。



森への出発


森は濃い霧に包まれ、視界はわずか数歩先までしか届かない。

葉の間から差し込む光が、木々の影を揺らす。

足元の枝や落ち葉がカサリと音を立てるたび、緊張が胸に押し寄せる。


「気を抜くな」

先輩の低い声が、背後から響く。

その声に僕の心は少し落ち着いた。

恐怖に押し潰されそうな僕を支えてくれるのは、孤高の先輩の存在だった。



魔獣の出現


森の奥深く、低くうなりを上げる影が現れた。

黒い鱗と赤い瞳を持つ魔獣――数匹が僕たちを囲む。

レイナは即座に魔力を解放し、光の刃で一体を吹き飛ばす。

しかし、数が多く、完全制圧には時間がかかる状況だった。


僕は杖を握りしめ、足が震える。

恐怖で動けない僕の隣で、先輩は冷静に敵を斬り伏せる。

でも、昨日の迷宮で得たあの光の記憶が、僕を動かした。

「僕も…何かしなきゃ」

自然に心の奥から力が湧き、杖を魔獣に向けて差し出す。



偶然ではない力


森の奥、苔むした古代碑石に微かに光る紋章が見えた。

僕は杖を触れると、昨日よりも強い光が僕の体を包み、魔獣の動きを封じた。

「……お前、本当に使えるのか?」

先輩の声には驚きと困惑、そしてわずかな期待が混ざっていた。


僕は息を切らしながらも、光を保つ。

先輩の魔力と連動させると、二人の力はまるでひとつの光となり、森に潜む魔獣たちは次々に倒されていった。



闇の兆し


戦闘が終わり、森の奥に漂う異様な気配に気づく。

先輩も眉をひそめた。

「まだ、何かいる……」

その言葉に、僕の胸は再び緊張で締め付けられる。

昨日も今日も、危険は終わっていなかった。


しかし、僕は以前より少し強くなっていた。

弱くても、僕には戦える瞬間がある。

そして、孤高の先輩と心を通わせることもできる――。



心の距離と絆


帰路、夕陽が森を黄金色に染める。

僕は先輩の横を歩きながら、言葉を探す。

「……先輩、ありがとうございました」

小さな声で告げると、レイナは一瞬微笑む。

普段の傲慢さは変わらないが、瞳には確かな温もりが宿った。


迷宮や森の戦いを通して、僕たちの心の距離は確かに縮まった。

影と光、弱さと強さ――

二人の物語は、まだ始まったばかりだった。

第三話では、主人公が初めて「自分の意思」で杖を握り、光を生み出しました。

それは偶然ではなく、確かに彼自身の心の変化によるものです。

レイナとの関係も、冷たい上下関係から、わずかに信頼の芽が生まれる瞬間へと進みました。


けれど、その光の裏には必ず“影”がある。

森の奥に潜む正体不明の存在――

それが二人の運命をどう変えるのか、次の章で少しずつ明らかになります。


「弱さ」と「強さ」、

「孤独」と「信頼」、

そして「光」と「影」。

この物語は、そのすべてが交わる場所へ、ゆっくりと進んでいきます。

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