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弱き僕と最強の先輩   作者: マーたん


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2/21

第二話「迷いの先に、影と光」

第一話で、弱気な僕が偶然にも最強の先輩を助ける瞬間を描きました。

この第二話では、その事件の余波として、僕と先輩の関係が微妙に変化する様子、そして学園の迷宮での新たな試練を描きます。


弱くても、小さな勇気が生む変化。

孤高で強い先輩の心に、ほんの少し触れる瞬間。

二人の心の距離がどう動くのか、読者の皆さんと一緒に見届けたいと思います。

昨日の出来事がまだ夢のように胸に残っていた。

魔獣に襲われ、弱いはずの僕が先輩――レイナ・ヴァルド――を助けた瞬間の、あの衝撃。


僕は、まだ自分が信じられなかった。

なぜ、あの瞬間、体が自然に動いたのか。なぜ、先輩を助けられたのか。

そして、なぜ先輩は昨日の僕を見直したような――そんな目を向けたのか。



訓練場での日常


学園の朝は、静かでありながら重苦しい空気に包まれていた。

魔力を持たない僕にとって、訓練場は戦慄の場所だ。

一歩踏み出すたびに、先輩たちの視線や、強力な魔力の波に押し潰されそうになる。


「お前、本当に昨日のこと、覚えてるのか?」

レイナの声が低く響く。

僕は小さく頷く。


「……はい」

言葉は震え、背筋もぞくりとする。

先輩は不敵な笑みを浮かべたまま、僕の横を通り過ぎる。

その後ろ姿は、圧倒的な力と孤高の孤独を感じさせた。


僕は心の中で呟いた。

――僕は、どうしてここにいるんだろう。

魔力もないのに、どうして戦わなければならないのか。



地下迷宮への試練


その日の訓練は、学園の地下迷宮で行われる試練だった。

迷宮には古代の魔法が仕掛けられ、幻影や罠、そして魔獣が潜むという。

「弱き者は迷宮に入れる価値もない」

レイナは傲慢に言い放つ。

でも、昨日の事件のせいか、目にわずかに警戒の色が浮かんでいた。


僕は杖を握りしめ、呼吸を整える。

心臓が激しく打つ。

恐怖、緊張、そして微かな希望――すべてが入り混じっていた。


迷宮に足を踏み入れると、冷たい湿気が肌にまとわりつき、暗闇が視界を支配した。

一歩一歩、慎重に足を運ぶ僕の耳に、かすかな足音や低いうなり声が響く。


「……おい、気を抜くな」

先輩の声が、背後から低く響いた。

その声だけで、僕の震えた手が少しだけ落ち着く。



魔獣の襲撃


迷宮の奥深く、湿った空気と闇が絡み合う場所で、突然影が動いた。

黒い鱗に覆われた魔獣――その赤い瞳はまるで生きた炎のように光り、ゆっくりと僕たちを取り囲む。


レイナは瞬時に魔力を解放し、光の刃を繰り出した。

魔獣は鋭い爪で応戦するが、圧倒的な先輩の力に押されて退く。

僕は後ろに退きながら、その光景に息を呑んだ。


だが、魔獣は一匹だけではなかった。

複数の影が迷宮の奥から忍び寄る。

「やばい……手が回らない」

先輩の声にも、わずかに緊張が混じった。



偶然の光


僕は恐怖で硬直していたが、迷宮の壁に不思議な符号が刻まれていることに気づいた。

古代文字のように光るその紋章に、思わず杖を触れる。


すると、信じられないことが起きた。

魔力ゼロのはずの僕の体から、淡い光が溢れ出し、魔獣の動きを鈍らせたのだ。


「な……!? お前、今の……」

先輩の瞳が驚きで大きく開く。

僕自身も驚きで息が詰まった。


その一瞬の隙に、レイナは冷静さを取り戻し、魔獣を一気に制圧した。



戦いの後の沈黙


戦闘が終わり、迷宮の出口にたどり着くと、沈んだ夕陽が長い影を作っていた。

僕は手を震わせながら杖を握り直す。

「……僕、なんとかできたのかな」

小さく呟く声に、自分でも驚いた。


レイナは無言で僕の横に立ったまま、少しだけ頷く。

その横顔は、普段の傲慢さを残しつつも、確かに昨日より柔らかく、僕をひとりの戦力として認めているように見えた。


迷宮での試練は、ただの戦闘ではなかった。

弱さと勇気、孤独と信頼――

影と光が交錯する瞬間を、僕は確かに体験したのだ。



心の距離


その日の夜、宿舎に戻る途中。

レイナは無言で歩いていたが、時折僕を気にかける視線があった。

僕はまだ弱く、迷いも多い。

でも、昨日も今日も、少しずつ、先輩の世界に触れることができた――。


僕は心の中で決めた。

――弱くても、迷っても、少しずつ前に進もう。

そして、孤高の先輩の背中を、少しでも追いかけてみよう、と。


迷宮は終わった。

でも、この物語の本当の試練は、まだこれからだった。

迷宮での試練を経て、僕はまだ弱く、迷いながらも少しだけ成長しました。

偶然の光で先輩を助けた瞬間、二人の関係には微かな変化が生まれ、心の距離は確かに縮まったのです。


物語はまだ始まったばかり。

弱さと孤独、そして勇気と信頼――

これから先、影と光の交錯がどのように二人を試すのか、まだ誰も知らない。


この第二話を通して、読者の皆さんも、僕たちの心の歩みに少しだけ寄り添ってほしいと思います。

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