第十八話 「王都の国王謝罪」
ギルドマスターとの戦いを終え、ようやく訪れた静寂。
だが、その静けさは決して安らぎではなかった。
崩れ落ちた王都には、戦いの爪痕と、深い後悔だけが残る。
リュウたちは、真実を明らかにするため、そして未来へ進むため、王のもとへ向かう――
王都ルヴェリアの中心――白亜の王城〈セレスティア〉。
陽光を反射する塔の頂に、王家の紋章が高々と掲げられていた。だが、その美しさは、どこか虚ろだった。
リュウたちが城門をくぐった瞬間、衛兵たちの槍先が微かに震えた。
王都を救った英雄でありながら、同時に“ギルドマスターを討った者たち”として、彼らの存在は恐れと敬意の狭間にあった。
「……案内する。陛下は玉座の間で待たれている」
重々しい声に導かれ、リュウ、ひびき、エリカ、そしてバンは石畳の廊を進んだ。
壁には王国の歴史が描かれたタペストリーが並び、かつての栄光を語っていたが、その輝きもどこか色褪せて見える。
玉座の間――。
広間の奥、黄金の椅子に腰かけた国王レオン三世が、深く俯いていた。
老いが刻まれた顔に、王冠の影が落ちる。玉座の間に響くのは、鎧の擦れる音と、重苦しい沈黙だけだった。
「リュウ・アルディス殿……そして、同行者の皆も」
国王は立ち上がり、ゆっくりと玉座の階段を降りた。
その姿勢は、威厳よりも悔恨に満ちていた。
「我が王国は、あなた方に計り知れぬ苦難を背負わせた。
魔法料理学院を閉ざし、ギルドを暴走させ、挙げ句の果てに……あなた方の戦いによって、尊い命が失われた」
リュウは静かに首を振った。
「陛下……俺たちは、誰かを責めるために戦ったわけじゃありません。
ただ、もう二度と“食の力”が人を滅ぼすことのないようにしたかった。それだけです」
その言葉に、国王の肩が震えた。
「……あの男――ギルドマスターは、かつて私の友であった。
魔法料理の理想を共に掲げた者だ。
だが、欲と恐れが彼を狂わせ、私もまた、真実から目を背けていた……」
ひびきが一歩前に出る。
「だったら、これからどうするかです。
過去を悔やむより、“味”で未来をつくる。それが、リュウの信じた道です」
その言葉に、リュウはわずかに笑った。
王は深く息を吐き、ゆっくりと膝をつく。
――国王が、民の前で頭を下げた。
「リュウ・アルディス殿……ひびき殿、エリカ殿、バン殿。
王の名において、そなたたちに謝罪を捧げる。そして、感謝を。
王国の未来を、この手で取り戻すことを、ここに誓おう」
広間に響いたその声は、悲しみではなく、再生の始まりを告げていた。
リュウはそっと拳を握り、胸に当てた。
「……陛下、その言葉、しかと受け取りました。俺たちはまだ、道の途中ですから」
エリカが微笑み、ひびきが静かに頷いた。
バンは背を向け、呟くように言った。
「謝罪なんていらねえよ。……次は、ちゃんと笑える飯を作れりゃ、それでいい」
玉座の間に、一筋の光が差し込む。
灰に覆われた王都に、ようやく春の風が戻り始めていた――
この章は、戦いの終わりと、真の“再生”の始まりを描きました。
国王の謝罪は、権威の崩壊ではなく、責任を受け止める覚悟の象徴です。
リュウたちは、憎しみではなく「未来を信じる心」で答えました。
それこそが、彼らの物語の本質――“食”と“絆”が導く新しい世界の形です。




