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弱き僕と最強の先輩   作者: マーたん


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第十六話 「灰の翼 ― 終わらぬ誓い ―」

王都を覆う黒炎。

 その中心で立ちはだかるのは、かつて彼らが敬い、共に戦ったギルドマスター。

 人でありながら魔神の力を取り込み、理性を失った彼を止めるため、浅葱と先輩は最後の戦いに挑む。

 燃え尽きる覚悟で挑む“師弟の最終決戦”。

 この戦いの果てに残るのは、誓いか、それとも――灰だけか?

轟音が夜空を裂いた。

 黒い炎が空を覆い、王都全体が赤く染まっている。

 その中心――崩れかけたギルド跡地の上空で、巨大な影が羽ばたいた。


 「……翼?」


 それは、炎の翼だった。

 焦げた羽根が灰となって散り、光を呑み込みながら広がっていく。

 ギルドマスターの背中から生えた、禍々しい“灰の翼”。


 「見ろ……これが私の進化だ。

  人も魔も越え、私は“灰”として新たに生まれ変わる――」


 「そんなの、進化なんかじゃない!」


 浅葱は叫び、槍を構えた。

 風が巻き起こり、先輩がその隣に立つ。


 「マスター。俺たちは、あなたに教わったんです。

  仲間を信じること、弱き者を守ること……!

  今のあなたは、それを全部、裏切ってる!」


 「裏切り? 違う。私は“真実”を見たのだ」


 灰翼がひと振りされ、圧が襲う。

 瓦礫が弾け、街路が抉れる。

 その力はもはや神域に近かった。


 「避けろ!」


 先輩が浅葱を抱き寄せ、炎の塊を飛び越える。

 背中をかすめる熱風。

 視界の端で、ギルドの塔が音を立てて崩れ落ちた。


 「……これが、マスターの本気……」


 「だが、俺たちは負けねぇ」


 先輩の槍が光を帯びる。

 白い輝きが闇を裂き、天へと伸びた。


 「浅葱、合わせろ!」


 「はいっ!」


 二人の槍が交差した瞬間、光と風が融合した。

 蒼白い槍が、空を切り裂いて飛翔する。


 「光槍・双牙――!」


 光が灰翼を貫いた。

 だが、マスターは笑っていた。


 「いいだろう……では、私も“本気”を見せてやる」


 灰が舞い上がる。

 空が闇に染まり、無数の影が生まれた。

 それはかつてギルドに属していた冒険者たち――マスターの記憶から呼び出された幻影だった。


 「やめろ……そんなことに彼らを使うな!」


 「彼らは私の血肉。私と共に戦うのが本望だ!」


 浅葱の心が震えた。

 戦いたくなどない。

 けれど――目の前の敵は、止めなければならない。


 「……ごめん、みんな」


 涙をこらえながら、槍を突き出す。

 幻影が光に溶けて消えていくたび、胸が締めつけられた。


 そして、最後に残ったのは――マスターただ一人。


 「よくぞここまで来た。

  やはり、お前たちは“私の最高傑作”だ」


 「そんな言葉、今さら聞きたくない!」


 浅葱の叫びと共に、地面を蹴る。

 先輩がその背を押した。


 「行け、浅葱! お前の光で、終わらせろ!」


 灰色の風が吹く。

 浅葱の槍が光を帯び、マスターの胸を貫いた。


 沈黙。


 マスターの灰翼が崩れ、空に散っていく。

 その瞳には、一瞬だけ懐かしい笑みが宿った。


 「……見事だ。浅葱、そして……お前も、よくやった」


 灰が風に溶け、静かに消えていった。

 空を覆っていた黒炎も、次第に薄れ、青空が顔を出す。


 「……終わった、のか?」


 浅葱は膝をつき、深く息をついた。

 先輩が肩を叩く。


 「終わりじゃねぇ。ここからだ。

  マスターの教えも、あの灰の意味も……これから俺たちが生きて示すんだ」


 浅葱は頷き、空を見上げた。

 灰の粒が光の中で舞っていた。

 それはまるで、“翼を持たぬ者たちの再生”を象徴しているかのようだった。

 “師弟の絆”と“裏切り”が交錯した、王都決戦の終幕。

 ギルドマスターの最期は悲しくも静かで、浅葱たちの心に深い傷と誓いを残した。

 灰の翼は消えたが、その想いは風と共に生き続ける。


 次章、**第十七話「黎明の旅路 ― 約束の果て ―」**では、

 浅葱と先輩が再び新たな地へ旅立ち、灰の中に見つけた“再生”の意味を探す物語が描かれる。

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