第十四話「迷宮最深部 ― 火と影の決戦 ―」
王都の地下に眠る“古の迷宮”。
ギルドマスターの依頼を受けて挑むはずの探索は、いつしか陰謀と裏切りの渦に変わっていた。
仲間と共に挑む深淵の旅路――そこで待っていたのは、想像を超える“真実”だった。
影の迷宮の奥深く、赤い光が揺らめく通路を進む浅葱と先輩。今までの罠や魔物との戦いを経て、二人は互いの呼吸を合わせながら慎重に歩を進めていた。
「浅葱、ここから先は更に危険だ。気を抜くな」
先輩が槍を構え、周囲を見渡す。迷宮の奥からは、不穏な気配と同時に、低く唸るような声が響く。
「先輩……ただ事ではありません」
浅葱も槍を握り、緊張で全身の感覚が研ぎ澄まされる。すると、通路の向こう側から、同じくギルドの冒険者たちが現れた。彼らは先ほどの隊列とは別で、明らかに敵意を纏っている。
「お前たち……何をしている?」
先輩が問いかける。
「ギルドマスターの命令だ。影の迷宮の奥にある力を独占する。我々の行く手を阻め」
冒険者たちは槍や剣、魔法を構え、一気に襲いかかってきた。浅葱と先輩は即座に防御態勢を取る。
「浅葱、左に回れ!俺が突く!」
先輩の声に従い、浅葱は素早く移動し、槍を振るいながら敵の注意を引く。先輩は真っ直ぐ敵の中心を突き、力で圧倒する。二人の連携は戦いの最中に研ぎ澄まされ、周囲の敵も次第に押され始めた。
しかし、敵はただの冒険者ではなかった。魔法や罠を駆使し、浅葱たちを追い詰める。息を切らしながらも、浅葱は先輩の指示に従い続ける。
「今だ、浅葱!槍を伸ばせ!」
浅葱は全力で槍を振り、敵のリーダーを突き飛ばす。先輩も横合いから槍を差し込み、敵の防御を崩す。二人の力が合わさり、敵はついに撤退を余儀なくされた。
戦いの余韻が漂う中、先輩は浅葱に目を向けた。
「浅葱、よくやった。だが、真の試練はまだだ」
その言葉通り、迷宮の最深部に到達すると、そこにはギルドマスター・セラフィナの姿があった。普段の慈愛に満ちた表情はなく、瞳には野望と冷徹さが宿っている。
「ようこそ……浅葱、先輩。ここまで来るとは予想外だったわ」
先輩は眉をひそめ、槍を構える。
「セラフィナ様、一体何を企んでいるんですか?」
セラフィナは微笑む。
「この迷宮に眠る力を独占する。それがギルドの未来のため……いや、私のためよ」
力の源を求めて迷宮を支配しようとするマスターの姿に、浅葱は驚愕する。だが先輩は冷静に分析し、戦いの構えを取った。
「浅葱、行くぞ。最後まで俺たちの力を見せてやる」
浅葱も槍を握り直し、覚悟を決める。二人は光と影、信念と野望が交錯する迷宮最深部で、ギルドマスターとの決戦に挑むのだった。
ー
迷宮の最深部――赤黒く輝くマグマの海が広がっていた。
熱気が肌を焦がし、天井からは灼けた石が雨のように降り注ぐ。
「……ここが、最下層か」
先輩の声が響く。
その横顔は汗に濡れ、しかし一歩も退く気配はなかった。
「ギルドマスターの言ってた“古の核”って、まさか……」
俺は手にした槍を握りしめる。
空気が震え、赤い光の中から一人の男が現れた。
「――よく来たな、二人とも」
現れたのは、他ならぬギルドマスターだった。
その背後には黒い魔力の渦が渦巻き、まるで闇そのものが彼を喰らおうとしているようだった。
「ギルドマスター……どういうつもりだ」
「どうもこうもない。お前たちを試していたのだよ。王都を守るには、力が要る。選ばれし者の力がな」
彼の手のひらが光る。
次の瞬間、マグマの海から巨大な影が立ち上がった――紅蓮の鎧をまとった“火の魔神”。
「……やっぱり、罠だったか」
先輩は静かに槍を構えた。
その瞳には恐怖ではなく、決意があった。
「行くぞ。生きて帰るために、そして……信じた者のために」
俺も頷く。
二人の槍が交錯し、炎の獣へと突き進む。
火花が散り、熱風が吹き荒れる。
槍と炎がぶつかり合うたび、空間が軋む。
だが、魔神の力は圧倒的だった。
「くっ……こんな、化け物……!」
「下がるな!」
先輩の叫びと同時に、彼の槍が炎を切り裂いた。
まるで光の柱が天へ伸びるような一閃。
「――光槍・天破!」
閃光が魔神を貫き、爆音が迷宮を震わせた。
その瞬間、俺は見た。
ギルドマスターの口元が、わずかに歪んだのを。
「……まさか、これが狙いか」
マスターの野望は、“古の魔神”の力を自身に取り込むことだった。
魔神が消えたあと、その残滓の光が彼の体に吸い込まれていく。
「愚かだな……お前たちは器になりえたのに」
「器になんて、なるもんか!」
俺と先輩は同時に突撃した。
炎が爆ぜ、影が交錯し、迷宮全体が崩れ始める。
「これで……終わりだあああああっ!!!」
先輩の渾身の一撃がマスターの胸を貫いた。
赤黒い光が弾け、彼の体がゆっくりと崩れ落ちる。
「……よく、やったな」
彼の最期の言葉は、どこか安堵に満ちていた。
迷宮の天井が崩れ落ちる中、俺たちは互いの手を取り合い、出口へと駆け出した。
迷宮の奥で明かされた真実。
それは、ギルドマスターが己の正義のために選んだ“狂気”だった。
生き残った二人は、地上の光を見上げながら誓う。
――この手で、もう一度“光の誓い”を果たすと。




