第十二話「王都 ― ギルドマスターとの邂逅 ―」
第十一話で浅葱は逆先輩と共に冒険へ旅立ち、荒野と迷宮を越えた。
本話では、冒険の拠点となる王都アルディアでギルドマスター・セラフィナとの邂逅を描き、次なる試練の情報を得る場面が中心となる。
浅葱が経験を積み、鴉羽との約束を胸に、未知なる挑戦へ踏み出す瞬間を描く物語である。
荒野を越え、迷宮を抜けた浅葱と逆先輩は、ついに王都アルディアの門にたどり着いた。高くそびえる城壁、石造の塔、街に響く馬車の軋む音や市民の喧騒、屋台から漂う香ばしい匂い――すべてが冒険者にとって未知で刺激的な光景だった。
浅葱は小さく鴉羽の名を呼び、心の中で誓った。
「ここが、僕たちの次の舞台……必ず戻るんだ」
鴉羽の柔らかな微笑みが浮かぶ。
「先輩と離れるのは寂しいけど、成長して帰ってきてね」
その言葉を胸に、浅葱は逆先輩の後ろに続き、王都の門を潜った。
王都の中心部にある冒険者ギルドの広間は、活気に満ちていた。大理石の床に反射する光、壁一面の掲示板、中央の暖炉の炎――あらゆるものが、冒険者たちの熱気を映していた。
逆先輩は浅葱に耳打ちした。
「ここで情報を集め、次の目的地を定める。そして力を試す者との出会いもある」
浅葱は慎重に足を進め、槍を背に構えながら周囲を観察した。掲示板には
「近郊の森で魔物が増加」
「古代遺跡から謎の光が発生」
「影の盗賊団が王都周辺で活動」
といった報告が並ぶ。浅葱は息をのむ。王都はただの都市ではない――ここから先、冒険の試練はさらに厳しいものとなるのだ。
広間の奥に座するのは、ギルドマスターのセラフィナ・リュード。銀髪に深紅の瞳を持つ女性で、威厳と慈愛を兼ね備え、自然と冒険者たちが集まる存在だった。
逆先輩は浅葱を伴い、静かにマスターの前に進む。
「セラフィナ様、こちらの者は浅葱です。新たな冒険者でございます」
セラフィナはゆっくりと浅葱を見つめ、その瞳に力と覚悟を読み取る。
「ふむ……見るからに力はある。だが経験の不足は否めない。それでも、この王都に来るとは……覚悟があるのね」
浅葱は深く頭を下げた。
「はい、ギルドマスター。逆先輩の下で力を磨き、必ず役に立ちます」
セラフィナは微笑みながら告げた。
「よろしい。それならまず、この王都で起きている事件の調査を頼むわ。報酬だけでなく、経験と情報も得られるはず」
掲示板に掲げられた依頼は、王都の安全や平穏に直結するものばかりだった。近郊の森で異常な魔物が現れ、古代遺跡からは不可解な光が漏れ、影の盗賊団が王都周辺で活動している。
浅葱は背筋を伸ばし、心を引き締める。
「この王都、ただの都市ではない……」
逆先輩も表情を固くし、告げる。
「すべてが次の試練につながる。お前の槍の腕、そして光の誓いが試される時だ」
浅葱は鴉羽の言葉を思い出す。
「浅葱、無理はしないで……でも、あなたならできる」
その言葉が胸の奥で力となり、決意をさらに固める。
日が高く昇る前、浅葱と逆先輩は広間を後にした。
逆先輩は槍を構え、浅葱の背中に目を送る。
「覚えておけ、浅葱。冒険は始まったばかりだ。だが終われば、必ず鴉羽の元に帰るのだぞ」
浅葱は力強く頷いた。
「はい、逆先輩。終わったら、必ず」
二人の影は王都の街角に溶け込み、未知なる挑戦へと踏み出した。光と影、槍と心、誓いと冒険が交錯する旅路が、ここから本格的に始まるのだ。
王都での出会いは、浅葱にとって単なる情報収集の場ではなく、新たな成長の糧となった。
セラフィナ・リュードとの邂逅により、彼はこれから直面する試練の重要性を実感し、逆先輩から学んだ槍術と心の誓いを胸に冒険を進める。
次回、第十三話「影の迷宮 ― 試練の火と光 ―」では、王都での事件に二人が挑み、より過酷で光と影が交錯する試練が描かれる。




