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2.記憶の贈与
彼女は語った。
この惑星には、地球とは異なる“時間の性質”があった。
記録ではこうだ:
• 人の記憶は、この星では時間と記憶の流れが不規則で、過去・未来・他者の想い出が交差して存在している。
• 昨日起きたことが、10年前の出来事のように感じられる
• 見たことのない風景に、理由もなく懐かしさが湧いたりする
「私は…この星で、自分が誰なのか分からなくなっていきました。」
けれど、彼女は恐れなかった。
なぜならある日、“彼”が現れたから。
「彼は、地球人ではありませんでした。明らかに異なる構造の体、異なる言語。けれど彼は私に、記憶をくれたのです。」
レミニスは語る。「“彼”の星では、記憶は共有財産。個人のものではなく、共有しているものであり、想い出はそこにあるだけで意味があると。」
彼女は、彼からもらった記憶を再生し始めた。
空の深さ、宇宙の静寂、光の波長、かすかに震える草の匂い、別れの日の音楽…
どれも、リオにとってまるでその感情を知っていたかのように思わせる記憶だった。
なのに、胸の奥が締め付けられるように痛かった。