プロローグ
それは、突如として世界に現れた。
数十年前、何の前触れもなく、世界各地にダンジョンと呼ばれる謎の構造物が出現した。大小さまざまなダンジョンが都市や自然の中に現れ、人々はその異様な存在に恐れを抱いた。しかし、まもなくして、ダンジョン内部には莫大な財宝が眠っていることが発見され、世界は再び変わり始める。
ダンジョンには、危険なモンスターが巣食い、侵入者を容赦なく襲う。しかし、その先には莫大な富や、力を与える秘宝が存在する。すべてを手に入れることができるのは、命を賭けてダンジョンを攻略した者たち――すなわち、冒険者だけだ。
冒険者は、ダンジョンを探索し、モンスターを倒し、秘宝を手に入れる。そして、最終的に彼らはレベル10に達すると、運命を決定づける「ガチャ」を引き、固有の職業を手に入れることができる。強力な戦士から特殊な能力を持つ職業まで、その結果は運によるところが大きいが、いずれにせよガチャを引くことが冒険者の証であり、真の力を手に入れるための通過儀礼だった。
そんな中、カケルもまた、自らの意思で冒険者になることを決意していた。
カケルは普通の少年だった。特に目立つ能力があるわけではなく、強い体力や武術の才能もない。しかし、彼は現状に満足していなかった。冒険者になることで、自分の力を試したい、そしてダンジョンを攻略することで自分の価値を証明したいという強い欲求があった。
カケルが暮らす街でも、ダンジョンに挑むために多くの若者たちが冒険者を目指していた。彼の親友であるアキラも、カケルと同じく冒険者になりたいと夢見ていた。アキラは運動神経が良く、明るい性格で、何事にも前向きな姿勢を持っている。カケルはアキラと一緒に成長していくことを楽しみにしつつも、内心ではアキラとの間にある実力差を感じることもあった。
だが、そんな葛藤の中でも、カケルは強く思っていた。
「このままの自分で終わりたくない――自分の力で何かを掴み取りたい」
そんな願望が、カケルを冒険者への道へと駆り立てたのだ。
ついに、カケルとアキラは冒険者ギルドで手続きを終え、正式に冒険者として登録された。まだ二人ともレベル1であり、職業を持たない無職の状態だ。職業を得るためには、まずレベル10まで上げなければならない。そのためには、ダンジョンで経験を積み、モンスターを倒し、成長していく必要がある。
「カケル、準備はできたか?」
冒険者ギルドの前で、アキラが少し緊張した面持ちでカケルに声をかける。彼もまた、初めてのダンジョン挑戦に不安を隠せないでいた。
「正直、まだ不安だけど…これが冒険者への第一歩だろ?やるしかないよ」
カケルは拳を握りしめ、固い決意を胸に秘めた。