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07.イダとオリーヴ-Ⅲ-

 オトン王はその一部始終を聞き終えると、家臣のイダがスペイン人たちを果敢に撃退したと知り得て、なんと勇ましい男だったのかと大変喜んでイダを褒め称えた。

 彼は一年と待たずに実績を示し、そして領地を救った。多くの敵を殺し、傷つけ、そして沢山の捕虜を捕らえた。彼は領土と王国を守ったのだ、と。


 そして彼女に心奪われた王の娘は、もはや隠すことが出来なくなった気持ちを彼に告白した。



 ある日。オトン王は、ローマの貴族たちを集めて力強く宣言した。

「諸卿等よ、我が考えを聞いて欲しい。私には最も称讃すべき一人の娘がいる。私は生きているうちに彼女の結婚が見たい。そこで我が騎士イダに娘を、ローマを、そしてこの広大な王国を与えたい。何故なら私は彼のような男を他に知らないからだ」



 ローマの人々は誰もが喜んで賛成し、親しみを込めてイダを抱擁した。

 オトン王は言う。

「イダよ、よく聞くのだ。そなたは我が王国を救ってくれた。私はそれに報いたい」

「私にはとても美しい娘がいる。そなたは彼女を妻とし、そして伴侶として連れ添い、私が死んだ後は王国を引き継ぐのだ」


「感謝いたします、陛下。しかし神に誓って私には財産がありません。もし慎重な考慮なしに陛下の娘と結婚したのなら恥辱を被るでしょう。私は結婚など望んではおりません。私は貧しき者で、自らの働きによって報酬を得るため、日々務めを探している身の上なのですから」


「何だと」

「そなたは何を考えている。我が娘と王国を受け取らないというのか?」


「いいえ、神に誓って。陛下」と、イダは言う。

「もし彼女が望むのであれば、私は喜んで受け取るでしょう。彼女をここに呼んで下さい」


 オリーヴはすぐにやってきた。オトン王は彼女に問いかける。

「我が美しき娘よ、聞くように。今は私の望む通りに振舞うと約束することが必要なのだ。お前はいずれ王位を継ぐ者なのだから」

「もし私が死んだのなら、お前を守ってくれる者はいない。我が廷臣たちもみな、我が騎士イダとお前が結婚し、彼がこの王国の王となるべきだと考えている」


 娘は答える。

「今、私の願いは満たされました。正直に言って、この地上で生きてきた時間も無駄ではありませんでした。何故なら私の望んでいた夢が叶ったからです」

 そして彼女は父親の前に跪き、そして背筋を伸ばして声高に宣言する。

「お父様。どうか急いでご決断なさって下さい。日々、彼が去ってしまうような気がしてなりません」


 廷臣たちはみな、彼女がこのような宣言をしたことを喜んで祝賀した。

 それから国王は言った。

「前に進むように、イダ。そなたは我が娘に対し、誠実に約束せねばなるまい。私は娘をそなたに与える。我が王国と共に」

「今日、私はそなたの働きに、そして我が領土の自由を勝ち得たことに対して適切な返礼をしたつもりだ。敢えて言えば、そなたには十分な報酬が与えられているのだ」


 瞬間、イダは血も凍るような思いを抱いた。

 彼女はどうすればいいのか分からなくなっていた。彼女には、オリーヴと共に暮らすことについて許諾を与えてくれる家族がいなかったからだ。そして彼女は幾度も我らの主に呼びかけていた。

「三位一体であられる栄光なる神よ、結婚を余儀なくされたこの惨めな者を憐み下さい。ああ、フローレン、我が父よ。どれほどの過ちを犯したのですか。私と数多の貴族たちとの結婚を破棄して、その代わりに自らの妻に迎えようと考えていたなどと」

「私は焼き尽くされてしまった方が良い! 私はあなたの大罪による恥辱から逃れるために国を離れて以来、多くの危難に直面してきました。そして私はとうとうローマで我が身の安全を得たというのに、今再び私は裏切られてしまった。というのも王の娘が私に恋をしてしまったのです。私はどのようにして逃れればよいのか分からないのです」

「もし私が自らが女であると彼らに言ってしまえば、彼らは私を八つ裂きにするか、真実を私の父に伝えるはずです。父は私を見つけたらすぐに連れ戻すでしょう。私は海を越えて逃れなければなりません。どう考えても私は大変な苦境に陥ってしまっています。いずれにせよ、それは私が嘘をついてしまったからです。私はローマと名誉の両方を勝ち取り、王の娘と結婚するでしょう。全てを主の御手に委ねます」


 それから彼女は王に告げる。

「私は陛下の命に従います」


 彼らはすぐに聖ペテロ教会に向かった。イダはオリーヴと婚約の誓いを立て、誰もが歓び合った。若者たちは武装して馬上槍試合を繰り広げ、娘たちはダンスをしたりキャロルを歌った。そして大勢の騎士たちが花婿であるイダを拝見することを熱望していた。

 祝宴は丸一ヵ月続き、結婚式の日が迫って来た。



 その日、彼らは教会に赴いた。ローマの人々は美しい顔立ちをしたオリーヴに付き添っていた。前の方にいたイダが重々しくため息を吐く。けれど彼女は教会へと歩みを進め、ローマの人々は二人を結婚させた。

 イダはオリーヴを妻とし、そして伴侶として連れ添うことを受け入れ、国王はイダが男であると思い込んでいたために娘のオリーヴを彼女に与えた。

 この日の人々は、シルクの衣装や毛皮のコートなどといった金襴な織物を身に纏っていた。彼らは宮殿で祝宴を催し、詩人たちは彼らを楽しませた。竪琴とヴィエルvielle(※中世のヴァイオリン)が奏でられ、淑女と乙女たちはダンスをしたりキャロルを歌う。また若者たちは実に勇ましく振舞っていた。

 そして御馳走を食べて祝宴が終わると、彼らは自分たちの住まいへと帰っていった。

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