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【コミカライズ化!】虐げられの魔術師令嬢は、『氷狼宰相』様に溺愛される  作者: 水垣するめ
二章 『氷狼宰相』様と婚約した私は溺愛されます!

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コミック発売記念SS ソフィアは見た

※時系列はコミックス1巻あたりです!


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「ふわぁ、昨晩は夜ふかししちゃったな……」


 ソフィアは大きくあくびをする。

 昨晩は研究室から戻ってきたあと、急に頭に今ある問題を解決するためのアイデアが降りてきたので、夜通しそのアイデアを紙に書き留めていたせいで、結局眠る時間が遅くなってしまった。

 眠い頭で朝食を食べ、メイドに三つ編みを作ってもらっているときにソフィアは思いついた。


「あ、そうだ。レオ様のとこに行ってみよう」


 レオから研究室を訪ねてくることは数あれど、ソフィアがレオを訪ねるということはあまりない。

 お昼時に少しレオに会いに行こう。ソフィアはそう考えてお昼時を待つことにした。




 昼食の時間になると、ソフィアはレオがいつも働いている宰相の政務を行う部屋へと赴いた。

 部屋の扉をコンコン、とノックすると『どうぞ』とレオのものではない声が返ってきた。

 扉を開くとそこにいたのは文官だ。レオの机の近くに小さな机を用意し、レオの政務を手伝っているらしい。

 しかし肝心のレオは執務室の中にいなかった。

 ベッドで寝ているのかな? と思って視線を向けていてもレオはそこには寝ていなかった。


「どうかしましたか?」


 文官がソフィアに話しかけてくる。


「あ、あの、レオ様は……」


「宰相様ですか? 今頃は鍛錬場にいると思いますよ?」


「鍛錬場?」


 騎士の訓練でも見学しているのかな? とソフィアは思った。

 まさか宰相が訓練しているわけでもあるまい。

 寝不足のソフィアには、レオが何をしに行ってるのかを文官に聞く、という選択肢は浮かんでこなかった。


「あ、ありがとうございます。行ってみます」


 教えてくれた文官にお礼を述べて、レオがいるという鍛錬場へと向かう。


「──ふっ」


 声が聞こえてくる。

 レオの声だ。

 ソフィアは笑顔になり、レオの名前を呼びながら角を曲がる。


「レオさま──」


 目の前の光景を見てソフィアは絶句することになる。


「はにょっ!?」


 ソフィアの口から変な声が漏れた。

 その理由は目の前の光景にあった。

 なぜなら目の前には──半裸のレオがいたからだ。

 朝の鍛錬を終えたのだろう、汗ばむ身体をタオルで拭いて、もう片方には木剣が握られている。


「ソフィア、どうした」


 くるり、とレオが振り向く。

 彫刻のような、芸術品のような肉体だった。

 余計な贅肉のない胸板が、息をするのにあわせて上下に動く。

 鍛えられ引き締まった腹筋の上を一筋の汗が伝っていく。雫が光に反射してキラリと光った。

 腹に浮かび上がった筋肉の線に、ソフィアはなぞると硬そうだな、と場違いな感想を抱いてしまった。

 鍛錬を終えてすぐだからか、息が上がっているのもやけに艶めかしい。


「れれ、レオ様!? いったいどうしてそんな格好を……っ!?」


「鍛錬をしていた。頭の中を整理するには丁度いい」


 半裸を見られているにもかかわらず、レオは特に気にしたふうもなく普通に答える。

 熱を帯びた声にソフィアは背筋を撫でられるような感覚に襲われ、心拍が早くなるのを感じた。

 お、男の人って半裸を見られても恥ずかしくないの!? とソフィアは心の中で思った。


「〜っ」


 ソフィアの顔が真っ赤に染まっていくのがわかる。

 目の前の光景はソフィアにとっては目に毒だった。


「? どうした、ソフィア」


 レオはソフィアの様子が変わったことを感じ取り、心配そうに近づく。

 目にいれるだけでも毒な筋肉が視界いっぱいに迫り、なおかつレオの息遣いを感じるほど近づかれたソフィアは終いには目を回し始めてしまった。


「あ、あわわわわ……」


 そんなソフィアを見て、レオは気がついたように離れる。


「すまない。見苦しかったな」


 レオはそう言って、近くにあったシャツを拾い上げ着る。

 美しい肉体が白い布に覆い尽くされ、見えなくなってしまう。その光景にソフィアは少しだけ残念な気持ちになった。

 ひとまずレオを直視できるようになったソフィアは(まだボタンの隙間から胸板が見えて目に毒だが)、どうして半裸で


「あ、あの、なんで半裸なんですか?」


「ちょうど汗を拭っている途中だった。汗をかいたままだと不衛生だ」


 私が聞きたいのはそういうことじゃないんですけど!? とソフィアは声を上げそうになった。

 確かに鍛錬をしたら汗はかくけれども。こんな外で脱ぐ必要はあるのだろうか。

 どうやらソフィアは運悪くレオが裸になっているときに遭遇してしまった、ということらしい。


「で、でも、裸を見せるのは駄目だと思います……っ!」


「構わないだろう。婚約者なんだから」


「そういう問題じゃないと思います……っ!」


 消え入りそうな声でソフィアは抗議する。


「そんなものか?」


 首を傾げるレオにソフィアは何度も首を振る。

 一応ソフィアの忠告を受け入れることに決めたらしく、レオは真面目な顔で頷いた。


「分かった。これからはやめる」


 ほっ、と安堵するソフィア。

 するとふとさっきのレオが頭に浮かんできて……ソフィアは慌てて首を振った。


(や、やっぱりだめ!! 私には刺激が強すぎる……!)


 少しレオの裸を思い出すだけでも顔が熱くなってくる。

 だめだ、意識したら更に顔が熱くなってきた。

 もうレオの目を見れない。


「き、今日は帰ります!」


「? もう帰るのか」


「は、はい!」


「そんなにすぐに帰る必要は──」


「ご、ごきげんよう──!」


 レオを振り切り、ソフィアは逃げ出すようにその場から離れた。

 それ以上その場にいるのはソフィアにはできなかった。

 それからしばらくソフィアはレオと顔を合わせるたびに鍛錬のときの光景を思い出し、顔を真赤にしてうまく話せなくなってしまってのだった。

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