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三題噺もどき2

作者: 狐彪

三題噺もどき―にひゃくはち。



※「いつか」(リンク→https://ncode.syosetu.com/n6014hq/)の別視点的な…読まなくても読めます※

 


『今どこ』


 そう送ったSNSに、既読の文字はつかない。

 人混みの中を走る。

 どこ。どこ。どこにいるの。

 あの子は、あんなのを残して。どこに行ったの。

 両親にも頼らずに。

 友達にも頼らずに。

 なぜひとりで決着をつけようとしているの。

 まだ、まだ、まだなのに。

 まだ、はやい。

 諦めるには。

 辞めるには。

 失うには。

 まだ早い。


『ねぇ』

『今どこ』

『返事して』


 間髪入れずに、短い言葉を、送信する。

 けれど、どれにも既読はつかない。

 もう、電源すら切っているんだろうか。

 もう、聞きたくもないのだろうか。

 必死に走る私を、好奇な目で見る視線がある。

 あぁ、お前らのようなやつがいるから。あの子は、諦めたのだ。

 生きることを。

 生き急ぐことを。

 お前らのような、他人をなんとも思わない奴らがいるから。

 他人の事を、そんな目でしか見れないお前らが居るから。

 そんな、視線でぐさぐさと、あの子を刺したのだ。

 だから。


 そうだ。

 一か八か。


 人混みのなかにできた穴に抜け出て、立ち止まる。

 スマホの画面を開き直し、電話をかける。


 出てくれ。頼む。お願いだから。

 話をして欲しい。聞いて欲しい。聞かせて欲しい。


『 』


 でた―


「今どこ!?」

 つい叫んでしまう。

 周りの視線が、グサリと刺さる。

『 』

「もしもし!?」

「聞こえてる!?」

『 』

 周りの雑音のせいで、聞こえていのだろうか。

 あのこの声が、聞こえない。

 私の声が、届かない。

「ねぇ!今どこ!?」

 いくら叫ぼうと、視線が刺さろうと。

 私は、あの子の声が聴きたいのに。

 どうして、どうして届かない。

 電話に出てくれたのなら、話ぐらい―

「ね『うるさいよ』っ!!」

 かすれた、小さな声がぽつりと聞こえた。

 電話越しの声だからか、いくらかこもって聞こえるけれど。

 それでも、声が、聞こえる。

 それだけで、泣きそうだった。

『どこだと思う?』

 黙る私にそう問いかけてきた。

 どこ?どこにいる?

 わたしは、答えが欲しい。

 何も、あの子の声以外が聞こえない。

「何言ってるの?聞こえない、どこ!?」

 なぜだか、ザワザワとした。

 声が聞こえて、あの子にまだその気があるのだと思えたのに。

 まだ、呼び戻せると。思えたのに。

 なぜだか、もう、手遅れな。そんな気がして。ならない。

「っ―――」

 もっと静かなところにいこう。

 あの子が、どこにいるか分からない。

 なにも、聞こえない。

『 』

 その間、あの子は何も話さない。

 ただ無言で、どこかへ向かっている?


 ざぁ――


 人混みから離れ。

 喧騒を抜け。

 静かな道に出た。


 瞬間。

 電話口から、音がする。

 これは、水の、音?

 いや、波……


「ねぇ、もしかして……」


 血の気が引いた。

 もう、ダメなのか。

 戻せないのか。

「ちょ『うるさいったら』」

 私の制止を遮るように、あの子はつぶやく。

 ダメだ。ダメだ。

 やめて。

『静かに、聞いてて』


 ざぁ―――


 と、波の音がさらに大きくなる。

 それに交じって、ちゃぷり。と水を蹴る音がする。


『昔、2人できた時にさ、


 やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて


『また来ようって、言ったじゃん』


 ならば、ならば、ならば、ならばならばならばならば


『だからまた、いつか


「――っ!!!!!!!!」


 ぶつりと、電話が切れる。

 あぁ。

 あぁ。

 ああぁ。


 届かなかい。

 もう。

 誰の声も。

 私の声も。




 お題:届かない・電話越しの声・視線

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