戯れ言 凧と父
詩なのかエッセイなのか、ジャンルが決められませんでしたが、
小説とは別に不定期で短編を掲載して行こうと思います。
よろしくお願いします。
幼い頃、父と凧揚げをした。
「もっと遠くへ飛ばしたい」
目一杯伸ばした凧ひも。誰よりも高く、遠くへ飛ばしたい。
幼い自分は父にそう伝えた。
父は「じゃあ、そうしよう」と意気揚々と釣り竿を持ち出した。
釣り竿の先端をハサミで切ると、それを凧ひもの端と結び付けた。
遠くへ遠くへ、高く高く。凧はぐんぐん伸びて行く。
公園の敷地を越えて、住宅地まで伸びた凧。
誰よりも一番遠く、一番高く。
そして、しばらくするとそれは来た。
「すみません。ちょっと迷惑なんで、凧を公園から出さないようにお願いします。電話線とか危ないし、ちょっと通報来ちゃって」
警察官だった。お巡りさんに声をかけられたのは初めてだったので、子供ながらにワクワクした。
父は頭を何度も下げて、凧を結んだ糸をリールで巻き上げる。
少し寂しい気持ちはあったが、危ないんじゃないかなとは思っていた。
それでも、誰よりも高く遠く揚げられた凧は自分の中で飛んでいる。
きっと今も亡き父と共に幼い頃の思い出の空を飛んでいる。