67_美少女の思い出の品物
箱の中身は、記念メダルにチェーンを付けたコインペンダントだった
観光地とかで自販機で売られているタイプの。
それほどの価値がある訳でもない。
コインにはローマ字で『SAKURA SOTOZONO』と書かれていた。
「これ・・・さくらの・・・?」
「これは・・・昔・・・私がセリカくんにあげた物です」
「それは、どういう・・・」
さくらを落ち着かせてから、みんなでリビングに戻った。
再び飲み物を準備してくれたので、一旦クールダウンできた。
そのあと、さくらが静かに話し始めた。
「これは、昔、私がセリカくんにあげたもので間違いないです」
「「「・・・」」」
3人は、さくらの話の続きを期待した。
「昔、家族で東京に行った時に、東京タワーで記念メダルの自販機があったんです。父にねだってこれを買ってもらいました。」
メダルネックレスのコイン部分の角度を変えて、その光の変化を楽しむようにしながら続けた。
「別売りのチエーンも付けてくれて・・・金色だった事から、セリカくんがすごく気に入ってて、何度もほしい、ほしいと・・・」
少し嬉しそうに、そして、懐かしそうに言った。
「いや、待て。そんな話は知らないぞ!?」
そんな話は記憶にない。
さくらの嘘とは思えないが・・・
「もう、ずっと昔の話ですから・・・」
さくらの表情は暗い。
少し悲しそうにも見えた。
そう言えば、さくらは身寄りがなくなったと言っていた。
「因みに、今お父さんは・・・?」
俺が聞くと、さくらは目をつぶって静かに答えた。
「私が小さいときに両親共亡くなりました。それからは、祖母とふたり暮らしで・・・」
「「「・・・」」」
「福岡では、裏の家に住んでいたセリカくんが遊びに来てくれるのが楽しくて・・・」
思い出を語りだすさくら。
しかし、俺には全く記憶がない。
おぼろげながら覚えてるとかそんなレベルじゃない
全く記憶にないのだ!
小さい時の事と思っていたが、10歳くらいなら何か覚えててもいいはず。
そもそも、『福岡の家』の事も全く覚えていないのだ。
「さくら、他に何か知らないか!?」
「・・・私も、セリカくんと離れていた6年間のことは分かりませんし・・・」
さくららしくない歯切れの悪さ。
本当は何か知っているのかもしれない。
話したくないのか?
話せないのか?
俺は何だか急に不安になってきた。
さくらの両親が亡くなってて、おばあさんが亡くなったとなると、電話して聞けるような相手がいない。
そうなると、俺の方・・・父さんなら何か知ってるかも・・・
「父さんなら何か知っているかも!?」
さくらをちらりと見るが、特に反応なし。
俺が父さんに昔のことを聞くのは問題ないらしい。
それならばと、すぐにスマホから父さんにメールを送るが返事はない。
この時間は仕事中だろうか?
アメリカとは時差もあるはずなので、向こうは夜かもしれない。
「なんか、すげぇことになってきたな」
何が『すげぇこと』何かわからないが、本田が興味を持っている様だった。
次の日には、父さんからメールが返ってきていて、週末の夕方にビデオ通話することになった。
父さんからの指示は、さくらと照葉も呼んでほしいとのことだった。
本田は、『なんかプライベートな話になりそうだから、遠慮しとくわ。あとで結果だけ教えてくれ』とのこと。
バカだけど、いいやつなんだよな、本田。
さくらは特に表情は変えず、照葉は何故か気合を入れている様子で、土曜日俺の家に集まることが決まった。
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