64_美少女のチャームポイント
デートでチョーカーをプレゼントした日から、さくらは毎日チョーカーを身に付けるようになった。
さすがに寝る時は危ないので、外そうと提案すると、ものすごく抵抗していた。
結局、折衷案(?)として、寝る時には俺が外す。
そのあと、必ずキスをする。
朝起きたら、俺がチョーカーをさくらに付ける。
これで承諾した。
キス関係あったのか!?
学校では、教室に入るや否や、六連星さんが反応した。
「おはよー、さくらちゃん!あ!チョーカー可愛い!」
朝から六連星さんがさくらに抱き着いていた。
「ありがとうございます。すごく気に入ってるんです」
「あ、もしかして、鳥屋部くんのプレゼントー?」
「はい・・・」
頬を赤らめながら俯くさくら。
「きゃー!さくらちゃん可愛い―!赤くなった―!」
なんだこのイチャコラ。
なんか鼻血が出そう・・・
そこには、誰も近づけない『女王様』の姿はなく、美少女2人がいちゃついているだけの微笑ましい光景があるだけだった。
そして、この時、照葉は、机に両肘をついて、ぶるぶる震えていたことに、俺は気づけないでいた。
■昼休み
少し変わったことがある。
昼食の時に、豊田と六連星さんが一緒にご飯を食べるようになった。
俺と、さくらと、照葉も、本田もいる。
ただ、鈴木と松田は部活のやつらと食堂で食べることになった。
鈴木と松田は、豊田と六連星さんがいると、口数が少なくなった。
いや、全然喋れていなかった。
カーストは下の者とは話せても、上の者には話せないのだ。
もちろん、そんなルールはない。
ただ、現実的にそういう空気はある。
居心地が悪いのかもしれない。
まあ、いきなり100点を目指す必要はない。
追々合流するようになればそれでいい。
豊田と六連星さんは依然、カースト・トップであり、そこに、俺とさくらと、照葉、本田が入ったに過ぎないのかもしれない。
それでも、豊田と六連星さんの世界は広がり、俺とさくらの世界も広がった。
二人だけでも会話は成立するが、広がりは限られてしまうのだ。
「さくらちゃんのお弁当、超カワイイね♪」
「ありがとうございます」
「もしかして~、自分で作ってるの~?」
両手の人差し指を交互に前後ろに指さししながら聞いた。
「はい、そうです。朱織さんのもご自分で?」
「んーん、私は料理へたくそだから、ママが作ってるれるの」
「料理上手なお母様でいいですね」
「えへへ・・・あ、照葉ちゃんのは?」
「わたっ!私も!じ、自分っでっ!」
上手く答えられない照葉。
『カーストの呪い』のせいかもしれない。
これも、追々慣れて行けばいいだけだ。
「そうなんだぁ。あ、玉子焼き超おいしそう♪」
『元女王様』は、コツさえつかめば、話をうまく回すのにも長けていた。
さすが、カースト上位なだけはあるということか。
「ねえ、晄士、さくらちゃんのチョーカー、超カワイイね!」
「そうだね」
「これからずっと着けるの?」
「そうですね。気に入ってますし」
「じゃあ、さくらちゃんのチャームポイントだね!」
「それは嬉しいです」
「晄士も私に何かアクセをプレゼントしたくなった?」
「ああ、なったよ。休みの日にでも見に行ってみるか?」
「きゃー晄士大好き♪」
「鳥谷部くん、いいお店があったら教えてくれよ」
「ああ、俺はそういうの全然ダメだから、さくらが・・・」
「あ、このページで近所の特集やってましたよ?」
さくらがスマホを取り出して、参考にしたであろうサイトを画面に表示させてみせる。
「あー!さくらちゃんスマホ持ってる!」
「はい、先日から」
「きゃー!!アカウント交換しよ!アカウント!」
『女三人寄れば姦しい』と言うが、弁当を食べるだけで大騒ぎだ。
増えないかもしれないと少し心配だった、さくらのスマホにも登録アカウントが5件になった。
六連星さんを始めとして、照葉、豊田、本田、そして、一番最初に登録した俺の5件。
さくらは、増えたアカウントを不思議そうに見ていたが、少し嬉しそうだった。
『表モード』の作り笑顔じゃなくて、自然な笑顔。
俺が好きな笑顔だった。