60_中間試験成績1位
中間試験があった。
学生に課せられた十字架・・・定期テストだ。
1年の時学年1位はずっと豊田晄士だった。
2位に大差をつけてのぶっちぎりの1位。
それに『一番コレクター』の六連星朱織が目を付けて付き合い始めたというのが、一般の見方だった。
みんな廊下の掲示板に集まっていた。
上位50名は名前と点数が貼り出される。
2年最初の中間試験で豊田晄士の伝説が崩された。
現代文、古典、世界史B、日本史B、英語Ⅱ、ＯＣ、理科Ａ、理科Ｂ、情報の9科目。
900点満点のテストで順位はこうだった。
1位：堀園さくら（895点）
2位：豊田晄士（890点）
3位：二階堂輝幸（765点）
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言うならば、豊田の成績は変わっていない。
むしろ、3位との点差は以前より開いていた。
その上に君臨したのが、堀園さくらだった。
ほとんどが100点で、1つ2つケアレスミスがあった程度。
ほぼほぼ満点と言っても過言ではない点数だった。
「すごいな！さくら！」
「セリカくん、ありがとうございます」
俺が褒めると少しほほえみながら答えた。
帰ったら頭を撫でてやらねばと考えていた。
「堀園さんすごい・・・」
横を見るとなぜか、照葉がショックを受けていた。
明らかに表情が暗い。
漫画で言うなら目が渦巻のようにぐるぐるになっている。
俺も照葉もそんなに成績は良くないので、50位以内にはなれず、貼り出されることはなかった。
なぜ、今回に限ってこんなにショックを受けているのか、俺には分からなかった。
■
教室では、授業の合間の休憩時間に、今回の結果で、『一番コレクター』の六連星朱織と豊田がどうなるのかと言うことが話題となっていた。
あからさまに、ひそひそと話されていて、ちらちらと豊田、六連星に視線を送るやつもいた。
（ガタン）
六連星が急に立ち上がり、ツカツカとこちらに向かってきた。
バッと長いツインテールの片方を翻すと、さくらのすぐ横に立った。
さくらも何か感じたのだろう。
六連星が近づいてきたときに、反射的に立ち上がった。
一気に緊張が高まり、結果的に、2人とも立ち上がってにらみ合う形になっている。
教室は先ほどの騒がしさが嘘のように静まり返った。
クラスの女王様とニューカマーの対峙。
言うならば2人とも目を見張るような美少女。
誰もが、ぶつからない訳がないと感じていた。
緊張が走らない訳がなかった。
「おい、さくら・・・」
俺も、声をかけたが、その声はさくらに届いていないようだった。
「堀園さん・・・」
照葉は座ったまま口に手を当てて、ことの顛末を見守ることしかできなかった。
豊田も心配になったのか、こちらに向かって歩き始めた。
「堀園さん・・・」
そんな沈黙を破ったのは、女王、六連星だった。
「堀園さん、1位おめでとう！」
何故かちょっと半べそで六連星がさくらの両手を握る。
「あ、あり・・・がとう、ございます」
拍子抜けしたみたいに、お礼を言うさくら。
豊田が俺達の席に着く頃には、さくらと六連星は抱き合って喜んでいた。
クラスの全員が、何が起こっているのか理解できずに、見守っていた。
「堀園さん、1位おめでとう」
豊田もさくらにお祝いを言った。
その後、六連星の頭の上に手をポンと置き続けて言った。
「朱織は堀園さんともっと仲良くなりたいって思っていて、なかなか切欠がなかったんだ。よかったら、これからもっと仲良くしてもらえないかな？」
豊田がさわやかに言った。
さすがイケメン。
「（えぐえぐ・・・）堀園さん・・・お願い・・・」
なぜか六連星はもう、ちょっと泣いてる。
「もちろん、私でよろしければ・・・」
さくらはちょっと呆気に取られている。
「これからは『さくらちゃん』って呼んでもいい？」
六連星は豊田の後ろに隠れて、顔だけ出して、恐る恐る聞いた。
「いいですよ。じゃあ、私も朱織さんって呼んだ方が良いかしら？」
「お願いします・・・」
六連星が手を出して、さくらと握手していた。
ここで新しい交友関係が誕生した。
そして、誰もが女王様伝説の崩壊を感じた。
クラスのメンバーは、『折れた！女王が折れた！堀園さんが新女王か！？』と騒ぎになったが、それはまた別の話。
次回は18時更新です。
