58_美少女対決
六連星朱織は悩んでいた。
いつの間にか出来上がった『女王様キャラ』を自ら破れなくなってしまっていたのだ。
周囲の期待を受け止めるサービス精神旺盛なところがあったかもしれない。
そのため、周囲に『女王様キャラ』と判断されてしまったら、空気を読んで女王様を演じてきた。
そのため、友達がいないのだ。
クラスのカースト最上位の彼女は、一人孤立していた。
独断で最上位に押し上げられてしまったのだ。
通常、カーストの上位から下位には話しかける。
だが、逆はない。
カーストとはそういうものだから。
つまり、六連星から話しかけない限り、誰も六連星には話しかけられない状態なのだ。
しかし、六連星朱織の場合、『女王様キャラ』なので、むやみに他人に話しかけたりはしない。
そのため、女子の誰とも話せずにいて、友達もいないのだった。
そのことにいち早く気づき、クラスイチ空気を読む、豊田晄士が声をかけた。
スポンジが水を吸うように、豊田の優しさは六連星に染み込んでいった。
六連星も優れた容姿とピュアな心があったため、気付けば2人は付き合うようになっていた。
そして、六連星には女友達がいない分、豊田と一緒の時間は必然的に多くなり、更に周囲の女子を遠ざけてしまった。
その、六連星が今、昼休みのランチ時に堀園さくらに声をかけようとしていた。
六連星の作戦はこうだ。
既に仲良くなっている(?)堀園の背後に回って、可愛く抱き着き、『一緒にお弁当食べよう♪』と言って、あの一団の仲間入りをする。
ついでに、晄士も引き入れて、堀園、鳥屋部、小鳥遊、本田、鈴木、六連星、豊田の7人のグループを作るのだ。
その後は、楽しい学校生活が続く。
こんな作戦だった。
前回は、堀園さくらが一人になる瞬間を虎視眈々と狙っていて、やっとできたちょっとの時間にファーストコンタクトを取っていた。
2人ともちょっとアレな性格なので、まだお互いを受け入れ兼ねていた。
今回は、昼休み。
しかも、みんながいるところでのコンタクト。
六連星としては、もう一段階ハードルが高いことに挑戦していているつもりのだ。
昼休みになり、堀園たちが机を付け始めた。
昼食を食べる準備だ。
「堀園さん♪一緒に・・・」
六連星が堀園の背後に回って抱き着こうとした瞬間だった。
堀園さくらが驚いて頭を後ろに仰け反らせた。
「ごふっ!」
「え!?」
自分の鼻を抑える六連星朱織。
不幸にも堀園さくらの後頭部が、六連星朱織の鼻にクリティカルヒットしたのだ。
「え!?六連星さん!?」
「(鼻血出ちゃうかも!?みんなに見られたら恥ずかしいっ!)」
「え!?なんで?大丈夫ですか!?ちょっと見せて!」
予想外のことで驚きつつも心配する堀園さくら。
「い、いやっ(鼻血出たら恥ずかしいから!)」
逃げる六連星朱織。
「見せてください!」
「んんんん!(いいから!)」
なんだなんだと周囲の人間が集まってきてちょっとした騒ぎになった。
■保健室
一部始終を見守っていた豊田晄士が心配して六連星朱織を保健室に連れてきていた。
女王様の彼氏である豊田晄士が連れて行くと言えば誰も抗うことはできない。
その場はそれで収まった。
「朱織だいじょうぶか?」
「うん。朱織がんばったの。褒めて」
結局鼻血は出たが、それほどひどいことにはならなかった。
今は片鼻にねじったティッシュが詰められている。
美少女にあるまじき状態だ。
クラスのみんなにも見せられないと六連星は考えていた。
「朱織頑張ったな」
そう言いながら豊田晄士が六連星朱織の頭を撫でる。
「堀園さん、今日も怖かった・・・でも、素敵だった・・・」
「そっか・・・」
どこでそう思ったのかは、彼女にしか分からない。
まあ、彼女が良ければいいのだろう・・・
「大丈夫。また頑張る。晄士がいれば大丈夫」
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