54_幼馴染ビッグウェーブに乗る
来た!来たのよ!
私、小鳥遊照葉に千載一遇のチャンスが来た!
何もしなくていきなりセリカくんの彼女の座と隣の席をゲットしてしまった!
私はこのビッグウェーブに乗る!
乗っちゃいます!
突然、本田くんがセリカくんに、私を賞品にして『青春バスケ』を挑んだ。
バスケ部の本田くんが負けて、賞品である私はセリカくんのものになった。
なったの!
クラスのみんなもセリカくんの隣の席を準備してくれた。
私は『賞品ちゃん』とか変なあだ名がついたけど、それを受け入れるだけでセリカくんの彼女の座がゲットできてしまうのだ!
神様はいる!
絶対いる!
あんなに悩んだ私にチャンスをくれた!
これから毎日、セリカくんの隣の席で、私はセリカくんの彼女として生きていく!
「照葉ちゃん、なんか気合入ってるけど、変なこと考えてない?」
放課後に、一緒に帰っているとき千早ちゃんから指摘された。
「べ、べ、べつにぃ」
「その割に、目が明後日の方向を見ているけど・・・」
千早ちゃんが前に回り込んで見つめてきた。
この目に見つめられると嘘がつけない。
「いや、最近、ちょっと、いいことがあったから・・・嬉しくて・・・」
「それってセリカくんのことでしょ?」
「え?えーと。えー・・・」
「何か変な噂がうちのクラスまで聞こえてきたけど・・・」
「へ、へぇー。どんな噂?」
「男子2人が女子1人を賭けて勝負したって」
「ゔっ・・・」
「でも、勝った男子には彼女がいるらしくて、賞品の女の子は宙ぶらりんで、可愛そうだから、みんなでその男子の席の隣にしたって」
「みんな私のこと、そんな風に思ってたの!?」
「・・・」
千早ちゃんが、心底心配した目で私を見ている・・・
違うのよ。
真実は、今、私はビッグウェーブに・・・
「なんでセリカくんが勝負したのかは知らないけど、巻き込まれただけじゃないのぉ?」
千早ちゃんが続けた。
「せっかくの賞品にリボンまで付いてるのに、要らないとか、あいつも失礼しちゃうよね!」
千早ちゃんが怒ってくれている。
「違うの。違うのよ?セリカくんは・・・」
「(ぼそっ)私なら、喜んでもらうのに・・・」
「え?」
「え?私なんか言った?」
千早ちゃんが笑顔で訊いた。
「んーん、聞き違いならいいの」
「それでさぁ、幼馴染を一人置いてさぁ・・・嫁と一緒に先に帰っちゃって・・・」
「ゔ・・・」
「少しでも照葉ちゃんに気があったら、そんなことしないよねぇ・・・」
「ゔ、ゔ・・・」
「私はずっと一緒だからね?」
「うん・・・ありがとう、千早ちゃん・・・いてくれてよかったよぉ・・」
「「・・・」」
「じゃあ、さ。照葉ちゃんが彼女になったら、どんなことしたいのか聞かせてよ」
「う、うん、まずはね、手をつないで一緒に学校に行くの♪」
「うん、良いね!・・・でも、セリカくん、嫁と一緒に登校してたよね」
「・・・うん(ぐすん)」
「「・・・」」
「他は?」
「お弁当を作ってあげて、一緒にお昼を食べるの♪」
「嫁が作ってたのよね?」
「・・・うん(ぐす)」
「「・・・」」
「他は?」
「手をつないで、一緒に帰るの♪」
「置いて行かれたんだよね?」
「・・・うん(ううっ)」
「「・・・」」
千早ちゃんも気の毒な子を見る目だよ・・・
「あー!私はどうしたらいいのー!?」
「とりあえず、練習で私とそれやっとこうか。ほら、手出して」
「うん、千早ちゃん優しいね」
「うちら友達でしょ」
この後、千早ちゃんと手をつないで帰ったのだけれど、千早ちゃんがあまりしゃべらなくなった。
私、なんか変なこと言ったかな・・・?
この子らどうなっちゃうのか・・・
気になったら「★★★★★」をお願いします!
次回更新は本日19時です。