37_美少女の嫉妬
栞さんを寝かせたら、もう夕方だった。
あの調子では、しばらく起きないと思われるので、俺はリビングのソファに座ってテレビを見ていた。
気になるのは、さくらが横で腕に抱きついてくることだ。
いやでも意識してしまう。
さくらとしては、何気なくしているのかもしれないが、こちらとしては絶対誤解してしまう。
好きになっちゃうから、やめてくれ。
俺くらいになると、目が合っただけで俺のことを好きだと誤解しちゃうからね?
徐にさくらが上目づかいで言った。
「セリカくん、お買い物行かないと夕ご飯の材料がほとんどありません」
「え?そうなの?」
「栞さんのおつまみで、ほとんど出してしまいました」
元々、そんなに食材は買い込む方じゃない。
むしろ、よくツマミを作って出せたと思うべきだ。
「しょうがない。買い物に行くか」
「はい」
久々の笑顔だった。
固まった笑顔じゃなく、自然な笑顔。
さくらは、やっぱり笑顔が似合う。
可愛さが最大限に引き出される感じ。
買い物には、いつも通り手をつないで行った。
何故か、この日のさくらは俺にべったりだった。
ごはんは普通通り。
今日のメニューはハンバーグ。
あの、さくらの美味しいハンバーグだ。
なんか、先日よりも更にうまい。
また何かアレンジを追加したのかもしれないな。
他にもメニューがあるからと、しばらく作らないと言っていたのに。
俺としては嬉しい限りだけど。
食事中もさくらの甘えは止まらない。
「あーんしますか?」
「しなくていい」
「じゃあ、あーんしてくれますか?」
「せんわ」
どうも揶揄われているのではないだろうか。
お風呂は、一緒に入ると言い出して大変だった。
そんなことができる訳もない。
つい、いつものチョップを美少女様に喰らわしてしまった。
そしたら、代案として、背中を流すと言い出したので、丁重にお断り差し上げた。
俺の愚息が元気に挨拶する未来しか見えなかった。
思春期の男の子は恥ずかしがり屋なんだよ。
栞さんは、寝たまま起きないので、そのまま寝かせることとなり、俺達はいつもの様に寝ようとした。
いつもベッドに『お邪魔しまーす』と言ってから入ってきて、すぐに寝てしまうさくらが、今日はベッドに入るや俺の首に抱き着いてきた。
「一体どうしたんだよ。今日は一日中、べったりだよ」
さくらは、しゅんとして暗い顔をしていた。
「どうしたの?言ってみて」
「うわーん、だってー!セリカくんが栞さんに取られちゃうー!」
半べそかいて訳の分からいことを言う。
「そんなわけないだろ。栞さんの従姉ジョークだよ」
「だってー!目が、目が本気だったー!」
「だから、従姉だって・・・」
「栞さん言ってた。従姉弟同士は結婚できるって・・・はっ、何とかして今からでも法律を変えないと!」
なんかまた、ぶち抜けたことを言い始めた。
さくらの怖いところは、まなじポテンシャルが高いので、本当に実現しそうなところだ。
「セリカくんが、大人の色香にまよっちゃうー!青い果実を・・・たわわな~」
『裏モード』のさくらは、残念美少女だ。
本当に残念なところが多いが、俺はそっちの方がかえって好きかも。
「キス!キスしましょう!」
いやいやいやいや!
急に思いついたように変なことを言い始める。
そんな気軽に!
「足をなめましょうか、足!」
喜ぶのはお前だ。
別に俺は足を舐められても嬉しくも何ともない。
「そうだ!処女をあげます!もらってください!そうしましょう!」
やめろ、やめろ!
そんな大事なものを、アメちゃん感覚であげようとするんじゃない!
(スパーン)「あふん♪」
「落ち着け。お前が何とかして手に入れようとしているもんは、そんな他人と取り合うような大層なもんじゃないよ」
「だって・・・」
はぁ、こいつのどこが完璧超人なのか・・・
半べそどころか、ちょっと泣いてるし。
俺なんかのどこがそんなにいいのか。
それとも、揶揄われているのか・・・
この日はさくらに抱き着かれたまま、頭をなでながら寝た。
今日も3回更新頑張ります!
次回は12時更新です。
よろしくお願いします。