携帯は監視カメラではありません
8月ってかなり暑い。連日の猛暑にやられ、外に出る気にもなれなかった。最近ようやく慣れてきたバイトは16時からで、それまでどう時間を潰すかがここのところの問題だ。
小さな扇風機が音を立てて回るのをぼーっと眺める。...あつい。だるい。なにもしてなくてもじっとりと汗が滲んでくる。
...あー。
ズリズリと這うように台所に行って水を飲んで、またズリズリと体を引きずって布団に倒れこんだ。
...あっつーい。
「おつかれさまです」
「おつかれさま。あ、ももちゃん」
エプロンを解いて片付ける。今日もほどよく人が来た。ミチコさんとおしゃべりにくる人もいて、その傍らでせっせと注文品を詰めていくのだ。1グラムの誤差なく一発で入れられるとかなりうれしい。
「気をつけてね。最近治安が悪いって佐々木さんも仰ってたし....ちゃんと鍵閉めてね」
「はい。ありがとうございます」
そういえばそんなこと言ってたなあ。高校生くらいのヤンチャな男子が集まって夜な夜なバイクを走らせたり、別の集団と喧嘩したりしてるらしい。
...そういえば、ナギ何してるかね。
もう一月も顔を合わせていないんだなあ、と夜道をてくてく歩きながら思う。前から歩いてきた、携帯の淡い光に照らされた中学生くらいの女の子とすれ違う。あー、携帯か。学校で毎日顔を合わせていたから連絡先を聞くっていう考えにならなかった。そもそも携帯持ってないわ。どこに売ってんだろ?あると便利なのかね?あんな小さな機械で離れた場所にいる人と繋がれるのはすごいと思う。でも、なんか怖くない?ボタン一つで誰とでも繋がる。どこにいても。そんなの、まるでだれかにじっと監視されてるみたいだ。
自分の思考にぞっとした。
監視、なんて。