金欠とは言わせない
梅雨が明けて、テストも終わり、夏休みにはいった。わたしの財布から税込178円が消えていったことを報告しよう。点数はだいぶ上がったんだけどねぇ。おかしいな。ナギ、授業サボったりしてるはずなのにね。
やつはそこそこヤンチャな運動神経のいい秀才らしい。文武両道系不良...?字面が迷子。
今わたしの手元にはバイト募集要項と書かれたて紙があったりする。もしよかったら、と手渡されたのだ。
...いや別にね、お金が足りないわけじゃないんだけどねたしかに最近ちょっとやばいなーとか思わなくもないけども。
おうちの近所にある、かなりの頻度でお世話になっている個人経営のお惣菜屋さん。夫婦二人で切り盛りしていて、良心的な値段と美味しい味で人気のお店だ。顔も覚えてくれて、買いに行くと「ももちゃん」と笑いかけてくれるのだ。
この街に来て、ふらっとご飯の匂いにつられたのが最初だったっけな。おいしかったんだよなあこれが。あ、おなかすいてたんだ、と。温かいごはんを噛み締めながら思ったのだ。
意を決してよろしくお願いしますと頭を下げれば、ミチコさんが手を叩いて歓迎してくれた。奥からひょっこりとタケルさんも顔を出し、よろしく、と穏やかに微笑んだ。
わたしの世界が広がった。