くるみとナギとボウリング
「くるみ」
わたしを呼ぶ声がして振り向く。いつもの声。まだ帰る準備が終わっていないわたしに、おせーわとナギが言った。うるせーこちとら6限体育だったんだよ!
「今日もやんの?なになに?」
わたしのとなりの席の子が興味津々に聞いてくる。いつの間にか風物詩的な...名物的な...なにかになっているらしいわたしとナギの遊び。まあね、割とギャラリーいるもんね毎回。
「今日はボウリング!いつものとこ!」
「おっけー。みんなに言っとくー!」
さっさとさきに行くナギを慌てて追いかける。まだ先生が廊下にいるから走れない。早歩きで追いつこうにも、ちらりと振り返ったナギが無駄に長い足を駆使してスピードをあげるもんだから、最終的には競歩のようだった。つかれた。
わたし、百瀬胡桃と山内渚は事あるごとに競争し、張り合っている。はじまりはわたしが転入したその次の日に購買の超絶人気のメロンパンを誰よりも早く手に入れたことだ。ナギは二番手。あんたおれと遊ばねぇ?と、楽しそうに瞳を輝かせたナギを、わたしは忘れることはできない。
その日は僅差で負けた。通算11勝10敗3引き分けだ。ニマニマと景品のコンビニスイーツを食べるナギに、わたしはカバンをぶーんぶーんと振り回しながら次は勝つ!と誓った。そして税込216円のスイーツを奢ってもらうのだ。