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白、しろ、シロ
気がつくと自分の呼吸音だけが響いていた。あれ。さっきまで風が強かったのにな、いつの間にこんな穏やかになっていたんだろう。
ずいぶんと歩いたはずだ。
どこまでいけるんだろう。どこへ行くんだろう。どこから、来たんだっけ。
白く濁った息を吐き出しても頭の中は依然としてぼんやりしていた。
「...?」
ふと、耳元を音が掠めていった。ここで聞こえるはずのない音。あれは、たしか、....そう、波の音だ。
わたしは一人で歩いている。波打ち際。近くで、遠くで引いては寄せる波。砕ける水。
ひとりで?だれか、居たはずだ...だれだっけなあ。
歩みは止まらない。白の中、わたしは歩いた。