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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第六章 Sランク
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9

「爺ちゃんオリハルコンくれ。」


 翌日アキはエスタートの屋敷を訪れていた。念の為にセシル、アリア、そしてエリスにも同行してもらった。とりあえず今は席を外して貰っている。


「ぶっ……けほけほ。開口一番に何を……びっくりさせるな、わしを殺す気か。」


 エスタートは飲んでいた紅茶を吹き出しそうになる。


「いや、オリハルコン欲しいなって。だからくれ。」

「無茶いうな。さすがのわしでもあんなもの手に入らんわい。」

「そうなのか?なんで?」


 アキは本題を切り出す。


「それが聞きたいんじゃろ?なら最初からそう言え。」


 エスタートには速攻でバレてしまったが問題ない、その方が話も早い。


「あれはな、人間が生成できる物ではない。産出場所も不明、製造方法も不明、加工方法も不明じゃ。」

「そうなの?じゃあ今王家が所有しているオリハルコン武器は?」

「あれはあの形で発見されたんじゃ。例えば剣だと、剣身だけが見つかる。それに柄を付けて、紋章を入れる。他の武器も同じようなもんじゃよ。」

「なるほど……だからオリハルコン本体には紋章は入ってなかったのか。加工ができないから。」

「そういうことじゃ。」


 爺さんの話からすると、オリハルコンはこの世界の物、正確にはこの大陸の物ではない可能性が高い。海の向こうから来た可能性、別の異世界から来た可能性、両方ともに十分にありえる。勿論王家が製造方法を秘匿しているのかもしれないが。


「どこで見つかったの?」

「各国にある立ち入り禁止区域と聞いておる。」


 さすがミレンド商会。普通の人では知りえないような情報も入ってくるようだ。


「そうじゃ、さらにイリアの嬢ちゃんに関する新しい情報を聞いたぞ。」

「へえ、なに?」

「イリアの母親もSランクだったそうじゃ。そして立ち入り禁止区域の月夜の森で命を落としておる。」


 なるほど、1個疑問が解決した。イリアがミルナ達に要人救出と「嘘」をついてまで依頼を受けた理由がおそらくこれだ。つまりそういう事なのだろう。


「それは興味深い情報だね。1つ確認。立ち入り禁止区域は各国に1つずつあるの?」

「そうじゃ、ミレーは月夜の森、リオレンドは残月の谷、サルマリアが十六夜の洞窟、そしてこのエスペラルドが弦月の山じゃ。」


 全部が月にする名前だが何か意味があるのか?アキは疑問に思うがそれより確認すべきことが今はある。


「その立ち入り禁止区域に行けばこっそりは入れたりするの?」

「無理じゃな、各国がそこに通じる道に砦を作って監視しておる。周囲には壁まで作ってあるしの。」


 そう言ってエスタートは地図を広げて、壁の位置や砦の場所を教えてくれる。エスペラルドで言うと南方にある弦月の山だが、直径10km程度のそれほど大きくない円形のエリアだ。円周にすると約31km。その外周からさらに5km離れた場所を起点として壁を周りに作っているという。つまり直径20㎞の円形エリア、円周にすると62kmにわざわざ壁を作って区域を隔離しているのだ。他の国の禁止区域も似たようなものらしい。


「アキ、行くなよ。Sランクになってからにするんじゃ。わしとしてはSになっても言って欲しくはないがの。」


 じいちゃんは少し寂しそうな目をする。


「なんで?」

「昔、立ち入り禁止区域が気になって調べようとした時期があっての。国から止められた。家族にまで危害が出そうな勢いで止められたのでやめたのじゃ。興味本位だったしの。」

「なるほどね。」


 爺ちゃんに一言断りを入れて、情報を整理する。


 大分話が繋がってきた。オリハルコンはこの大陸の物じゃなく、立ち入り禁止区域で発見された。立ち入り禁止区域は厳重に出入りが管理されており、侵入することは難しい。イリアの母親はそこで命を落とした。多分イリアが受けた依頼と似たようなものだろう。魔獣討伐でSランクが命を落とすとは思えないと考えたイリアは真実を確かめる為に月夜の森の依頼を受けたということだろう。


 街外の犯罪者、魔獣の出現、オリハルコン、Sランクの存在理由は全て立ち入り禁止区域に繋がる。そうとしか考えられない。ここからは完全なるアキの予想だが、過去に人間同士の争いで王が頭を悩ませた。結果、国が分断。だがそれでも減らない戦争や犯罪。そこに立ち入り禁止区域でオリハルコン武器と何かが発見される。魔獣の出現とも関わる何かが。そして冒険者制度の確立、魔獣討伐。街外の犯罪者は消え、人間同士の争いもなくなり訪れる平穏。そしてその均衡をいい塩梅に保つのがSランク冒険者。


 大筋は大体こんなもんだろう。大きくは間違っていないはず。肝心の中身がさっぱりだが。だが、おそらくこれ以上情報は出てこない。閲覧禁止図書を調べ、立ち入り禁止区域に行くしかなさそうだ。立ち入り禁止区域の厳重さを考えると、世界の均衡が覆るようなレベルの事象が隠されているのだろう。アキとしては面倒ごとの匂いしかしないので行きたくないのだが、ミルナ達の目的は達成させてやりたい。


 アキは調べる内容をタブレットに追加する。



 1.街外での犯罪者について

 2.Sランクの存在理由について

 3.イリアへの依頼について

 4.この世界の300年以上前の歴史について

 5.魔獣について

 6.オリハルコン武器と地球への転移、その因果関係について

 7.立ち入り禁止区域について

 8.1~6の事項と立ち入り禁止区域の因果関係



 大まかに分けてこの8項目だ。3のイリアについては依頼の内容がわかったので除外してもいいかもしれない。ミルナ達、アリアやセシル、それにエリスに出来るだけ危険が及ばない様に調査をしたい。図書館の閲覧禁止区域に忍び込む事や、立ち入り禁止エリアに侵入する事も考えた。不可能ではないだろう。ただリスクが大きすぎる。この時期に国を敵に回すのは得策ではない。やはり一番の近道は……。


「とりあえずSランクになるしかないか。」


 それで閲覧禁止の文献を見て歴史をたどり、立ち入り禁止エリアの情報を得る。出来れば国とも繋がり、友好的な協力を取り付ける。そこから計画をまた練るしかないだろう。


「また、厄介事に顔を突っ込むのじゃな。」

「うちの子達の為だからね。」

「わかっておる……だが無理するな。」


 いつものエスタートの優しい表情だ。少し心が安らぐ。

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