表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十三章 故郷巡り③ リオレンド
896/1143

2

「それよりリオナ、リオレンドの事を教えてくれよ。」

「え・・・あ、うん、いいけど。」


 リオレンドに向けて出立したのはいいが、まだリオレンド事は何も教えてもらってない。というか敢えて調べていないだけなのだが。


 ミレーやサルマリアの時もそうだったが、アキはいつも目的地に向かう途中に目的地の事を調べるようにしている。何故なら事前に調べると、旅の楽しみが半減してしまう気がするからだ。


 やはり旅先の情報をそこへ向かいながら調べるのが旅の醍醐味だ。ミルナ達とわいわい予定を立てられるし、何より移動時間の時間潰しに丁度いい。まあさすがに冒険者依頼だったり、何かの仕事だったりするなら事前に調査はするが、今回はリオナの両親への挨拶も兼ねた慰安旅行のようなものだ。


「えっとね、リオレンドはね・・・」


 リオナがリオレンドの説明を始める。


 そんなリオナの故郷であるリオレンドはエスぺラルドの東に位置している。気候はエスぺラルド、ミレー、サルマリアの他3国にくらべて寒い。というか滅茶苦茶寒いらしい。わかりやすく言うと、ミレーが熱帯、サルマリアが山地、エスぺラルドが温暖気候で、リオレンドは冷帯気候と言ったところだ。


「だからコートをもってくようにって言っていたのか?」

「うん、そうだよ。」


 アキがいつものように旅の準備をしていたら、リオナにコートを持って行くようにと言われたのだ。ベルフィオーレに来てコートなんて着たことなかったので、不思議に思っていたのだが、こういう理由だったらしい。


 ちなみにアキは当然コートなんて持っていない。エスぺラルドは年中温かいとミルナ達は言っていたし、買ってすらいなかったのだ。だが何故か、本当に何故か・・・アリアが「こちらがアキさんのコートです」とどこからともなく持ってきた。しかもサイズもぴったり。いつの間に用意したのか。


 まあリオレンドが寒いというのは一般常識のようだし、リオレンドにそのうち行くとアキは以前から宣言していた。だからきっとアリアが気を利かせて準備していてくれたのだろう。本当にうちのメイドはさすがすぎる。


「もしかして・・・リオレンドに狼や犬系の獣人が多いのもその気候のせいか?」


 リオナの話だと、リオレンドは獣人比率が高い。そして獣人の中でも狼、犬、狐など、厚い毛皮に覆われた寒さに強い動物系の獣人が多いらしい。


 これもやはり気候によるものなのだろう。


「んー、私が生まれた町は獣人が多いけど、リオレンド全体で見るとそうでもないよ?」

「そうなのか?」

「うん。あ、でも昔は多かったみたいだけどね。」

「なるほど。」


 これはやはりアキの予想通りと言う事だろう。


 ミレーでもそうだった。亜熱帯気候のミレーは、昔猫系の獣人が多かったらしい。だが今は別にそうでもない。つまり文明の発展と共に、生活環境が向上し、獣人も土地を選ばずに住めるようになった。そう言う事だろう。


「でも寒いだけで雪はないんだよな?」


 リオナ達と出会った頃、春夏秋冬の話をした事があった。あの時「冬」というものをリオナは知らないと言っていたのを覚えている。


「雪?あー・・・アキがユキ王女に見せたっていうやつ?」

「そうそう。」

「うん、ないよ。私も見た事ない。」


 やはりないらしい。そう言う意味ではリオレンドを冷帯気候と例えるたのは少し違うのかもしれない。


「ただ寒いだけか・・・」


 アキはそう結論づけるが、リオナが訂正してきた。


「あ、それも少し違うんだよ?」

「どういう事だ?」

「うん、多分寒いって思うのはアキやミル姉達だけだよ。私は別にいつもの格好のままで平気なんだ。でもリオレンドに来る人達はみんな口を揃えて寒いって言うんだよね。だからアキには厚着するように言ったんだよ。」

「なるほど。」


 どうやらリオナにとってリオレンドは別に寒くないらしい。


「なんでだろうね?」


 リオナが不思議そうに首を傾げているが、理由なんて1つしかない気がする。


「それはリオナがもふもふだからだろ。」

「それは関係な・・・んー・・・こともないのかな・・・?」


 いつもならもふもふ扱いされるのを嫌がるリオナだが、今回ばかりは「むむむ」と唸っている。


 まあ狼は寒さに強い動物だ。狼人族であるリオナもそういう特性があるのだろう。


 そう言えばエスぺラルドより少し肌寒いサルマリアでソフィーは平気そうにしていた。エスぺラルドが故郷のミルナやベルは寒がっていたので不思議に思っていたが、きっとそれとリオナの感覚も同じなのだろう。


 まあそれはともかく・・・


「つまりリオレンドで寒くてどうしても耐えられなくなったら・・・」

「え?なに?寒くなったらなに?」

「リオナをもふもふすればいいんだな?」

「なんでそうなるのさ!アキはそればっかだよ!もー!」


 リオナが尻尾を逆立てながら怒るが、当然だろう。アキがもふもふするチャンスを逃すわけがない。何故なら・・・


「そう、もふもふは正義だからだ。」

「意味わからないよ!?」

 挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ