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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十二章 故郷巡り②
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 ソフィーの過去話は適当なところで切り上げた。これ以上掘り下げて聞くのは嫌な予感がしたからだ。まあ屋敷に戻って、ソフィーが言っていた「あの本」を見たら現実と向かう事になるのだが・・・


 ちなみにアキだけでなく、アリアやベルも「あれ?もしかして・・・?」といった顔をしていたので、間違いなく2人も気付いている。その本の話が最近聞いたある人物の話に類似していると。


「アキさん、もしかしてイリアナさん・・・」

「ベル、それ以上言ってはいけない。」


 そうある人物とは爺さんのメイドであるイリアナの事だ。あのメイド、昔はSランク冒険者として名を馳せていたらしいし、有名だったのは間違いない。そして冒険者引退の理由が「お嫁さんになりたい」だったはず。本人は否定していたが、爺さんが言っていたので間違いないだろう。爺さん曰く、イリアナはお嫁さんになるのが昔からの夢で、冒険者をやっていてはそれが叶えられないと気付き、冒険者を引退。そしして花嫁修業として爺さんのメイドをしているのだとか。


 これはソフィーが言ってた冒険記の結末に書かれていた事と一致する。それに著者であるアナリティアの一部を文字って並び替えるとイリアナになる。つまりあの冒険記の著者とイリアナは同一人物である可能性があるのだ。


「いや、でもさすがにこじつけが過ぎるかな・・・」


 とはいえそんな御伽噺みたいな事はないだろう。ソフィーの人生を変えた本の著者が実は身近にいた人物だったなんてのはさすがに話が出来過ぎている。


「そ、そうですね。さすがにないですよね。」

「ただイリアナだからな・・・」


 あのメイドのする事は想像がつかない。自分の人生の冒険記を書いていたとしてもなんら不思議ではない。イリアナなら「私の人生の集大成です。全世界に知らしめる必要があります」とか訳の分からない理由でやりそうな気がする。


「アキさん、現実逃避はよくありません。あの性悪メイドの事です。どうせ・・・」

「だからそれ以上言うな。」


 今度はアリアが現実を突き付けてきたが、拒否する。今はまだ旅行中だ。そういう現実は屋敷に戻ってからでいい。せっかく楽しい旅をしているのだから、今はそれを楽しみたい。


「わかりました。アキさんがそうおっしゃるなら。」


 アキの言いたい事が伝わったのか、アリアはすんなりと引き下がってくれた。


 とは言え、もし本当にソフィーの人生を変えたあの本の著者がイリアナだったとしても、アキにはなんら不利益はないのだが。「へー、そうなんだー」くらいのもので、問題があるのかと聞かれれば、何もない。


 ただなんか嫌なのだ。それにうちのソフィーがあの性悪メイドのせいで駄エルフになったのかと思うと、文句の一つも言いたくなる。


「だがまだイリアナだと決まったわけじゃない。」


 そう、冒険記の著者がイリアナだと言うのはあくまでアキ達の予想だ。


 まだわからない。まあ十中八九そんな予感しかしないが・・・とりあえずその本を読んでから考えよう。


「今はのんびりとミスミルドまでの馬車旅を楽しもう。」


 ミルナの実家であるレインバースに続き、ソフィーの実家への旅も楽しかった。残るはリオナの故郷であるリオレンド。まだリオレンドには行った事がないし、どんな国か楽しみだ。それにリオナの故郷は獣人が多いと聞く。まさにアキの為のような場所。本当に楽しみだ。


 ちなみにエリスの両親への挨拶も残っているが、エリスは元々孤児だ。そんなエリスはエスタート爺さんの遠い親戚に育てられた。つまりその親戚が親代わりと言う事になる。だから彼らのへの挨拶は爺さんに頼めば手配してくれるだろう。


 そして挨拶巡りの旅が終われば、いよいよミルナ達と結婚式を挙げ、本格的に領地経営をしなければならない。


 まだまだ忙しい日々は続きそうだ。

 挿絵(By みてみん)

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