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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十二章 故郷巡り②
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「そうですわ、アキさん。そこにナイフを入れて・・・あとは縦に・・・」


 ミルナの指示に従い、初めての獣を捌いていく。


 意外に難しい。そしてさっきまで生きていただからだろう、生暖かい感触がして少々気持ち悪い。慣れればどうと言う事はないのかもしれないが、初体験のアキからしてみれば、さすがに抵抗感がある。


「アリア・・・さすがだな。」

「そうですか?」


 アキの隣で同じ作業をしていたアリアの手際を見て感心する。それはもう鮮やかな短剣捌きで血抜きをし、パパっと獣を解体している。


 そしてアリアだけでなく、セシルやエリザ達もそうだ。アキが獣を解体すると聞いて、セシルやエリザが「私もやります」と手伝ってくれているのだが、アリアと同様でこちらも手際がいい。


「セシルやエリザも上手だな・・・」

「そうかしら?」

「えへへ、でも褒められるのは嬉しいですね!」


 アリア、そしてセシルとエリザはこれくらい出来て当然という感じだが、アキからしてみればよくできるなと感心してしまう。


「俺、邪魔しているだけじゃないか?」


 この3人に比べるとアキは手際が悪すぎる。アキが1体捌く間、というかまだ捌いている途中なのだが、その間にアリア達は数匹は終わらせている。もうアキは手を出さないでこの子達に任した方が、肉を無駄にしないと言う意味でも、いいのではないだろうか。


 そんな事を考えていたら・・・


「アキさんがやらないのなら私もやりませんが?」


 当然ですと言わんばかりにアリアが言う。


 「じゃあミルナに任せて・・・」


 みんなでお茶の続きを・・・と思ったのだが、速攻でミルナに睨まれた。


「アキさん、手が止まっていますわよ。何か文句でもありますの?」

「ないです。」

「ではさっさとやってくださいませ。」

「はい。」


 ミルナに見張られ、少しでもサボると怒られる。囚人はきっとこんな気持ちだったのだろう。


 辛い。何故肉の解体作業に強制参加させられているのか。


「ふふ、お兄様は大変ですね?」


 ユフィが楽しそうにくすくすと笑う。


 ちなみにユフィも手伝ってくれているのだが、これもミルナ達と仲良くなる為の計画の一部なのだろうか。まあただの善意で手伝ってくれているだけなのかもしれないが・・・ユフィの場合、そこまで計算してそうな気がしなくもない。


 そしてそんなユフィだが、アリア達より遥かに手際がいい。もう10匹は捌き終えているだろう。


「ユフィはさすがに手慣れているな。」

「まあ日常的にしていますので。」


 ユフィ曰く、両親であるアルやソングが狩ってきた獲物を解体するのが日常なんだとか。まあそれなら慣れていて当然だろう。


「なるほどな。」

「お兄様も頑張ってくださいね。」


 ユフィが小声で「後ろを見たほうがいいですよ」と教えてくれた。


 うん、わかっている。どうせミルナが鬼の形相で睨んでいるのだろう。


「ア・キ・さ・ん?」

「はい。」


 後ろを振り返ると、やはりミルナが般若のような顔で仁王立ちしていた。


「私、先程何て言いました?」

「手を動かせ?」

「わかっているなら動かしてくださいませ?」


 何故ミルナに監視されながら地獄のような作業をさせられているのだろう。冷静になって考えると段々腹が立ってきた。


「ミルナ。」

「なんですの。」

「この獣ってなに?」


 捌いている獣の種類をミルナに聞いてみる。豚のような顔をしているが、身体は狼のような獣だ。


「それはピグルフという獣ですわ。」


 ミルナ曰く、ベルフィオーレのどこにでもいる獣で、食用としてよく用いられるらしい。そしてうちの食卓にも毎日並んでいるのだとか。全然知らなかった。豚肉か何かだと思って料理していたが、こんな獣の肉だったのか。


「見た目はアレですが・・・お肉は美味しいんですのよ?」


 ミルナに言われて改めてピグルフを見るが、確かにもの凄く不細工な獣だ。


「ミルナにそっくりだな?」


 腹が立った仕返しに言ってみた。


「アキさん!何を言っているんですの!?そんなのと一緒にしないでくださいませ!!」

「そうそう、その顔がそっくりだぞ。」

「お説教ですわ!いますぐ!お説教ですわ!!!」


 そしてミルナの説教がはじまった。「私は美少女ですわ」から始まり、アキのミルナに対する扱いを今すぐ是正するよう、口煩く言われた。


「お兄様は・・・馬鹿なんですか?」


 そしてその様子を見ていたユフィが呆れた顔を浮かべている。

 挿絵(By みてみん)

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