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「ソフィーそっちにいきましたわ!足止めをお願いします!」
「まかせるですー!」
「エレンとリオナは回り込んで仕留めてくださいませ!」
「わかったわ!」
「了解だよ!」
「イリアは次の獲物を探して来てくださいませ!」
「わかった!」
ミルナ達と合流し、昼食を終えた現在、予定通りミスティアの近くの森で狩りをしている。そしてこのやり取りを聞いてわかる通り、ミルナがソフィー達に指示をだして効率よく獣を狩っている。というか5人の阿吽の呼吸が凄い。さすがの連携だ。アキが加入する前のメルシーの時はきっとこんな感じで冒険者依頼をこなしていたのだろう。
なんかちょっと感慨深い。
「元気だなー」
しかしミルナ達のやる気が凄い。
ちなみにアキは護衛という名目で、ベルやセシル達の側で待機している。魔獣が急に出てくる可能性もあるから戦闘が出来ないベルやセシルを守る役割なのだ。ただボーっと護衛しているのも暇なので、お茶を飲んだり、お菓子を食べたりして、ミルナ達を見守っている。
「ふぁ・・・」
ただあまりに暇だ。つい欠伸が出てしまう。まあ昼食を食べ、森林浴なんかしたら睡魔に襲われても仕方ないだろう。
「アキさん、のんびりするのもいいですが・・・ちゃんと護衛してくださいね?」
少し気を抜きすぎですとベルに注意された。
だが別にアキが気を張らなくても、ベルに危険はない。何故ならベル達の護衛にはアキだけでなく、エリスやルティアも参加している。正直この2人が周囲に気を配っている限り、アキの出番はないだろう。魔獣が出ても2人に瞬殺されるしな。
「姉さん・・・凄いんですね・・・」
ミルナ達をボーっと見ていたら、隣にいたユフィがそう呟いたのが聞こえた。
ちなみにユフィともちゃんと合流済みだ。ミルナ達に事情を説明し、ユフィが同行していいか聞いたところ、全員快諾してくれたのだ。普段なら文句を言うくせに珍しい。多分初めて出来た義妹と仲良くなりたいというのがあったのだろう。特に兄弟姉妹がいないベル、エリザ、エレンなんかは嬉しそうにしていた。まあ以前からアリアの妹であるシャルも可愛がっていたし、姉として慕われるのが新鮮なのかもしれない。
「そうか?ソフィーはいつもあんなもんだぞ?。」
ユフィはソフィーの活躍を見て驚いているが、アキ達からしてみればいつもの事だ。訓練の時の動きと変わらない。ベルやアリアもソフィーの戦闘風景は見慣れているので特に驚いた様子はない。
「そうなんですか?姉さんのああいう姿を見るの初めてだったので・・・」
「少しは見直したか?」
「あ、いえ、それは全く。」
速攻で否定するユフィ。相変らず姉を認めたくはないらしい。
「少しは認めてやれよ。」
「まあ・・・凄いとは思いますよ?でも羨ましくはないですね。私は別に冒険者になりたいわけではないですので。」
「なるほど、それもそうか。」
言われてみれば至極当然の事だ。ユフィの言う通り、あれに憧れるのは冒険者を目指している子だけだろう。その証拠にベルやアリア達も「羨ましい」とは1回も言った事がない。
「はい、私は姉さんと違って体を動かすのは得意ではないので。」
「頭を使う方が向いてるって事?」
「向いているかはわかりませんが・・・はい、そういう方向で頑張りたいです。」
「それなら尚更うちの領地で文官してもらいたいな。」
ユフィが頭脳派なのはここ数日でわかった。経験がないから文官なんて出来ないとユフィは言っているが、それは大した問題ではない。経験がないなら経験して貰えばいいだけ。まあエリスのように致命的に頭を使うのが苦手なのであれば、文官としての才能はないかもしれないが、ユフィなら大丈夫だろう。
「私もお手伝いしますし、ユフィさんには是非引き受けてもらいたいですね。」
ユフィとそんな雑談をしていたら、ベルが会話に入ってきた。
「前向きに検討します、お兄様、ベルお姉様。」
余談だが、ユフィは最初、ベルの事を「エスぺラルド王女殿下」と呼んでいた。だがベルがそれを嫌がった。そして「アイリーンベル王女殿下」「アイリーンベル様」「アイリーンベルお姉様」と変化していき、最終的に「ベルお姉様」で落ち着いた。
「お姉様・・・ふふ、いい響きです。」
ベルがぼそぼそと呟くのが聞こえた。
「可愛い義妹が出来てよかったな?」
「えへへ・・・はい!私は姉妹がいないので嬉しいです!」
やはりベルは仲の良い姉妹に憧れがあるようだ。まあアキも一人っ子だったのでベルの気持ちは何となくわかる。可愛い妹を甘やかしたいとか、頼りになる兄や姉が欲しいとか、アキ自身も思った事がある。
「しかし・・・あいつら元気すぎないか?」
最初の話に戻るが、ミルナ達が元気過ぎる。ユフィやベル達と雑談しながらミルナ達の狩りを眺めていたが、それはもうやる気満々でテンションが高い。もしかしてここ数日、訓練をしていなかったから、ストレスが溜まっていたのだろうか?