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結局出された料理全てに何かしらの虫が使われていたらしいが、ミルナ達が必死に食べてくれたおかげで、なんとか完食する事が出来た。アキだけでは絶対に完食出来なかっただろう。ただ全員、いつもの食欲は当然ながらなかった。普段なら数人前はぺろりと平らげ、「お腹八分目が丁度いいです」と言っているのに、ダイエット中の女子かというくらいの小食ぶり。ルティアなんかいつもはアキの分も食べようとするくせに、「それはアキの分。人の分まで食べるのは人としてよくない」とか言う始末。まあソフィーだけは普通に食べていたが。というかほとんどソフィーが食べたと言っても過言ではない。
とりあえず・・・出された料理は全て食べたのでよしとしよう。
だが大変だったのはその後だ。宿屋に戻った後、ミルナ達は「アキさん!お口直しにデザートを要求しますわ!」と言ってきた。ミルナやルティアに関しては通常営業だが、今日に限ってはアリアやセシルまで「デザートを・・・」とお願いしてきた。そのせいでアキが宿屋の調理場を借りて色々と料理する羽目になった。夕食後は部屋でごろごろしようと思っていたのに、台無しだ。まあミルナ達はあの料理を頑張って食べたのだからご褒美とも言えなくもないが。
とりあえずミスティアでの初日はそんな感じで終了した。
そして翌日。
「今日はのんびりしたいな・・・」
昨日は誰かがずっと騒いでいた気がする。せっかくこんなのどかな田舎町に来ているのだから、今日はもう少しゆったりと過ごしたいところだ。
「そうですね・・・昨日は色々と疲れました。」
ベルが深い溜息を吐きながら同意してくれる。
「まあ昨日のような騒ぎにはもうならないだろ。」
「だといいですが・・・それでアキさん?どうするんですか?」
今日の予定を確認してくるベル。だが特に予定はない。ミスティアの案内は昨日ユフィがしてくれたし、小さな村だからもう隅々まで見てしまった。それにミスティアは当然レインバースのように観光業に力をいれていないので、遊べる場所もこれといってないのだ。
「そうだなー・・・」
「宿でのんびりしますか?」
それは悪くはない。ここ数日ずっと馬車旅だったし、少しくらいは引きこもってだらだらするのもいいだろう。ただせっかくソフィーの故郷へ来ているのだから、ちょっともったいない気がする。
「ソフィー、なんかないか?」
「なんもないですよー。こんな田舎に期待されても困るです。」
「そこをなんとか。」
「なりませんです。今更何を言ってるんですか。」
だから言ったじゃないですかと呆れ顔のソフィー。
確かにミスティアに来る前からずっと「何もないです」と嫌になる程ソフィーには言われた。そして昨日ミスティアを見た限り、確かに娯楽と言える娯楽はなにもなかった。
だが観光できるような場所がないならないで構わない。あったらいいな程度にか考えていなかったし、そもそも観光目的でミスティアに来たわけではない。
「じゃあとりあえずソフィーの実家へ案内してくれ。」
「え?実家です?とーさま達への挨拶は昨日しましたよ?」
「うん、でもソフィーが生まれ育った家はまだ見てない。」
昨日、ソフィーの実家の前は通ったが、中には入らなかった。せっかくミスティアまで来たのだから、ソフィーの生家にはお邪魔しておくべきだろう。
「あとはソフィーが小さい頃遊んだ場所とかも案内してくれ。」
そういった場所もまだ行けていない。まあ行ったのかもしれないが、ユフィの案内ではさっぱりわからなかった。あの子はひたすらソフィーの過去の痴態を暴露していただけだしな。だから改めてソフィーにミスティアを案内してもらう価値はある。
「なるほど・・・それならいいですよー」
「ありがとな。それが終わったらみんなで森にいって獣狩りでもしようか。」
その後の予定も提案しておく。
「え?狩りです?なんでです?」
ソフィーが不思議そうに首を傾げる。多分ミスティアまできてする事ではないと思っているのだろう。だが他の子達はきっと賛成してくれるはずだ。
「肉でも調達しようかと思って。まあ今日もミスティアの郷土料理がいいと言うなら別に行かなくても・・・」
「「「「行く!!!賛成!!!」」」」」
ソフィー以外の子達が声を揃えて叫ぶ。
やはりな。しかも冒険者組でないベルやアリアまで「狩りをしたいです!」と叫んでいるくらいだ。
まあそれだけあの料理が嫌だったと言う事だろう。