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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十二章 故郷巡り②
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33

「ユフィは酷いんですよ。全部私のせいにしようとして・・・!」


 それからソフィーは過去の「お手伝い話」を色々と話してくれたが、やはりどれも似たり寄ったりだった。人見知りの性格を改善しようと暴走エルフに変貌したソフィーは、ミスティアの町で色々と手伝いをし始めた。そしてその手伝いとやらのせいで、農作物破壊や食料破棄などの多大なる被害を出したらしい。


 本人は善意のつもりだったようだが、周囲からしてみたら大迷惑だったに違いない。そして当然本人はそれが自分のせいだとは気付いていなかった。さらにそれらはもれなくユフィの仕業とされたようで、ユフィが全てのお説教を受けたらしい。


 ちなみにソフィー本人は「ユフィはユフィでなんかしていて、失敗した」という認識らしく、自分のせいだとは微塵も思っていないようだ。普通なら自分と間違われているのだと気付きそうなものなのだが。まあ猪突猛進モードで暴走中のソフィーは周囲が見えなくなるから、多分本人は「私役に立ってます!」とか思い込んで暴走し続けたんだろう。


「ユフィになんか言われた?」

「んー、『姉さんのせいで!』とか滅茶苦茶怒鳴ってきました。責任転嫁ってやつなんですかねー?」


 知らぬが仏とはまさにこの事だな。このままではユフィが流石に可哀そうだ。


「ソフィー・・・ユフィが怒られたのはソフィーのせいだろ。」

「え、そんなわけないじゃないですか。」


 ソフィーが何をバカな事を言ってるんですかと真顔で反論してくる。


「でもユフィが怒られてラッキーって思ったんだろ?」


 確かユフィがそんな事を言っていた。ユフィが怒られている時、ソフィーは「私は怒られなくてラッキーですー」と調子に乗っていたと。だからさすがにソフィーは全てわかっていて、知らない振りをしていたのではないかと正直疑っている。いくら双子とはいえ、ソフィーとユフィがずっと間違われて続けるなんてそんな小説みたいなことないだろう。


「はい、思いましたよ?ユフィが怒られているのに私は『ソフィーちゃんは何もしなくていい子だねぇ』とみんなに褒めてもらえてラッキーでしたから!まあ本当は色々お手伝いしていたんですが・・・ふふ、バレていませんからね。やっぱりお手伝いはコッソリやるのがカッコイイんです!」


 よくわからない美学を語り始めたソフィー。


「そ、そうか・・・」


 だがとりあえずはわかった。この駄エルフは本当に何もわかっていないらしい。アキも色々遠回しに理解させようとしてみたが、これは諭そうとするだけ無駄だ。もうはっきりと言うしかない。


「ソフィー。」

「はい!」


 アキにお手伝いしていた事を褒めてもらえると思ったのか、ソフィーが満面の笑顔だ。アキはこの能天気駄エルフに今から現実を突きつける。ちょっと可哀そうだが・・・これはアキにしか出来ない事だろう。


「お前が全部悪い。」

「ふぇ?」

「この駄エルフが。」

「えええ!?なんで私が罵られるんですか!!!」


 納得いきませんとソフィーが頬を膨らませながら怒る。


「もうこの際はっきり言ってやろう。ユフィが怒られたのはソフィーがコッソリした手伝いしたのが原因だぞ。そもそもユフィは何もしていないはずだ。」


 そしてソフィーの手伝いの何がダメだったのか、片っ端から教えてやった。最初は「そんなわけないじゃないですかー、アキさんは馬鹿ですねー」と呑気な顔をしていたが、懇切丁寧に説明したらさすがのソフィーも何をやったのか理解してきたようで、最後には顔を引き攣らせていた。


「え、ほんとうなんです・・・?作物とか駄目になったのは私のせいです・・・?」

「うん。」


 ソフィーが「やってしまいました」と頭を抱えている。少しは反省してくれているようだ。まあ本人は良かれと思ってやっていた事だし、反省しているなら説教は程々にしてやろう。


「うぅ・・・だからユフィが最後の方は『もうお願いですからもうやめてください』と泣きながら懇願してきたんですね・・・」

「むしろ今までなんだと思ってたんだ・・・?」


 ユフィがそこまで必死になってソフィーにお願いするくらいなのだから、双子の姉としてちゃんと理解してあげろよと思う。もしかしてあの腹黒なユフィが生まれた理由、全部ソフィーのせいではないだろうか。


「おばかな妹を持つおねーさんは大変ですーって思っていましたー・・・」


 さすがソフィー。超絶ポジティブだ。というかポジティブ過ぎる。

挿絵(By みてみん)

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